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悪役覇道  作者: wistereal
三章 『皇国覇道ー序 独立』
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定例会議 後

「お疲れ様です。ずっと立っていたのです。お疲れでしょう?座ってください」


 今、俺達は情報屋のアジトへと舞い戻っていた。珍しく効かせたマキナの配慮によって、爆弾発言がなされるも一旦混乱は収拾した。そのため、今回は解散ということになったのである。


 豪華絢爛という言葉がこれ以上ないほど似合うやたらと煌びやかな会議室を後にし、二十数分ほど歩いてアジトに着く頃には、東の空が朝の雰囲気に染まり始めていた。おそらくあと十分もすれば日の出が始まるだろう、そんな時間帯である。


 紫とも朝焼けの赤とも言えない絶妙な色をした空の下、俺たちは今、会議後の数少ない一息つける時間を堪能しているのであった。月がちょうど真上に昇る頃から始まった会議が終了したのは日の出三十分前というところ。相当長い時間を話し合いに費やしていたと考えることができる。

 もちろんこの上ないほど疲れているわけで、今のまったりタイムはとても重要なひと時なのであった。ちなみに、今、俺たちに椅子を勧めてくれたのはジンではなく幹部級(チャイルド)の一人である。歓待、と言ったらおかしいだろうが、それくらいの勢いで気を揉んでくれているのだ。


 流石のジンも気力を大きく持っていかれたようで、姿勢を極端に崩したりしてはいないものの、その表情から疲れを読み取れるため、ポーカーフェイスに回す体力もないのだと何となく察することができる。

 心なしか背筋も曲がっている感じがするし、やはりしんどいのだろう。いくら俺が言ったとて休むとは思わないから、あえてそういう母みたいなことを言ったりはしないけれど。


「しかし、激動というか、何というか……」


 ジンが気力を使っているのを隠しもしない表情で、口を開いた。見ている方が「重い口を開いて」なんて描写したくなってしまうほど疲れている様子である。

 だが、そんな状態でも休むつもりはないようで。紅茶、いや正確に言えばフィンテルということになるのだろうが、とにかくそれを啜りながらさらに発言を続ける。

 情報屋の鏡、というか、重要な情報は何よりも優先して仲間に伝えるその心待ち。彼が生粋の情報強者であることを窺わせる。強者だからそういう気配りができるんじゃなくて、気配りができるから強者たり得るのかもしれないけれど。


「まず、共有です。予想通り、と言っては何ですが、諜報系能力の一切は遮断されていましたから、貴方達は状況を一切把握できてはいないでしょう?」


「現状を一刻も早く理解して、これからの未来を先手先まで読まなければなりません。心して聞いてください」


 そう言ってジンは部下たちに会議の様子を伝え始める。その内容は、俺はもう知っていることだから流し聞きな訳なのだが、そんなことよりも今聞き逃しちゃダメなことを言っていたような……

 諜報系スキルを使って何かしらするつもりだったのか……ばれたらまずい事になってもおかしくはないだろうに。バレない自信があったのか、はたまた……

 俺が半ば呆れている間にも、当然だが状況説明は続いていく。というか、もうほぼ終わっている。相変わらず優秀なエージェントたちなのだから早くて当然かもしれないが。


「……と言った感じですね。大体は理解できたかと思いますが?」


 ジンが周りを見渡し、全員の顔色をチェックして分かっていなさそうな者がいないことを確認する。一通り説明を終えたジンは、その後、今後の予定を語り始めた。


「私達は基本、今回の会議で決められたことに沿って動くことになると思います。それは仕方がない。私たちの総力をもってなお、箱庭(ガーデン)の十分の一に届くかどうか、といったところでしょうから」


 その通りである。情報屋は、勝てない相手に喧嘩を売るような真似をする馬鹿ではない。情報がいくら大事って言ったって戦力がなけりゃ意味がないしな。ジンの考えは至極真っ当である。あえて指摘するなら、実際の戦力は十分の一よりももっと劣るであろうがな。


「ですが、私はどうにもそれが癪に触る。我々は、どうしても傭兵組合に対して後手に回りがちです。圧倒的にツテとコネが足りず、いつも後付けの情報しか渡されないから。私はそれを、仕方ないと諦めるつもりは毛頭ありません」


 彼が言っていることは、痛いほどわかる。常に掌の上で転がされっぱなしな苛立ちと焦燥感。焦りに似た何かが俺たちの根底に現れる不快な感覚。それは、打破できるものならもちろんしたいだろう。

 自分の行動を自分の意思で決めることができる、そんな生ぬるい場所はこの世界のほとんどに存在していない。それができるのは、最も上に位置する者のみ。だからこそ、孫悟空の如し自分に反感を覚えたとして、それを行動にまで移すものがほとんど存在していないわけであるが。


「今回我々が活動するのは、皇国全域。アイシルに加え、様々な場所に散っている協力者(ブラザー)が、きっと私たちの役に立ってくれるはずです」


 ツテとコネ、その観点で言えば、裏町中では圧倒的敗北を喫しているが、外の街、例えば下街ならば?結果はわからない。であるならば、観音の大きな掌から抜け出すチャンスは、本当に今、この瞬間しかないかもしれないのである。

 勝ち目がないなら戦わないということは、少しでも勝機があれば戦いを望む戦闘強でもおかしくはないわけで。少しでも勝つ可能性があるならやってみようではないか。そんな意見には、俺も合理性を感じる。


「出し抜いてしまいましょう。傭兵組合(クラン)、裏町の全てを。いつまでも追従者である気はさらさらないでしょう?強欲に、利己的に。それが大事と、『一位』殿も言っていました」


箱庭(ガーデン)としての自覚を持って、事に当たりましょう」


「我々は、群青の書と暗器。裏側を知り、それでも進み続ける者。挫折はしない、進むだけだからです。勝ち取りましょう。誰かのものでない、私たちだけの勝利を」

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