大術式 ー起死回生の一手
短くてすみません。
混乱。今の俺の脳内を一言で表すとしたら、それよりも相応しい言葉は存在しなかったであろう。脳内を大量のエクスクラメーションマークが侵食し、疑問と唐突な死刑宣言の狭間で何も考えられない。
「思ったよりも落ち着いていらっしゃいますね。さすが航様です」
うん、そんな事ないよ?わけがわかんなくて外見がフリーズしているだけだよ?考えていることを覗き見したら、多分驚くと思うよ?頭の中ぐっちゃぐちゃだもの。
まぁ、勘違いしているならばさせておけばいいやと言う思いで、俺はジンに発言の続きを促した。
「失礼、私も少々取り乱していたかもしれませんね」
俺の言葉で多少我に帰ったのだろうか、彼はそんなことを言いながら再び言葉を発し始めた。
「一旦場所を元に戻しましょう」
彼の提案で、俺たちは先ほどの大通りへと歩み始めた。いっときたりとも無駄にしたくないであろう今のジンが戻るという選択肢をあえて選んだのであれば、そこには何かしらの打算が存在して然るべきである。
そのため、俺は無駄になることはないと信じて、彼の背中を追うことができるのである。
先ほど全速力で駆け抜けた道のりを、今度は小走りで駆け抜ける。と言っても、俺たちの小走りとは、五十メートルを大体七秒くらいで走れる感覚である。なので、普通の人の全力近くは出している事になるのだが。
そんなスピードを落とさずに常に走り続けたら?案外早く目的地には着くものである。走り始めてから五分もしないうちに、俺たちは大通りへと行き着いた。
「では航様、この魔法陣を見てもらえますか?」
ジンが視線だけで促した先へ、俺も関心を向ける。その先にあったのは、まさしく先ほどの魔法陣に他ならなかった。
「構成要素は、緑と黒。つまり、風と闇。全てを吸い出すために準備された元素の反応です」
特に魔力。影響範囲かにある全てのものを吸い出す地獄の黒穴。それが、この魔法陣の本質である。その脅威は、わざわざ言葉にせずとも伝わるであろう。
しかもその魔法陣の効能は、この結界いっぱいに広がっている。それに加え、先ほども確認したように、内側からはどんな攻撃もほぼ通さない鉄壁の結界。
ここまで来れば言えることはただひとつ、侵入しているつもりが、俺たちが奴らの本拠地へと誘き寄せられていたに違いないのである。
「さらに言うならば、この魔法陣、地脈から漏れ出る魔力を動力源にしています。それを枯らすことができるわけもないし、仮にできたとしても、他の地脈溢れ口から自然に魔力が補充されてしまうのだそうです」
そんなのもう半分詰みじゃあないか。直接魔法陣を封じる手はない、と。
「もう我々にできることは少ししか残っていません。全滅覚悟で起死回生を託した一手を打つか、なだらかな餓死を選ぶのか」
「選んでください。情報屋の次なる一手を」
彼の言葉に導かれるように俺が選んだ道は、茨の道。俺たちが生き残るための、考えうる限り最後の方法であった。




