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1013/1033

1537年。10月1週目。将軍家から選べと言われました。

十月一週目。

 京都。

 姫路へ向かった。

 足利将軍家の使者が。

 かなり不機嫌な顔で。

 戻ってきた。

「何と申した?」

「それが……」

 使者は。

 八郎とのやり取りを。

 一つずつ報告した。

 細川・三好と。

 争っているだけ。

 将軍家とは。

 別に争っていない。

 将軍家から。

 何かしてもらった覚えも。

 特にない。

「……何だ、その言い草は」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「我らが関係ないだと?」

 足利義晴の周囲では。

 当然。

 不満が出た。

「日の本を統べるのは」

「将軍家であろう」

 だからこそ。

 細川・三好。

 八郎家。

 その争いに。

 間へ入り。

 収めようとしている。

 それを。

「そちらから喧嘩を売ったのでしょう」

 で。

 片付けられては。

 幕府の面目が立たない。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「以前は」

 一人が言う。

「あの七歳児」

「銭を持った変わった子供程度と思っておったが」

 今では。

 九州。

 四国。

 中国地方。

 播磨。

 摂津。

 さらに。

 和泉へ。

 勢力を伸ばしている。

「もう」

「無視できる相手ではない」

「ならば」

 こちらも。

 態度を。

 はっきりさせるべきではないか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 幕府を。

 支える側に入るのか。

 それとも。

 幕府の秩序を。

 乱す側へ回るのか。

「選ばせればよい」

「八郎家に?」

「そうだ」

 将軍家を。

 支えると。

 明確に示すなら。

 まだ。

 話はできる。

 だが。

 兵を進め。

 京を脅かし。

 幕府の命にも従わぬというなら。

「朝敵として」

「扱うことも考えねばならぬ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 その話を。

 細川・三好方は。

 内心。

 歓迎した。

「ようやく」

「御輿がこちらを向いたな」

 自分たちだけが。

 八郎と争えば。

 日に日に。

 不利になる。

 だが。

 将軍家から。

 諸勢力へ。

「八郎を警戒せよ」

 と。

 触れを出すなら。

 話は変わる。

・・・・・・・・・・・・・・

「比叡山」

「六角」

「伊勢の北畠」

「朝倉」

 そのほか。

 畿内。

 近国。

 八郎の巨大化を。

 面白く思わない家へ。

 声を掛ける。

「このままでは」

「次はそなたらの領地ぞ、と」

 ただ。

 三好側も。

 そこまで。

 楽観してはいなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「将軍家から言われれば」

「返事くらいはするであろう」

「しかし」

「実際に兵を出すかは別だ」

 八郎家は。

 すでに。

 巨大すぎる。

 しかも。

 戦えば。

 飯が出る。

 補給が続く。

 捕虜まで返す。

 兵を出せば。

 自分たちの領地も。

 危険になる。

「結局」

 三好方の武将が。

 苦笑した。

「我らに降りかかっておる火の粉は」

「我らで払わねばならんか」

「そういうことですな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 その頃。

 姫路。

 八郎のところにも。

 新しい話が。

 届いていた。

「将軍家から」

「態度を決めよ、と」

「何の態度です?」

「幕府を支えるのか」

「敵になるのか」

「……」

 八郎が。

 しばらく黙る。

「何で二択なんです?」

 三郎が。

 頭を抱えた。

「そこからか」

・・・・・・・・・・・・・・・

「いや」

 八郎は。

 本気で。

 分かっていなかった。

「僕」

「将軍様と喧嘩したいなんて」

「一回も言うてないですよ」

「しかし」

 夏姫が言う。

「将軍家から見れば」

「京へ近づく大勢力でございます」

「細川・三好と喧嘩してるだけなんですけど」

「向こうには」

「分けられぬのでしょう」

「めんどくさいですねえ」

     ◇

 八郎は。

 京都の地図を見る。

「まあ」

「どうしても」

「京都がまとまらんのやったら」

 一度。

 京都を。

 八郎家で預かる。

 将軍家には。

 別のところへ。

 移ってもらう。

「その方が」

「綺麗に収まるなら」

「それもありですけど」

 室内が。

 静かになる。

「八郎様」

「はい?」

「それを」

「将軍家の前では言わないでください」

「何で?」

「余計に朝敵になります」

「……そうですか」

・・・・・・・・・・・・・・・

「でも」

 八郎は。

 無理やり。

 京都へ突っ込むつもりもない。

「切り崩せるところから」

「やりましょう」

 町衆。

 商人。

 寺社。

 周辺の村。

「暮らしが良くなれば」

「見方変わる人もいるでしょう」

 京都には。

 銭を持つ者も。

 商売をする者も。

 多い。

「商売の話なら」

「聞いてくれる人もいるでしょうし」

「また商売ですか」

「戦よりええでしょう」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 幕府側とも。

 完全に。

 縁を切る必要はない。

「仲良くできる人とは」

「仲良くしましょう」

 将軍家の中にも。

 考え方は。

 一枚岩ではない。

 細川・三好を。

 必ずしも好まない者もいる。

「こっちが」

「全部敵ですよ」

 みたいに動いたら。

 本当に。

 全部敵になる。

「そこは」

「気を付けましょう」

・・・・・・・・・・・・・・

「しかし」

 三郎が。

 京都。

 北摂。

 近江。

 伊勢。

 越前。

 地図を見ながら。

 ため息をついた。

「前途多難やな」

「ですねえ」

「細川・三好だけでも面倒やったのに」

「将軍家まで出てきた」

「しかも」

「他所にも声掛けるらしいぞ」

 八郎は。

 しばらく。

 その地図を眺めていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そして。

「まあ」

 小さく笑った。

「一個ずつやりましょう」

「またそれか」

「それしかないでしょう」

 村なら。

 村。

 町なら。

 町。

 商人なら。

 商人。

「いきなり日の本全部と」

「喧嘩する必要ないです」

 十月一週目。

 細川・三好との争いは。

 ついに。

 将軍家を巻き込み。

 畿内全体の政治へ。

 広がり始めていた。

 それでも。

 八郎がやることは。

 変わらない。

 一つずつ。

 話を聞き。

 一つずつ。

 帳面を見て。

 一つずつ。

 味方を増やす。

「七歳で」

 三郎が呟く。

「ようこんな面倒なところまで来たな」

「僕も」

 八郎が答えた。

「そう思いますよ」

 そして。

 二人は。

 また。

 京都の地図へ。

 視線を落とした。

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