作成
作品の保存がうまくできておらず、このような時間の投稿となってしまい非常に申し訳ありません。
明日は必ず十二時投稿を厳守しますので、見ていただけると幸いです。
「敵襲、敵襲。総員戦闘準備に移行せよ。繰り返す、敵襲……」
マーディッシュ商会本部の建物内。そこは、表通りの静寂に満ち、尚且つ落ち着いた空気と正反対の熱気が立ち込めていた。一度は客として来たことがある身であるが、その時とは何もかもが変わって感じられる。構造も、内装も、以前と全く同じであるにも関わらず、である。
考えてみれば当然のことで、客と敵では警戒度から何から違うのだ。全く違う雰囲気が感じられて当たり前ではあるのだが、その事実を前にするとどうしても戸惑ってしまう自分がいた。
建物の構造も、美術品などの内容物も全て記憶のまま。だが、漂う雰囲気には大きな違いがみられた。以前の醜い欲と貨幣から立ち込める金属臭い匂いではなく、ただただ張り詰めた緊張感が漂っている。自然とこちらも背筋が伸びそうになるほどの、である。
さらに、むせかえるような熱気から、この建物のどこかで火がついていることが推察できた。ただし、もちろんのことながら、それをやったのは俺や子供達ではない。
俺達は、今回の戦いでマーディッシュの「協会」、ひいてはアノルフィア皇国との繋がりを証明しなければいけない。そうしないとマキナの立場が弱く、危ういことになるし、それは俺たちを支援する基盤がなくなるということだからである。
単なる失火であるのか、それとも証拠隠滅を目論む何者かによる行動なのか。俺にはわかるはずもないが、どちらにしても消火作業は急務である。でなければ、諜報作業が専門の俺達が専門外の戦闘をこうして行っている意味も無くなってしまうのだから。
俺は、耳に手を当て、そこに嵌めている魔術具に魔力を流しながら言葉を発した。
「D班に指令。敵対組織本部建物内で出火を確認。物的証拠保持のため、速やかに消火活動を行うこと」
俺の指示が子供達に運ばれていく。ちなみに、班についてだが、単に今回の作戦の役割ごとに子供達を振り分けただけである。A、B、C班がそれぞれ裏門、東門、西門に配備している戦力。
そして、D班は遊軍である。それこそ、こういう事態を見越して用意して置いた存在なのだ。自らの采配を誉めてやりたい。まあ、ジンのアドバイスによるものではあるのだけれど。
「了解」
耳元から、端的な返事が返ってくる。戦場の指揮。今回最も重要な仕事をしっかりと果たせたことに安堵し、張り詰めていた精神が少し緩んだ。
だが、俺はその弛緩した精神をすぐさま切れそうなほどにきつく張り直した。戦闘はまだ始まったばかりだ。余裕をこいていたら真っ先に食われてしまう。短期間ではあるが、裏町で過ごした経験が、俺に警戒しろと訴えていた。
さて、ここで一旦戦況の整理をしておこうと思う。俺が正門から奇襲を仕掛けた際、睡眠状態にない相手方の数少ない戦力たちが正門側に向かってきて、俺に対する対抗を試みた。
寂れた裏通りに面しており、人通りもほとんどないため残りの三門の警備的重要度は無に等しい。そこから少しでも多くの戦力を派遣するのは当然だが、今回の戦いに限ってはその当たり前が彼らの首を絞めることになった。
各門に残留した戦力は恐らく一人か二人。その程度の人数であれば、いくら相手の方が強かろうと数の利により、ゴリ押しで排除することが可能だ。その結果、各門に関しては完全にこちらが制圧することに成功した。
作戦は順調に進行している。しかも、真骨頂はまだまだ先。いまだ予備段階、相手が最も嫌がるための罠を作り上げる作成の時間である。俺は、この先の展開を思い、武者震いとも恐怖ともわからない震えが体に浮かんでくるのを感じた。




