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悪役覇道  作者: wisteria
第二章 『裏町覇道』
33/57

秘奥

 アリアとの戦いが終わって一夜。俺は、再び訓練所にいた。彼女との戦いで、自分がこの先強者と戦った時に使い物にならないと感じたからだ。

 それは、俺の利用価値が一つなくなることを意味する。それに、ジンが俺をアジトに置いておく理由もなくなる。それだけはなんとしてでも避けたいところなのだ。

 マキナと約束していた、箱庭(ガーデン)の組織を瓦解させる手伝いもしなくてはならない。俺にとって戦闘力の増強は急務なのだ。

 ちなみに、彼女は完全にのびてしまったので空き部屋で寝かせている。本当に申し訳ないことをした。


 先程の戦いでは反則に近い技で何とか勝利をもぎとったが、身一つの少女に敗北を喫しそうになったのである。危機感を覚えた方が良いだろう。

 そういうわけで今、俺は訓練場に舞い戻って来ていた。また以前やった、地獄のぶっ続き訓練を行おうというのだ。今思い返せばよく死ななかったなと思うが、前回大丈夫だったし今回もなんとかなると思う。


 俺が今回の特訓のテーマにするのは、「秘奥」である。アリアが技を繰り出したときに言っていたので、気になってジンに聞いてみたのだ。


「秘奥とは、代々家系や流派が受け継いできた技のことを指します。スキルなどではなくあくまで技術を極めた先にあるものなので、厳しい研鑽を積んだものならば誰でも使えるものが多いです。だから、秘匿されることが多いのですよ」


 ということらしい。ちなみに、マキナがぽんぽん出していた技も秘奥の内に入るらしい。「我流」と言っていたのは、技を編み出した当人だからだろうな。


 さて、この秘奥だが、非常に「トレース」しにくい。一応出来ることには出来るのだが、本来の威力まで辿り着かないのだ。原因に一応の心当たりはあるのだが……


 先ほどのジンの言葉を聞いた時に思い当たったのだが、秘奥というのはその流派を極めたものだけが使える技だ。つまり、形だけトレースしても十分な威力が出ないのは、流派について完全に理解していないからではないかと思うのだ。

 相手の動きの癖を完全に見極め、自分の動きに組み込ませるくらいの応用が効くようにならなければ、秘奥を扱いきれないのではないだろうか。

 重心の動きの特徴や筋肉の動かし方など、そういう細かいところまでの観察が必要なのだ。


「「トレース」 顎咬(アギト)


 今、俺が攻撃を叩き込んでいるのは藁人形である。耐久度がアホほど高い特注品、らしい。何を考えてそんな物を頼んだのかは知らないが。

 何回攻撃しても全く壊れないところを見ると、高級品に間違いはないようだ。いや、単に「トレース」の精度が低いだけだろうか……


 とにかく、訓練を続ける。と言ってもやることは、イメージを少しずつ変えて、ひたすらに秘奥のトレース練習だ。マキナやアリアが手伝ってくれれば一番手っ取り早いのだが、それに関しては望み薄だろう。

 それができないからこそ訓練を行なっているわけだしな。たらればは今は意味をなさない。必死に繰り返すしかないだろう。


顎咬(アギト)!」


 ただ、ひたすらに、延々と繰り返す。その中でひっそりと日は暮れ、登っていく。そうして、俺の日常は回っていった。



 どれほど経っただろうか。前回と同じように、日付感覚など、とうに失っている。気の遠くなるような長時間が経った気もするし、ほとんど時間が経過していないような気もする。

 ただ、確かなのは今が夜だということである。上階から漏れてくる光で、その程度の事はわかる。裏を返すと、それ以外の事は全くわからないということでもあるが。


 そんなことを考えていると、カン、カン、と階段を降りてくる音が響いてきた。落ち着いた音。俺も、足音で誰が歩いているのか、ある程度わかるようになった。これは、おそらくジンだろう。

 順調に人外への道に踏み込んでいる気がするのは気のせいだろうか。うん、気のせいだ。きっと。よく考えたら俺の周りの人外達ってもっと化け物じみてるし。足音くらいなら普通に出来る人もいるだろう。


 階段に続く通路から、案の定ジンが姿を見せた。彼は、ありがたいことに今俺が最も聴きたかった報告をしてくれた。


「航様、お邪魔だと思いますが、報告です。アリアさんが意識を取り戻しました」

今日はちょっと短めです。

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