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悪役覇道  作者: wisteria
第一章 『悪役』
21/58

格差

「我流 鎌鼬」


 二度目の「鎌鼬」が俺を襲う。その威力は、戦っている俺でさえも、彼を剣神を呼びたくなるような凄まじいものであった。

 彼は、手刀で壁に綺麗な剣跡を入れたのだ。その攻撃が自らに向けられている。そう考えるだけで、通常ならば多大なる圧に飲まれて戦いにならなくなるであろう。恐怖で相手を縛り付ける、実に合理的だ。

 だが、今の俺は違った。恐怖を切り落としたが如く、何の畏れも湧いてこない。生存本能(セーフティライン)が働かなくなった俺は、蛮勇と成り下がっていたのだ。それは、幸いだったのか、不幸だったのか……


「『トレース』!」


 俺の「トレース」の条件。それは相手の動きを「観る」こと。そして、「識る」ことだ。深く観察すればするほどに、相手の動きへの理解が深まる。一日中観察し続ければ、完全に自分のものにすることも不可能ではないだろう。ただし多大なる集中力を要するが。

 それとは別に、相手の動きを「トレース」できる最小観測数も存在する。相手の格闘の「動き方の原理」まではトレースできないが、「その技」、「その動き」だけをコピーするならば。


「俺、二回見たら、覚えられるから」


 もちろんスキル関係とかは無理だ。当たり前である。だが、「鎌鼬」は剣術の極みのような術。ただ、超高速で、とんでもない剛力で切っただけ。それは、熟練された「動き」によって作り出されたものだ。だったら、俺にトレースできない道理はない。

 相変わらず、「トレース」。壊れ性能である。『悪役覇気』の何十倍も役に立つ能力だ。『悪役覇気』が役にたたなさすぎるだけのような気もするけれど。


「面白いじゃあないか」


 彼は、相も変わらず俺に微塵も焦りを感じさせない口調だ。だが、それを虚勢だと判断した俺は、「鎌鼬」の発動準備にかかった。「トレース」の数少ない弱点として、少数回の「観察」では、動きを完全にコピーして攻撃を行うしかないということが挙げられる。

 つまり、応用が効かない。彼が打ったように、十分溜めを作ってからでないと攻撃できないのだ。空間的状況把握能力が人外レベルで高い者とかならあるいは、という感じである。


「我流 鎌鼬 複写(トレース)


「鉄砲水」


 俺の「トレース」による「鎌鼬」は、マキナの斬撃によって相殺された。「鎌鼬」よりも威力はやや高い。「トレース」してなかったら、確実に致命傷級の攻撃である。

 「鎌鼬」級の斬撃パターンが残っていると考えるとかなり厄介だ。「鎌鼬」は鋭かったけど、今度の斬撃は重い。質量の塊みたいな攻撃。パターンが全く違う。

 だが、その分俺の攻撃パターンも増えていくということである。対処法は無い。相手が強ければ強いほど俺も強くなる、はずである。


(おろし)


 三つ目の斬撃が放たれる。特徴としては「鉄砲水」に近いが、体の使い方が全く違う。これでは、もちろん「トレース」出来ない。

 一度の観察で「トレース」することもできなくはないが、元祖よりも威力などが格段に劣る。少なくともマキナの前で使えるレベルにはならない。同じく、「鎌鼬」を動きに組み込むことなども出来ない訳ではないが、先述の通りかなり繊細なイメージとセンスが必要だ。少なくともこの状況では不可能。


旋風(せんぷう)


 驚くほど冷たい切れ味を持った斬撃が、つむじ風のように俺に向かってきた。思考モードになっていた脳を、戦闘にフルで集中させる。思考の余地すら無いほど、彼の攻撃は速く、強かった。

 だが、本当に恐るべきは攻撃の威力ではない。手数の多さである。攻撃パターンは途切れることを感じさせず、手を変え品を変え、着実に俺にダメージを与えている。

 さらに、腹立たしいのは、彼の余裕である。この威力の攻撃を複数個所持するレベルの剣士ならば、俺の「トレース」に対しても、もっとやりようがあるはずなのだ。それなのに、あくまで俺の得意分野で戦うことによって俺の心を完全に折ろうとしている。


「昇雷」


 マキナは、急に踏み込んできたかと思うと、真下(死角)から容赦ない一撃を叩き込んでくる。顎狙いであり、手刀用に調整された脳震盪を狙う攻撃なのではないかと思われる。反応が一瞬でも遅れていたら、意識は刈り取られていたであろう。

 彼の攻撃は止む気配を見せない。「鎌鼬」をトレースする余裕など何処にも無く、攻撃に回る隙すら感じられない。ただただ、今まで「トレース」した動きで避け続けることしかできなかった。


「氷瀑」


 彼は、「昇雷」の動きそのまま、空中に跳躍した。一瞬、「トレース」を使う好機かと思ったが、彼はその勢いを利用して攻撃を放った。それは、凍った滝のような重い攻撃。もちろん「鎌鼬」で受ける余裕もなく、ただひたすら回避する。

 通常の攻撃に加え、大技を何度も受けたことで、既に俺から余裕は消え去っている。生への執着を強く思い浮かべて心を強く保つことで「トレース」を強化し、なんとか身を守っていた。


「奥義 砂塵嵐」


 だが、それすらも長くは続かなかった。

 彼は、斬撃を()に放った。その影響で砂埃が舞い、爆風が轟く。風は砂と石を礫として容赦なくぶつけてくる。その威力は馬鹿にすることなどできない。それに、俺は防御力はただの男子高校生並みである。ダメージ自体は、普通に入ってしまうのだ。

 俺は、咄嗟に体と目を守るべく、防御姿勢をとった。その隙をついて、彼は俺を思い切り蹴飛ばした。何とか受身を取り、立ちあがろうとするが、眼前には彼の手刀が突きつけられている。


「負けだよ、君の」

次回から十二時投稿に戻そうと思います。

色々と時間が変則的になりましたが、見てくださった方、本当にありがとうございました。

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