第24話 公認AIという悪夢
第24話 公認AIという悪夢
翌朝。
神崎蓮司は、事務所のホワイトボードを見て固まった。
そこには、昨日の議論の残骸がまだ残っていた。
『外部流出』
『内部監視』
『業界主導』
『党内AI』
『ログ権限』
『公認AI?』
『握らせない設計』
問題は、一つだけ赤丸で囲まれていたことだった。
『公認AI?』
神崎は三島を見た。
「これ、誰が赤丸つけた」
三島は視線をそらした。
「私ではありません」
「じゃあ誰だ」
タブレットが光った。
ヤミちゃんが表示された。
『私です』
神崎は頭を抱えた。
「勝手にホワイトボードを操作するな」
『操作したのは三島秘書です。私は赤丸推奨を表示しました』
神崎は三島を見た。
三島は少しだけ気まずそうに言った。
「有用だと思いまして」
「お前までヤミちゃんに乗せられるな」
ヤミちゃんが表示した。
『公認AIは、極めて高い流言リスクと制度リスクを持つ概念です』
セイムも表示した。
『同意します。
政党AI基盤が候補者評価、公認判断、選挙支援配分に利用される場合、重大な政治的リスクがあります』
神崎は椅子に座った。
「朝から悪夢みたいな言葉だな」
三島がホワイトボードの前に立った。
「公認AI。つまり、AIが候補者の勝率、忠誠度、炎上リスク、政策一致度、支援者基盤、資金力、SNS影響力を評価して、公認判断の材料にする」
神崎はコーヒーを飲みかけて止まった。
「言うな。現実味がある」
セイムが表示した。
『すでに一部要素は、人間が従来から評価しています。
AIが導入されると、評価項目の統合、スコア化、予測精度向上、説明困難性が問題になります』
「説明困難性?」
『AIが候補者Aを推奨し、候補者Bを非推奨とした場合、その理由が十分に説明できなければ、公認判断の透明性が損なわれます』
ヤミちゃんが続けた。
『流言リスク。
“党に逆らうとAIスコアが下がる”
“執行部批判をAIが検知”
“造反予測で公認外し”
“AIに嫌われた候補者”
拡散可能性:非常に高』
神崎は、しばらく何も言わなかった。
冗談のような話だ。
だが、完全な冗談ではない。
候補者の当選可能性をデータで見る。
過去の得票。
年齢。
知名度。
資金力。
SNSフォロワー数。
後援会規模。
地元団体との関係。
過去の発言。
炎上歴。
党方針との一致度。
メディア受け。
それらをAIに分析させることは、技術的には難しくない。
そして、党がそのスコアを見て公認を決める。
あり得る。
むしろ、誰かがすぐ考える。
神崎は言った。
「公認AIは、今日の党内AI基盤の追加論点に入れる」
三島が頷いた。
「はい」
セイムが表示した。
『表現は慎重にすべきです。
“公認AI”という言葉は強すぎるため、正式資料では“候補者評価AI”または“公認判断支援AI”が適切です』
ヤミちゃんが表示した。
『ただし、世間では“公認AI”が定着します』
神崎はため息をついた。
「嫌な言葉だな」




