閑話 ジン・フェリスタークの極秘文書
一旦一章は終わりです。今回は番外編を書かせていただきました。
時間軸はep16 作戦 の辺りです。
私はジン・フェリスターク。情報屋の創始者にして、家族を率いる者。そんな私の最近の日課。それは、極秘文書をつけること。
どうして始めたのか?それは、少し前に起こった、ある事がきっかけなのです。と言ってもよくわかりませんね。せっかくなので、文書を少し見返してみることにしましょう。
勇月 九日 風の日 晴れ/曇り
本日からこの極秘文書をつけ始めようと思います。さて、何から書きましょうか。このようなものは初めてなのでよくわかりません。とりあえず、本日起きた最も大きな出来事について書いていくとしましょう。
本日は、朝から仕事が立て込んでいました。家族の組織としての格を保つためには、ある程度の無茶が必要。なので、部下達のケアもしつつ、ひたすら諜報を行うしかありません。
私達は、仮の顔をいくつも作ることによって諜報を行っています。もしくは、完全に偽の仮面を一つ作り上げて、社会に紛れ込むか。どちらにせよ、相当の労力がかかります。
なので、さすがに一人での情報収集は無理があります。そのため、私は皇都の情報を子供達に集めさせることにしています。
それがあったのは、昼、表町に情報を回収しに行った帰りのことでした。
今日も、私はいつもの通り皇都と裏町をつなぐ転移陣のある下水道、につながる店に来ていました。ややこしい手順ですが、そうでないと表の人が間違って入ってくる危険があります。そうなると、生きて帰ってもらうわけにはいきません。裏の人間も、無慈悲ではありません。命は大切です。なので、そういうふうになっているんです。
皇都の富裕層区にだけ設置されている下水道ですが、裏町の創始者が地下空間を無理やり作り、下水道を強制的に引いたと言われています。
その後、暗号を言って店の裏口に出してもらい、そこにある蓋から地下に潜るのです。古めかしいですが、確実な方法です。
一応店を経由しなくても下水道には辿り着けますが、決まった順路を通らねばならない縛り結界が結んであり、箱庭の中枢部だけがその方法を知っています。
私はまだまだそこにはとどきません。なので、私はまだ酒屋を経由するしかないのです。とにかく、そういうふうに裏口に出て、地下に潜ろうとすると、地下への入り口を塞ぐように、男性が倒れているのを見つけました。
印象的な黒目黒髪。彫りの浅い顔立ち。白に近い黄色の肌。中央大陸の方でしょうか。一見した所そういうふうに見えましたが、おそらく違うでしょう。
私は、比類なきほどでさまざまな方を見てきたと自負しております。ですが、彼はその中でも最大級の覇気を醸し出していました。
最も裕福な大陸で知られる中央大陸の方ならば、ここまでの覇気は出せないと感じました。両親がセントリア出身なのでしょうが、育ちはきっと裏町だと思われます。
少なくとも、安全欲求がずっと満たされていたわけではないのでしょう。なんと表せばいいのかわかりませんが、浮世感というか、凄みのようなものが感じられました。
下位の組織の者は表に出ることすらできません。なので、上位組織に所属している者でしょう。そう思って、私は部下と共に彼の救助を試みたのです。
と、これが今日起こったことの顛末です。なかなか長くなってしまいましたが、これが日記の普通なのでしょうか?
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今見ると極秘の内容が多いですね。鍵をかけておいてよかったです。
その後どうなったのか?では、次は航様が起きられた日のものを読んでみましょうか。
勇月 十三日 闇の日 曇りのち雨/晴れ
今日、救助した男性がお目覚めになられました。東 航という名前の方です。やはり、ファミリーネームが先になっていることを鑑みると、中央大陸の血の方で間違い無いでしょう。
この街の人間は大小様々な問題を抱えています。ですから、もちろん出自を詮索するような野暮は致しませんでしたが。
「おはようございます」
私は、目を覚ました彼にそう声をかけました。子供達と交代で床に着く彼を看病していたので、私が見ている時に起きられたのは何とも喜ばしいことです。
彼の意識が覚醒すると、その瞬間、覇気は目に見えて大きくなりました。その姿を見れば、彼が私より上位者であることは疑いようもありません。
強さこそ力。そんな裏町のルールに則れば、先に自らが話しかけたことは無作法に他なりませんでした。その後、しばらくの間、航様はお言葉を発されなかったので、お怒りに触れてしまったのかと少々焦ってしまいました。
ですが、最終的には名乗ってくださいましたので、少し安心しました。おそらく赦しを頂けたはずです。航様の寛大なるお心に感謝せねばならないでしょう。
「俺は、ここにきたのは初めてだ」
この発言を聞いた時には自らの耳を疑いましたが、詮索するわけにもいきません。複雑な事情がある、程度の認識でいたほうがいいでしょう。
その後の会話で、本当に裏町に来たことがないのだと分かりました。信じられませんが、あまりにも裏町の常識に疎すぎるので、そう認めるしかありませんでした。
他の所で苦労を重ねたのでしょう。常人には目指すことすらおこがましいほどの覇気。流石に過去に何もなかったわけではないはずです。私の目はまだ節穴ではありませんから、ある程度的を得ていると思います。
いろいろと助けて貰えることもあると思い、私は彼をここに置くことに決めました。
この判断が、吉と出るか凶と出るか。私は、自らの判断を信じたいと思います。
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航様を信じる。おこがましい限りですが、彼がいれば何でも大丈夫な気がしてきます。今のトラブルも、何事もなく乗り切れれば良いのですが。
次回から、二章「裏町覇道(仮名称)」です。見ていただけると幸いです。




