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悪役覇道  作者: wistereal
三章 『皇国覇道ー序 独立』
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北征 ー遠征

何だか歴史の教科書っぽくなりました。解せぬ………

 ヘル=ドメイン大連峰。北方大陸(ノーシス)の北西部に位置する、大陸一高い山が属する大規模山脈である。大連峰と言われているところからも、その大きさは想像することができるだろう。

 語源は『死の領域』。足を踏み入れた人間のほとんどが帰ってこない、もしくは遺体で見つかることが原因である。噂では、大型の魔物の巣窟になっているとか、毒が充満していてそもそも立ち寄るだけで倒れるとか、実に様々である。

 とはいえ、実はその噂の真偽というのは何についても明らかになってはいないのだ。その状態で後世に情報が渡ると、寓話性が増して本当に誰も手を出してこない天然要塞ができる。誰も詳しくは知らないが、とにかく入ってはいけない山。それが、ヘル=ドメイン大連峰なのである。


 さて、どうして急にこんな話を始めたかというと……その、「ヘル=ドメイン大連峰」の位置する場所が関係している。北方大陸(ノーシス)トップの領土を誇るアノルフィア皇国の領土内なのである。端もいいところなのだが、それだって一応含まれてはいる。

 だが、もちろんのことながら人はほとんど近寄らない。立ち入り可能域でさえ十分に危険であり、しかもこの山脈、表面には資源が存在していないのだ。そりゃあ入る意味なんてないってもんなのである。


 ……逆に言うと、誰かから何かを隠したかったりする時には最適であったりするわけで。古来からそういう使い方をされてきた例もあるんだとか。

 この「ヘル=ドメイン大連峰」。一部分はやたらと険しいくせに地盤はかなり硬く、半分は大和さえ呼ぶことができないほど勾配が緩やかな土地だ。それこそ、安全が確保できるなら、大都市の形成とかにも向いているのである。そのために構築する必要がある大規模魔術陣の痕跡なんかも隠す必要はないしな。


 ここまで言うと大体分かったのではないだろうか。この大連峰には、「裏町」が存在しているのである。比喩でも何でもなく、濃い霧に覆い包まれるかのように、夢の如く。だけれどもしっかりと、その場にあることだけは確か。

 考えてみてほしい。どこかに町を作りたい。転移陣はあるからどれだけ遠い場所でもいい。でもバレにくいようにしたい。そんな欲望があった時、技術があればきっとこの大連峰を選ばないだろうか?その問いかけに対して、過去のマキナが決断を下したというわけなのである。


 ちなみに、これはめちゃくちゃ極秘事項だ。外に漏らしたら一瞬で首どころか胴体が散り散りになるレベルの。裏町の殆どの者に居場所が知られていないからこそ、裏町には価値があるのであって、場所なんて判明してしまったらただのでかい要塞と何も変わらないのである。


 この「ヘル=ドメイン大連峰」。非常に厄介な性質を持っている。特殊効果を持つ自然現象、例えば情報ジャミングの霧というものが発生するらしく。スキル関係については、ほとんどの場合、意味をなすことがないのだ。

 裏町の中は大きい結界で覆われているからあまり関係はないのだけれど、一度でも外に出たらかなりまずい状況に陥っておかしくないらしい。実際、外に追放する流刑?も行われていた時代があったのだとか。



 と、長ったらしく語ってしまったが、結局はなにが言いたかったのかと言うと……


「我々は、義務を果たす必要があります」


「その為に、先んじて。北方集落の裏町統合。北征を始めたいと思います」


 つまり、そういうわけなのである。ヘル=ドメインに存在する連山大平野。その最北端にして頂点に存在する、人類可能生存域のぎりぎりに住む人間たち。生きることに特化した精鋭たち。そんな彼らに、俺たちは牙を向けなければいけないのだ。


 裏町と同じように、ヘル=ドメインを隠れ蓑にする組織というのは案外多く存在する。考えることは皆同じ、と言うことだろうか。一定以上の硬度の結界を張れる裏組織は、ヘル=ドメインなどの危険地帯に拠点を構えることが多い。色々と揉め事とかも起こらないはずがないのだが……


 だが、裏町が最大規模なのは確か。対外的にはまとまっているように見せかけているし、一応、「ヘル=ドメイン大連邦」を結成し、たとえ外面だけだったとしても、平和を保ってきたのである。

 少なくとも裏町付近に拠点を構える者達は、そうやって生きてきていた。



 だが、均衡は崩れる。組織の結界術を担う指導者一族が相次いて死亡するケースが、二、三組織で見られたのである。裏町以外の「ヘル=ドメイン大連邦」所属組織は、これを裏町の所業と断定。そうして、揉め事が起こり始めたのである。

 明らかに、そんなのあちら側の組織の陰謀である。このタイミングを見るに、どうせマーディッシュとでもつながっていたのだろう。どう考えたって誰かが裏で糸を引いている。

 だが、きっとそんなことはどうでもいいのだ。「どうやら裏町の内部がゴタゴタしているらしい」。それで十分。最大勢力を嫌う勢力なんざ探せばいくらでも出てくる。


 その結果、裏町は「ヘル=ドメイン大連邦」から脱退。完全なる敵対構造が出来上がったのである。


「愚かにも我々『裏町』、ひいては「箱庭(ガーデン)」を敵に回した償い、しっかりと払ってもらう。頼んだよ。『八位』殿」


 新参者に厄介事、面倒ごとが回ってくるのは自明の理というもので。そうして、マキナの静かな怒りの中、俺達は北伐の任を負うこととなったのだった。

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