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悪役覇道  作者: wisteria
第一章 『悪役』
8/58

検証

 一定条件を満たしている人間には、『悪役覇気』は魅了(カリスマ)として作用するのではないか。このことに思いあたってから三日間。

 その間、特に何も無かった。急にチートが手に入るわけでも、裏社会を牛耳るための準備を始めるわけでもなく、居候としてジンの家に住み着いていただけだった。


 考えてみてほしい。自分のスキルに特殊な効果がありそうだと分かったことはとても嬉しかったが、それをどうやって検証すればいいのかなど全くわからないのだ。

萎えるだろう?俺は一日で萎えた。

 この世界で生き抜く術が生まれそうであることはとても嬉しいのだが、だからと言って内面的なものが何か変わるわけでもなく。俺は日本でゆるゆると生活していた現代人なわけで。

 その怠惰の結果、俺は完全な居候と化していた。こちらの言動が全て相手に好意的に解釈される状況のせいで、率直に言って俺は堕落しかけていた。

 何をしても、しなくても誰かから嫌われることも、怒られることもない。まさに天獄。天国の獄中。怠惰や甘やかしといった人がダメになる要素フルコースのような現状は、着実に俺を腐らせていた。


 彼は、自分にとっても都合の良い事が多いのだから気にしなくても良いとは言うが、こちらからしてみれば、罪悪感が尋常じゃない。恐ろしいのは、この状況に早くも俺が慣れ始めていると言うことだ。だんだん罪悪感が薄れ始めている。

 この状況が当たり前になる前に、何かしなくてはいけないだろう。そう考えた俺は、一度挫折した自分のスキルの検証を再び始めることにした。


 第一段階。外に出る。今のところ『悪役覇気』による『ヘイティング』の反応がなかったのはジン()だけだ。というか、ジン以外にほとんど人に会ってないんだけど。とにかく、まず比較対象を見つけないことには話にならない。対象実験、と言うわけだ。

 ジンの本拠地である建物から抜け出すのは初めてだった。だから、舐めていた。日本とスラムの差って奴を。俺がこの場所で生きていくっていうのはどういうことかってことを。

 初めて見た「裏町」は、汚臭と人々の行き交う場所であった。足場の悪い道路に、時折脇道からフラフラとやってくる明らかにまともに飯が食えていないであろう痩せ細った子供達。

 人間の汗と、体臭と、糞尿の匂いが混ざったような悪臭。路地裏の奥から聞こえてくる暴力音と悲鳴。道端に倒れ込んでいる者まで。


 現代日本では見ることもないであろう悲惨な状況。あの(追放の)時よりもずっと痛々しい負の視線、それをこの場にいる全員が互いに向けていた。裏町の人間にとって、本質的に見れば自分以外は全員敵なのだ。そう、思い知らされた。

 だが、不思議とこの空間が居心地が悪いというようには感じなかった。その事実に、自分自身に恐れを感じてしまう。


 この変化に釈然としないものを感じながらも、俺は検証のために老若男女問わず様々な人に話しかけ始めた。第二段階。相手の反応を見る、の実行である。


「どうされましたでしょうか?」


 なんて慇懃無礼レベルで丁寧な者も居れば、


「あぁ?なんだ兄ちゃん?」


 みたいな漫画でしか見ないような典型的なゴロツキみたいな奴もいた。


 十人ほどに話しかけてみたが、結果、半数ほどの人が俺に好意的な反応を示した。好意的なというか、なんだかへりくだるような態度だったような気がしなくもないが。

 第三段階、考察。検証の結果からスキルの内容を導き出す訳だ。だが、第二段階で『魅了(カリスマ)』の効果が現れた人々にも特にこれといった共通点はなかった。

 ひとりは例の慇懃無礼さん。中年、いやどっちかっつうと壮年?まあよくわからんがとにかく男性だ。他には少女だったり老齢の女性だったりといろいろ。何というか、完全に無駄骨折りのような結果に終わってしまったわけなのだ。


 最終的に、骨折り損のくたびれ儲けとでもいうべき結果に終わってしまったが、全く成果が無かったというわけでもなかった。裏町の構造も大体把握することが出来たし、これからもっと検証を重ねていけばいいだろう。

 俺は、そう自分に言い聞かせて、結果という結果を持ち帰ることもなくアジトへと帰還した。

明日は一〜八話までの改稿を行う予定です。主に短いエピソードをもう少し読み応えがあるように変える予定です。

余裕があったら新しいエピソードを投稿しようとは思っておりますが、少し難しいかもしれません。

改稿後の作品にも目を通していただけると幸いです。

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