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悪役覇道  作者: wistereal
三章 『皇国覇道ー序 独立』
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開戦 ー航 対 マモニルス・ウィーガン

お久しぶりです。本当に久々の投稿となってしまいました。申し訳ありません。本日から毎日投稿を再開していきます。

 アリアとマモニルスの部下たちが去っていった後、俺たちはしばらく無言のまま睨み合いを続けていた。マモニルスと俺、どちらも先には動かない。そう言う果てしない時間が続いたのだ。

 俺はマモニルスの実力を読み切ることができず一歩踏み出せない。マモニルスは何やら技の準備でもしているような様子である。隠して、戦闘開始早々互いに何も喋らず、アクションも起こさない不毛な時間が続く事態となった。


 均衡を長引かせるためか、マモニルスが口を開く。その言葉は、異常なほどに石壁に響かず、まるで実態がないかのように溶けて消えていった。


「貴様、いや失礼。まだ名を尋ねていなかったか?なんと言うのだ?」


 忘れてはいけないが、現在時間がない状況である。俺とアリアはなんとか敵拠点までやってきたからなんともないものの、ジンが今も必死に「情報屋」の征伐部隊を回収して治療しているはずなのだ。

 ジンだって魔力が無尽蔵なわけではない。というか、魔力に関しては多分俺の方が多いのではなかろうか?そんなわけでジンの魔力量も心配な状況。一刻も早く目の前の敵を倒すべき状況である。

 だが、まだ打って出ることはできない。目の前の『マモニルス』は、俺たちが以前おいつめた「マモニルス」と違って強大な力を秘めているように感じる。決して軽々しく戦えるような相手ではないのだ。迂闊に手を出したらやられる、その緊張感が俺を会話という檻の中に止める結果となった。


「ハッ、どうせ調べているのだろうに。まあいいが。俺の名は航。今は航=フェリスタークと名乗っている」


 何かきっかけがあればいいがと少し挑発に出てみるが、精神が乱れるような様子も見せない。今の所、『マモニルス』を崩すのは相当に難しいかと思われた。結局、俺に残されていた選択肢は、会話に従事して少しでも情報を集めること。ジンには申し訳ないが、まだ『マモニルス』の力を計りかねている段階では、それが限界である。


「まぁそう言うな。少しばかり私と会話してもらうとしよう、航よ。いや、「東 航」殿?」


 お返しとばかりにこちらを見てくる『マモニルス』相手に、俺は大きくため息を吐きながら言葉を返す。


「やはりしっかりと調べているのだろうに。で、聞きたいこととは?」


 多少話には付き合うとはいえ、それを長引かせるつもりはない。ここで俺がどんどん戦いを長引かせるほど、ジンの負担が増えていく。それだけは阻止せねばなるまい。


「まあそう話を急かなくても良かろう?いや、お主には急く理由があるのだったな?」


 いやらしい笑みを浮かべる『マモニルス』に対し、俺はただ苛ついた表情を浮かべることしか出来ない。それが歯がゆいが、今俺にできることは本当にそれぐらいなのだ。悔しいが、言っても仕方のないことではある。


「だがしかと聞け。貴様らが急く理由もなくなろうよ」


「これは「東・航=フェリスターク」にではなく、「情報屋」への忠告だ。我らの傘下へ入れ。貴様らはまだまだ尻の青い小僧どもだが見込みだけは十分にある。今ならば、「子供達」とやらも助かるであろうよ。どうだ?願ってもない取引であろう?」


 どこあでも上から目線。自分が強者であると疑わないその不遜。どこまでも力を追い求める姿勢。まさに彼が名乗った通り、『貪欲』の名を冠すにふさわしい人間である。それが、善の方向に向けば彼は讃えられるような人間になっただろうに。


「痴れ事を。どうせそう言って殺すつもりだろう?第一最初に「糧にする」とはっきり言っていたくせに何を今更」


 俺は、その言葉を吐き捨てると同時に臨戦体勢へと意識を切り替える。マモニルスの動きのパターンが、やっと「視えた」のである。日々訓練を積んで進化している観察眼を持ってしてもこれだけ時間がかかったのは驚異だが、やっと反撃のタイミングが掴めたことになる。


「まぁ良い。貴様と獣の娘に関しては、欲しいのはその体のみよ。死しても従う従魔として重宝してやることとしよう」


 『マモニルス』と俺の視線が交錯する。どこか浮ついたように遠くを見つめていた『マモニルス』がやっと俺を見据えた形である。


「「トレース」 秘奥 鎌鼬」


 ために溜めないと使えないことが欠点の「トレース」鎌鼬 だが、戦いの初めにぶっ放すにはちょうどいい一撃である。俺の放った「鎌鼬」は、石壁を壊すほどの勢いで、『マモニルス』へと向かって行った。

 風速であるからして、攻撃動作から回避に入らなければ回避不可能に近い一撃。そしてそれはマモニルスも例外ではなく、全く身動きもしないまま「鎌鼬」は『マモニルス』へと牙を向く。確実に当たる。ダメージが入る。そのはずだった。


 だが実際には、その想定は大きく外れることとなる。


「おぉ凄い。とてもいい一撃だ。到底我にはできない。世界有数とまで言っていいのではないか?素晴らしいよ。だが、届かない」


 『マモニルス』には確かに当たった、当たったはずなのに、「鎌鼬」は直前のところで霧散し、彼に届くことはなかった。本当に急に、なんのそぶりも見せずに消え失せたのだ。俺の混乱は凄まじいことになっていた。


「もしかして今のが最高火力か?ならば残念だ。あの程度の攻撃、百億回当たっても傷一つつかんよ。到底見込み違いだったか」


 ナチュラルにこちらを見下す態度を取る『マモニルス』。しかし、俺にはそれに反抗するほどのリソースは残されていなかった。「鎌鼬」は、単発ならば最高威力級の攻撃。残るは、「砂塵嵐」、「顎咬」、あとは付加加算(エンチャント)くらいしか残されていないのである。

 だが、戦いは弱気を見せた方が負け。俺は、不敵に笑って反撃の狼煙とばかりに攻撃を放つ準備に入った。


「『悪役覇気』全開。「トレース」顎咬(アギト) 付加加算(エンチャント)「鬼火」」


「よい、非常に良い。気様の矛は、果たして我の盾を貫けるだろうか?期待しているぞ」

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