1537年。10月2週目。京都町衆からの感謝と愚痴。和泉侵攻により堺町衆が再度詳細をつめにくる
十月二週目。
後半。
姫路へ。
京都の町衆から。
一通の書状が届いた。
「京都からですか?」
「はい」
八郎が。
書状を開く。
最初には。
丁寧な礼が。
書かれていた。
先日の。
復興支援。
銭。
米。
木材。
その他の品。
それらについて。
大変ありがたかった、と。
「それはよかったですね」
「ただ」
八郎が。
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「なんか愚痴も書いてありますね」
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幕府が。
今後の戦に備えるということで。
町から。
銭。
米。
荷駄。
人足。
様々なものを。
集め始めているらしい。
「八郎様から」
「復興に使うてください言うて」
「銭もろたのに」
「その横から幕府に取られる」
三郎が苦笑した。
「そら」
「腑に落ちんやろな」
「ですねえ」
もちろん。
八郎家が出した支援の方が。
ずっと大きい。
全部。
吸い取られているわけではない。
それでも。
「何のための復興支援なんや」
そんな不満が。
京都の中で。
少しずつ。
溜まり始めているという。
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「助けてくれ、とは」
「まだ書いてないですね」
「はい」
八郎は。
書状を閉じた。
「ほな」
「今は何もしません」
「よろしいので?」
「急を訴えてるわけちゃいますから」
京都で。
こういうことが。
起きている。
そう。
知らせてくれただけ。
「覚えときましょう」
帳面へ。
記録する。
今は。
それでいい。
「向こうから」
「ほんまに困った言われてから」
「考えましょう」
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そして。
八郎は。
和泉の地図へ。
目を戻した。
「こっちは」
「予定通りやりましょう」
北摂方面は。
将軍家。
細川。
三好。
さらに。
周辺勢力の動きまで。
絡み始めている。
「向こうが」
「ほんまに熱くなってきたら」
「北摂はじっくり考えます」
「今は?」
「和泉です」
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和泉では。
以前から。
村々の嘆願を。
正式に取るようになっていた。
一人の名ではない。
村の者たちが。
連判する。
「八郎家に」
「一時預かっていただきたい」
そういう形を。
残す。
その書状を。
一つずつ。
確認しながら。
八郎軍は。
南へ。
ゆっくりと進んだ。
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村は。
先に。
八郎側へ入る。
すると。
その村々を支配していた。
砦や小城だけが。
取り残される。
「また包囲ですか」
「はい」
「攻めます?」
「急がんでええです」
道を押さえる。
補給を止める。
夜には。
火矢。
昼は。
交代しながら。
囲み続ける。
「降ります!」
一つ。
また一つ。
城が。
八郎側へ移っていった。
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その動きを。
堺の商人衆も。
ずっと。
見ていた。
「これは」
「ほんまに近いうち来るな」
「来るいうても」
「前に八郎様は」
「堺はそのままでええ言うてはったぞ」
「言うてはったけど」
実際。
周囲が。
八郎領になってから。
「聞いてません」
では。
困る。
「もっと細かい話」
「詰めとこか」
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再び。
堺の商人たちが。
姫路へやって来た。
「八郎様」
「また遠いところ、ありがとうございます」
「本日は」
「もう少し具体的なお話を」
「どうぞ」
まず。
自治。
「堺の自治は」
「本当にそのままで?」
「そのままでええですよ」
「以前と変わらず?」
「はい」
八郎は。
あっさり答えた。
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「では」
「関税は?」
「そこは」
「商人さんらと相談しましょう」
いきなり。
高くするつもりもない。
むしろ。
物が。
たくさん動く方が。
八郎家としてもありがたい。
「港は?」
「使ってください」
「八郎商会も?」
「もちろん使いますけど」
「堺衆を追い出したりしませんよ」
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「共同で」
「荷を運ぶということも?」
「やりましょう」
八郎商会には。
西の日の本へ広がる。
船と。
商人の網がある。
堺には。
堺の商人が持つ。
取引先。
品。
知識がある。
「一緒にやった方が」
「儲かるでしょう」
「……確かに」
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「寺社の市は?」
「ぜひ入ってください」
「利益の取り分は?」
「前に言うた感じで」
八郎商会。
寺社。
参加する商人。
それぞれ。
取り分を決める。
「堺の品」
「他のところでも売ってくださいよ」
「よろしいので?」
「珍しいもん」
「いっぱいあるんでしょう?」
商人たちが。
少し笑った。
「ございますな」
「ほな」
「持ってきてください」
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話は。
驚くほど。
早かった。
堺商人たちも。
最後には。
拍子抜けしたような顔になる。
「ほんまに」
「堺は堺のままで?」
「前にも言いましたやん」
「八郎家の町に」
「作り替えるとかは?」
「何でそんな面倒なことするんです?」
八郎が。
本気で。
不思議そうな顔をした。
「今」
「うまいこと商売できてるんでしょう?」
「はい」
「ほな」
「そのままでええでしょう」
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ただし。
堺の周りは。
別だった。
借金を整理する。
道を直す。
治安を整える。
市を作る。
「周りが豊かになったら」
「堺の商人さんも」
「儲かるでしょう」
「それは」
「間違いございませんな」
敵ではない。
奪う相手でもない。
「お互い」
「儲けましょう」
八郎は。
それだけだった。
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十月二週目後半。
まだ。
和泉のすべての城が。
落ちたわけではない。
堺へ。
八郎軍が。
入ったわけでもない。
それでも。
村々から。
八郎側へ。
連判状が届く。
城は。
一つずつ。
降る。
そして。
堺では。
自治を保ったまま。
八郎家との。
商売の仕組みが。
整い始める。
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「これ」
三郎が。
地図を見ながら言った。
「もう実質」
「和泉と堺」
「こっち入ってきてへんか?」
「まだですよ」
「何がや」
「城残ってますし」
「堺も自治やろ」
「そうですよ」
「でも」
三郎が。
地図を指差す。
「銭も」
「荷も」
「人も」
「全部こっち向いてきてるぞ」
八郎は。
しばらく。
地図を見る。
「まあ」
少し笑った。
「それなら」
「戦わんで済むから」
「ええんちゃいます?」
城を落とすより。
先に。
村が入り。
村より先に。
商売がつながる。
和泉と堺は。
静かに。
八郎の経済圏へ。
入り始めていた。




