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悪役覇道  作者: wistereal
三章 『皇国覇道ー序 独立』
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『八位』と定例会議 壱

 クレイヴ・ヴァルキリア。俺たちは、そう名乗る青年の手によって会議室まで案内されていた。くだらないルールだとは思うのだが、どうやら新参者が一番早く来ていなければいけない、というような風潮があるようで、それに則るとするならば、『情報屋』が一番先についていないといけないという訳なのである。

 それで、現在マキナの第二秘書である彼に、案内してもらっているのである。案内してもらっていてなんだが、彼は、マキナの秘書の中では少し異例な存在である。といっても彼で俺が見た秘書は二人目なので、なんともいえないのだが、なんというか雰囲気が全く別物なのである。褐色の肌に身を包み、髪は白というよりは艶のある銀に近い。なめらかな髪質の髪を、粗雑に短く切り取っているのが、彼のワイルドさを強調している。

 おおよそマキナの近くにいなあそうなタイプである。実際、ファイズなどとも違って言葉遣いや所作が丁寧なわけでもない。となると、よっぽど強いのだろうか……?そうでないとわざわざ彼を登用する理由がないように思える。


 そんなことを考えている間に、俺は会議室についていた。大体に二十分ぐらい歩いていた計算である。いくら複雑だと聞かされていたとはいえ、一つの建物の中でこんなにも歩き回るとは思わなかったなかったので、少し驚いているところである。



 俺は、「定例会議」専用の会議室に足を踏み入れた瞬間、思わずため息をこぼしてしまった。部屋の隅から隅まで、考え尽くされた無駄のない装飾。荘厳な光景であるにもかかわらず、決して主張し過ぎない絶妙なライン。華やかだというのに、決してくどくない。

 本日なされている飾り付けは、青がメインのものであり、武具系ではなく文化系の装飾が多いようにも感じる。おそらくだが、『情報屋』という職種の人間達を新たな上位者に迎えるということで、俺達をホストとして扱おうとしてくれているのかもしれない。

 青い布に本と氷の結晶と蛇があしらわれている、それが『情報屋』の意匠である。それに準じた装飾を、と考えた結果であろう。すくなくとも俺には、その内装は情報屋を接待するために組み上げられたもののようにしか見えなかった。


 クレイヴが椅子を引くのを見て、ジンはそこが『情報屋』の席であると確信した。各組織の象徴のように背後に立てかけられていた武器は変更がなされ、ジンの席の後ろには、魔導書と暗器が配置されていた。いかにも情報屋、というイメージである。そのイメージとあまり乖離してはいないのだから別にいいのだけれど。

 俺がジンの右後ろに控え、アリアはその反対。残りの二人は、それぞれ俺とアリアのすぐ後ろで近辺を警護している。そのように一通り役割が決まったところで、足音が響いてきた。


「やあ、さっきぶりだね。航君、ジン君、アリアちゃん」


 咄嗟に警戒心を強めるものの、その声を聞いた瞬間気が緩んでしまう。あまりにもいつも通りすぎるマキナの声。気を張り詰めていた身としては、少々の油断くらいならば許して欲しいものである。


 俺は、少しだけマキナと雑談でもしようと思っていたのだけれど、それは、マキナの背後から聞こえてくるいくつもの足音をきk馬でのことであった。マキナの後に追従するように、「協会が、「春歌種痘」が、「「ディクルズ紹介」が、どんどん都会ギア室に入ってくる。そして、誰もがこの会議室の内装を見て、一度は大きなため息と共に、簡単にくれていた。


 名実ともに、ここ、裏町のトップ達。ここの人間の意向によって、多くの人の生活が揺らぐ可能性すらある。発言をする立場にはないものの、そういう場所にいることに、一抹の不安と、なんだか高揚してくるような感覚、そんなものを覚えていた。

 さらに、残りの組織の代表達も、自らの威風を示すが如く、堂々とした所作で会議室に入ってくる。プライドと意地のぶつかり合い。そんなものがこの短い時間だけで読み取れた。


「全員揃ったようだね。少し早いけど、始めようか。会議を」


 マキナの声が、俺たちの脳に直接訴えかけているかのように、やけに響いて聞こえる。その立ち居振る舞いは、普段俺に見せるようなものとは全くの別物で、今の彼なら、悠久の時を生きてきた、とさえ言われても信じてしまいそうになる説得力のようなものが感じられる。


「さて、早速だけど、紹介しよう。『情報屋(フェリスターク)』。今後、第八位となる組織だ。ここにいる彼、ジン・フェリスタークは古参中の古参にも匹敵するほどの統率力と実力を兼ね揃えている。きっと、僕たちがさらなる発展を遂げるための良き協力者になってくれるだろう」


 そこで、彼は一度言葉を区切り、大きく息を吸って残りのセリフを吐き出すように述べた。


「さぁ、皆。新しき仲間に、乾杯」


 全員の手元に、いつの間にか血のように赤い液体が並々と注がれたグラスが届けられていた。血の契り。そんな言葉が俺の脳裏をよぎる。

 だが、マキナは臆す様子など微塵も見せず自ら眼前にあるそれを手に取り、大きく掲げて、音頭を取った。

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