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悪役覇道  作者: wistereal
三章 『皇国覇道ー序 独立』
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玉牙真髄

「素晴らしい、素晴らしいぞ娘。貴様が、貴様のような人間こそが真なる武人だ。何度窮地に陥っても、決して諦めることのない強い意志。性別など関係はない。貴様が「武人」であると、その事実だけがこんなにも我らの胸を震わせている」


「さぁ、勝負だ武人アリア。ここからは我にもわからぬ。ただ、互いの真髄を、骨の奥まで響く本気を、ぶつけ合おう。それだけで、それだけで私は満足だ」


 「五角頂」の軽快な声が響く。心の底から出ていると一目でわかるその叫び声は、興奮の雰囲気を孕み、石畳を壊す勢いで四方に響いた。


「存外に戦闘狂なのですね。そっちがその気なら、なのです。とことん付き会うのですよ」


 アリアは、再び戦闘の構えを見せる。体のあちこちに傷が見られ、殴打痕は痛々しい。服は土に汚れ、所々破れている。しかし、そんな印象を打ち消すかのような気迫溢れるアリアの構え。彼女が、先ほどまでとはどこか違うというのは、誰から見ても明らかなものであった。


 その構えのまま、アリアは自然に動き出す。野生動物の狩りは直前まで警戒されないように殺気を見せないというが、まさにその通り、アリアもこれから人を攻撃しようとは到底思えない足捌きで虎視眈々と「五角頂」を狙う。

 一瞬で果てしないほどの睨み合いを済ませた両者は、先手を取るべく行動を開始する。


 先に攻撃が届いたのはーー「五角頂」だった。


「我流 『五月雨』」


 四方に加えて上空からも降り注ぐ、避けようのない容赦ない一撃。並の人間ならば全ての攻撃が命中してもおかしくないほどの精度で、アリアに杖が襲いかかる。

 しかし、結果的にはアリアには攻撃は当たらない。その後も、「五角頂」はアリアに攻撃を仕掛けていくが、彼女に相殺されるか、避けられるかで当たることはなかった。皮肉にも、先ほどの展開のリプレイを役者を交代して再生しているような、そんな光景が繰り広げられていたのである。


「秘奥前章 猟犬の体」


 よく観察すれば、アリアの足捌きは先ほどとは全く変わっていた。いや、足だけでない。体の全てが先ほどとは違う原理で動いている。彼女の戦闘スタイルは、よりしなやかに、より強靭に、より洗練されたものへと生まれ変わっていた。


「秘奥 漆 『多頭一心』」


 アリアの腕が、足が、まるでそれどれ独立した生き物のように動く。一つの生き物には、どうしたって拭いきれない動き方の癖のようなものが存在するのだが、アリアの攻撃はそういう次元からは解き放たれていた。

 誠に別の意識を持つかのような、そんな多様な攻撃。一つの体がいくつもの意識を完全に制御しているかのように体が動く。それはすなわち、対応するのが非常に困難ということである。


 「五角頂」は、抵抗の余地なく、ほとんど全ての攻撃を浴びる形となった。獣人化して、さらには「猟犬」としての攻撃を完全に思い出したアリア。その一撃一撃は、地をも穿つほど重く、鋭い。

 そんな攻撃を何度も受けたのである非常に短い時間で、「五角頂」の全員が戦闘さえできないほどに傷を負っていた。


 しかし、「五角頂」はまだ立つ。何度も、何度も。そういうやりとりを繰り返し、いつしか長い、長い時が経っていた。しかし、悠久はこの世に存在しない。するとするならば、それは必ず偽りで。いつかは終わりが来るのである。


 先ほどとは全く別の構図で、地面に伏す「五角頂」を見つめるアリア。その口から、どこか寂しそうに言葉が溢れ出す。


「終わり、なのですか?」


 「五角頂」は、息も絶え絶えながらもアリアの方を向き、全身の力を絞りながら返答する。だがその声も、もはや一人分しか聞こえはしない。


「あぁ、終わりだ。私以外の「五角頂」はもう意識がないし、私もおそらくは内臓が死んでいる。どう足掻いても、ここからの挽回は不可能だろう」


 アリアは、「五角頂」、いや、「五角頂」だった男を見ながら最後の言葉を放つ。


「私が戦えたのは、あなたのおかげでもあるのです。盗みじゃない、武を本業にしている心の底からの武人だから、何も恐れずに戦えた。あなた達は、人を陥れる勝ち方はしないと、そう信じれたからでもあるのです。だから、せめて私の最大で」


 アリアの口からこぼれ落ちた言葉は、極めて儚く、男の上にこぼれ落ちる。それを感じた男は、弱々しく、だけれど幸せそうに笑った。


「そう言ってくれるなら、武人冥利に尽きる。殺ってくれ。戦いの中で命を落とすことこそ、我らの誉れだ。生を乞いはしない。ただ最後に、覚えてくれ。我を、「五角頂」という存在を」


 アリアは、その言葉に一瞬喉を詰まらせ、それでもはっきりと言葉を返した。


「えぇ、任せるのです」


「秘奥 拾 『猟犬』」



 その瞬間、勝負は決した。

申し訳ありませんが、明日、明後日の投稿はお休みさせていただきます。

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