表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役覇道  作者: wisteria
第二章 『裏町覇道』
31/59

主人

「私は、誇り高き「猟犬」の家系。獣王の牙の末裔だ。本当に不本意だが、お前を一時的に『主人』と認めてやる」


 アリアの睡眠中にジンから聞いた話によると、この場合の『主人』は、通常とは少し違った意味を持つ。いや、意味は同じなのだが、スケールが違うと言うべきだろうか。


「獣人は、生涯使えるべき『主人』を持つ事を人生の最終目標としています。この場合の『主人』とは、彼らが最も慕う人物や恩がある人物のことを指します」


 ジンが半ば無理矢理言わせた気がしなくもないが、彼女は一応俺のこと『主人』と認めた。一時的、とは言っていたがな。それでも、ある程度の覚悟を持った発言だったと考えて良いだろう。

 それに、これまたジンによる情報だが、獣王の側近の家系の直系の者の『主人』には、特別な意味があるらしいのだ。


「獣王の側近の家系、獣僕なんて呼ばれたりもしますが、とにかく彼らが仕えるべきは「獣王」ただ一人です。その家系の者は全員獣王を主人としなければいけません」


 これはまあ、分かる。最も尊敬する人物以外を主人にして仮初の忠誠を誓うというのは、互いにとって良い要素が全くといっていいほど無いしな。


「その後獣王が死んだ際、それぞれの家系は彼の子孫や「獣祖」の血の濃い者を次代「獣王」として祭りあげました。その際彼らは、それぞれの獣王候補を「主人」としたのです」


 これも自然な流れだろう。前王が亡くなれば有力者達の権力争が始まることなんてよくあることだ。この時点で本当の「主人」のあり方が崩れてしまった感は否めないが。「主人」に忠誠を誓うと言うよりは、祭り上げるためだけの主従関係に変わってしまったんだな。


「結局、その争いが原因で獣王国は衰退し、滅びました。その後なぜかその文化だけが残り、獣僕の直系の「主人」は自動的に獣王候補になるようになったのです」


 うーん。何だか変な文化が残ったものだ。そういうのって無駄な争いを避けるために獣僕の家系の「主人」擁立を禁じる流れになるのが普通では?

 そんな流れになる選択肢が浮かばないほど、獣人にとって「主人」という存在は大事なものだということなのだろうか。


 それにしたら、アリアは嫌々認めた感が満載だけども。そう思っていると、彼女はちょこちょこと歩いてきて、顔を少し薔薇色に染めて口を開いた。


「航様は、それで良いですか……」


 いや、全然そんな事ないかもしれん。なんならちょっと懐かれてるまである。そんな要素全然無かったように感じるけどもめっちゃ嬉しい。

 というか、『悪役』を手にしてから初対面の人物とまともな人間関係を気付けたことがほとんどなかったからすごい反応が新鮮で嬉しいんだよな。

 『魅了(カリスマ)』が働いてる?だからどうしたというのだ。何でもいいじゃないか、友好的な関係が築けるなら。


 いや、ちょっと待てよ。俺、主人宣言の時に思いっきり「お前」って呼ばれてなかったか?記憶を掘り返した限り完全にそうだと思うんだけど。

 ………分からん。女性の、しかも子供の考えなんていくら考えても分からない。とりあえず、俺は生まれた疑問に蓋をするように彼女の問いかけに快諾の意を伝える。


 その後、彼女は「てくてく」という擬態語が非常に似合う可愛らしい歩き方で、ジンの方に向かう。だが、口にしたのは相当攻撃的な言葉である。


「航様からお許しが出た。不本意だがお前を主人とするしかあるまい」


 えっ、あっそういう……? そういや誰も俺を主人にするとか言ってなかったような… じゃあ俺の勝手な勘違い?え、死ぬほど恥ずかしい。自意識過剰もいいところだ。

 だってそりゃ俺よりもジンが主人になった方が何かと都合がいいもんな……俺より優秀だし、優しいし、顔もいいし……俺よりも数段スペック高いし……


「何を言っているんですか?あなたの「主人」は航様ですよ」


 大きな自己嫌悪と恥ずかしさのあまり穴を掘って入ろうとしていた俺を、彼の言葉が制止した。

 正直、ちょっと嬉しい。具体的に言うと、ジンの言葉や、それを聞いて喜んでいるアリアの反応なんかが。すごく安心したし、自信がついた気分だ。単純だと言われるかもしれないが、人とは本来このようなものだ。安易な生き物なのである。


 鼻歌でも歌う勢いでアリアは俺に近づいてくる。そのまま、何かをねだるように俺の前で口を開いた。


「航様……一つお願いしてもいいですか?」


 お願いの様子にかなり癒されてしまったので、珍しくも何も考えずに了承の返事を出してしまう。ちょっと迂闊だとわかってはいるのだが、かわいいの前に理性が勝てる確率は現状そこまで高くないのだ。


「いいよ、何でも言ってごらん」


 恐らくだが、後から今の自分の声を聞いたら恥ずかしくて卒倒するだろう。穴を掘り始めたっておかしくない。何てったってこの時は子煩悩な父親並みに緩い顔と声をしていた自信があるのだまだ十五だっていうのに難儀なものだ。自分で言うのも何だがこれからが心配になるな。


「私と、戦ってくれませんか」

昨日は失礼しました。これからも十二時投稿を心がけますので、見ていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ