↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1027/1033

1537年。11月2週目。横流しした商人に会いましょう。

十一月二週目。

 姫路。

 京都郊外へ送った。

 八郎商会の物資。

 それを。

 三好方へ。

 横流ししていた商人。

 帳面を。

 一つずつ追った結果。

 ようやく。

 誰なのか。

 ほぼ分かった。

「八郎様」

「はい?」

「見つけました」

「ほんまです?」

「ほぼ間違いございません」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 帳面役が。

 店の名。

 荷の数。

 渡した日。

 三好方へ流れたと思われる量。

 それらを。

 一つずつ。

 説明する。

「では」

「処分しておきます」

「え?」

 八郎が。

 顔を上げた。

「処分?」

「はい」

「八郎商会の荷を」

「勝手に横流ししたのです」

 今後。

 八郎領では。

 商売できないようにする。

「それくらいは」

「必要かと」

「いやいやいや」

 八郎は。

 首を振った。

「それ」

「面白くないです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「……面白いかどうかの」

「話でございます?」

「そこ大事ですよ」

 八郎商会は。

 今や。

 誰が見ても。

 巨大な商会になった。

 九州から。

 摂津まで。

 商いの網が。

 つながっている。

「そんなところ相手に」

「こそこそ横流しする人ですよ?」

「はい」

「何考えてるか」

「聞きたないです?」

「普通は」

「怒るところでございます」

・・・・・・・・・・・・・・・

「怒るんは」

「後でもできますやん」

 八郎は。

 少し楽しそうに。

 帳面を見る。

「京都へ入ろうとしてる時に」

「こういう人が出てくる」

「それ」

「結構大事やと思うんですよ」

「なぜ?」

「うちのやり方が」

「全員に好かれてるわけちゃうってことでしょう」

 なら。

 その理由を。

 聞いておきたい。

・・・・・・・・・・・・・・・

「石山まで」

「僕が出ます」

「八郎様が?」

「はい」

「その商人を」

「姫路まで呼べばよろしいのでは?」

「遠いでしょう」

「それに」

 八郎は。

 少し笑った。

「僕も暇ですし」

 夏姫が。

 すぐに言った。

「それが本音では?」

「いやいや」

「半分ぐらいです」

・・・・・・・・・・・・・・

 ただ。

 八郎としても。

 姫路に。

 ずっといるつもりはなかった。

「京都を見据えるなら」

「もうちょっと」

「東へ寄らんとあかんでしょう」

 摂津は。

 すでに。

 ほぼ八郎側。

「石山本願寺まで」

「出ましょう」

「そこを」

「今後の拠点に?」

「一つには」

「なるかもしれませんね」

・・・・・・・・・・・・・・

 堺。

 京都。

 その間。

 石山。

「商売考えても」

「場所ええでしょう」

「本願寺との関係もありますし」

「またお寺と」

「仲良うされるおつもりで?」

「仲悪くする意味」

「あります?」

「それはございませんが」

 八郎は。

 地図を見ながら。

 頷いた。

・・・・・・・・・・・・・・

「姫路は」

「姫路で大事ですよ」

 これまで。

 ずっと。

 育ててきた。

 大都市。

「今まで拠点ですし」

「これかも」

「育てる価値あります」

 ただ。

 領地が。

 東へ広がった。

 京都が。

 近くなった。

「姫路だけやと」

「ちょっと遠いですね」

・・・・・・・・・・・・・・・・

「年末ぐらいには」

 八郎が言う。

「家族みんな」

「一回集めたいですね」

「姫路に?」

「石山でもええです」

 これから。

 どこで。

 暮らすのか。

 誰が。

 どこを見るのか。

「一回」

「相談したいです」

「京都を取れば」

 夏姫が。

 八郎を見る。

「京都へ移ることも?」

「ゼロではないでしょうね」

・・・・・・・・・・・・・・・

「でも」

 八郎は。

 少し考えた。

「ここ一、二年」

「ややこしいでしょう」

 京都。

 将軍家。

 細川。

 三好。

 六角。

 比叡山。

 朝倉。

「ややこしい人」

「いっぱいおるでしょう?」

「おりますね」

「ほな」

「そういう人を」

「腹の中へ入れるんも」

「大事なんちゃいます?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「僕」

「人生経験」

「少ないんですよ」

「七歳でございますから」

「そこです」

「今まで」

「うまくいきすぎてます」

 九州。

 四国。

 中国。

 播磨。

 摂津。

 和泉。

「この先も」

「全部うまくいくわけないでしょう」

「それは」

「そうかもしれませぬが」

「だから」

 ほころびが。

 出た時。

「話を聞くんです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「横流しした商人も」

「ただの悪人かもしれません」

「でも」

「何か」

「言いたいことあるかもしれんでしょう」

 それなら。

 八郎一人ではなく。

 他の商人にも。

 聞いてもらう。

「堺の商人さんにも」

「手紙出してください」

「何と?」

「石山におりますよって」

「それだけ?」

「それだけでええです」

・・・・・・・・・・・・・・・・

「顔合わせするとき」

「来たい人が来たらええでしょう」

 本願寺の僧にも。

 先に。

 話を通しておく。

「宴会でもします?」

「横流しの話を」

「宴会で聞くのでございますか?」

「飯食いながらの方が」

「腹の内」

「出るんちゃいます?」

 三郎が。

 頭を抱えた。

「また悪い癖出てるぞ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何がです?」

「面白そうやから」

「首突っ込む癖や」

「でも」

「大きくなったから言うて」

「全部飲み込むだけって」

「つまらんでしょう」

「領地経営に」

「面白さ求めるな」

「求めますよ」

 八郎は。

 即答した。

「つまらんこと」

「したくないです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「だから」

「飯も考えるんです」

「また飯に戻った」

「飯でも」

「商売でも」

「町でも」

「何でこうなったんやろって」

「考えるんが」

「面白いんでしょう」

 夏姫たちが。

 顔を見合わせた。

「ほんま」

「困った御方です」

「褒めてます?」

「半分ほどは」

「ありがとうございます」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 結局。

 十一月二週目。

 八郎は。

 姫路を出て。

 石山本願寺へ。

 拠点を。

 少し東へ。

 移すことになった。

 そこで。

 横流しした商人と。

 直接会う。

 堺の商人。

 本願寺の僧。

 必要なら。

 他の者にも。

 同席してもらう。

「処分は」

「話聞いてからです」

「甘くないですか?」

「甘いかどうかも」

「話聞かんと分からんでしょう」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 京都を。

 どうするか。

 その前に。

 八郎は。

 一人の。

 面倒な商人と。

 向き合うことにした。

 大勢力になったからこそ。

 小さな。

 逆らい方を。

 見落とさないために。

 そして。

 七歳の八郎自身が。

 これから。

 うまくいかない世界を。

 少しずつ。

 知っていくために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。