表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役覇道  作者: wisteria
第二章 『裏町覇道』
47/57

釣果

投稿が遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした。

 「『悪役覇気』、全開。「トレース」 秘奥 「顎咬(アギト)」『付加加算(エンチャント)』「鬼火」」


 今俺にできる全力の攻撃、それをただただ単純に相手にぶつける。それが俺の唯一にして最大の役割である。

 魔法的要素が加わった「顎咬(アギト)」の威力は飛躍的に上がっており、その一発の衝撃波だけで、マーディッシュ商会の細かい金の装飾があしらわれた重厚な扉を半壊状態にさせた。その余波はさまざまなところに広がっており、地面にはひびが、周辺の建物も構造が弱いものは半壊状態にまで追い込まれていた。


 その光景を見て、俺は自分の役割を果たすことができたことを実感する。恐らく、この上なく順調な滑り出しであろう。


 現在は丑三つ時に近い時間帯であり、おそらく、最低限の見張りだけを残してほとんどのものが寝に入っている時間帯だ。その証拠に、マーディッシュの本部から外へ様子を伺いに来ているものは皆無だ。

 普段であれば夜は密談の場として使用される事もあるだろうが、「定例会議」で代表がいない今日にそんなそんな話し合いをするとも思えない。だからなのか、本当に見張は少数しかいなかったのだろう。

 俺に言わせてみれば完全なる油断でしかないのだが、そんな事を言ったとて、である。


 数テンポ遅れて、俺たちが今いる表門へ走ってくる音が聞こえた。建物の中の音だが、気配を消していない足音なんかは、少しは読み取れるようになっている。自らがどんどんと人間を辞めていっているのが分かって恐ろしいばかりであるが。


「来るよ、航君。ぜひ、存分に暴れてくれ。楽しい狂奏曲を響かせておくれよ」


 ファイズの声が背後から聞こえる。もちろんそうするつもりであるが、どうしても彼の言葉遣いが気になってしまう。多分彼は、戦場だとちょっと性格が変わってしまうタイプの人種なのだろう。普段はもうちょっとまともだものな。狂奏曲って……



 さて、ここで一旦『付加加算(エンチャント)』についての話を出しておこうと思う。恐らくこの先語れるタイミングがないので、念のため。

 俺は、ファイズの指導を受けてから二週間、覇気の魔法変換について検証と失敗を繰り返していた。それで分かったことは、大きく分けて二つ。


 一つ目は、属性について。ベースが闇属性の覇気だからなのか、完全に別属性を再現することはできなかった。なんというか、感覚的なものだから説明はしづらいのだが、馴染みやすさみたいなものが違うのだ。

 火でも「聖火」とか「鬼火」とかあるだろう?そういうイメージで、自らにフィットする属性っていうのは軽恋は同じでもちょっと違ったりするものなのだ。

 言うまでもなく、火は「鬼火」、風は「暴風」。そんな感じで、ちょっと殺傷能力が高いというか、物騒なイメージの属性しか再現できていないような感じである。


 次に二つ目。どっちかというとこっちの方が大事である。そう、『付加加算(エンチャント)』についてだ。至極当然のことではあるのだが、覇気を変換して魔法に変えているということは、何も意識しなければ、魔法が体にまとわりつく状態になる、ということである。

 自らの魔法でダメージは基本的に受けないらしく、最初はちょっとわずわらしいけど放置、そんな考え方だった。だが、訓練を重ねる中で思わぬ事実が発覚したのである。

 攻撃に魔法の効果が乗る現象、『付加加算(エンチャント)』だ。これによって攻撃力が飛躍的に上昇することがわかった。最初に何も知らずに行った時、ただの拳で壁が壊れかけて非常に焦ったものである。


 と、こんなふうな感じで俺は訓練を重ねていた。もちろんファイズから指示を受けた訓練プラスαで、である。実に大変であった………



 だんだん大きくなってくる足音で、俺は強制的に回想から引き上げられた。あまり楽しい回想でもなかったので別にいいのだが。感じられる敵は大体六名。多分、今俺たちが今いる正門以外の三方向の門から見張りがやってきているのだろう。それ以外も、多分慌てて戦闘準備を進めている事だろうと思うのだが、俺にはそれを感じられるほどの技量がないのでどうしようも無い。

 どんな状況になろうとも、粛々と自らに与えられた役割をこなすことが俺の仕事である。そう自分に言い聞かせ、少しでも気が緩めば後ろ向きになりそうな気持ちを前に向け続ける。自分を奮い立たせた俺は、敵陣へと足を踏み込んでいった。少しでも多くの釣果を出すために。


 昼間の喧騒とは対極的に静寂に包まれていた町が、少しずつ焦燥感に満ちた騒音に飲まれていく。その様子は、何かの滅亡と誕生を示唆しているように感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ