概要
本日は二話投稿です。二話目は昼〜夕方くらいに投稿する予定です。
百万回やって一回成功したら、それはもう成功と呼んで差し支えない。最後まで粘って、努力して欲しいものが手に入れられるならば最高ではないか。
だが、成功までは果てしなく遠い。ゴールが見えないまま朝鮮を繰り返すのは、目隠しをされながら走っているようなものだ。それに耐えて完走した者だけが、勝者となれる。
結局、俺が何の話しているのかというと、スキルについてのことだ。今まで色々と検証してきたが、スキルの効能ははっきりとは解らず、何なら謎が増えているというイメージである。
スキルの解明という点でこれ以上有効な解決策は思いつかないし、現状どうしようもないことではあるのだが、正直悩んでしまう。自分のスキルについてよくわからないというのは自己を見失ってしまっているような感覚なのだ。なぜその感覚を知っているのか?もちろん秘密だ。想像にお任せしよう。
俺が一人で自己崩壊と戦っていると、ジンが神妙な顔で声をかけてきた。彼がこんな時間から家にいることは滅多にないので何だか変な印象を受ける。訓練も夜に行う事がほとんどなため、真面目に彼と昼間に会うことは珍しいのだ。
「航様。二人目の子供が攫われました」
何だか不穏な言葉が聞こえた。この状況はいわゆるピンチという状態なんじゃないだろうか。というか警戒しててもそんなどんどん攫われるもんなのか?相手がそれだけ強いということなのだろうか……
俺の表情を読み取って、ジンは俺を安心させるように口を開く。
「ご安心ください。今回誘拐されたのは故意です。今、子供が誘拐犯を内部から調査しています。私がいろいろと叩き込んでいますので、捕虜として敵陣にいようが必ず有益な情報を拾うはずですよ」
安心させる心配りはとてもありがたいのだが、なんだか心が読まれている気になってちょっと落ち着かない。単に観察眼が優れているだけなのだろうが……
「今判明している事だけ報告しておきますね。敵はやはり箱庭でした。マーディッシュ商会という組織です。主に人身売買や奴隷の取り扱いを行っている商会ですね。予想通ですね」
奴隷、か。この世界にはいるんだな。まあこんないかにもな場所にいないわけがないか。よく考えたら逆にいないほうが驚きだ。
ちなみに、箱庭は互いに不干渉条約みたいなものを結んでいて、基本的に自分の分野以外のことをすることはないんだとか。だから、もともとジンはマーディッシュ商会が黒で間違いないと思っていたんだという。
「ただ、少し気になることがありまして。治安管理は箱庭の一つ、傭兵組合の受け持ちなんです。微妙に分野を侵害しているような気がするんですよね」
「それに、マーディッシュには子供を誘拐できるほど腕の立つものはいなかったように記憶しているんです」
つまり、それだけ強いものがマーディッシュ商会の味方をしているということだろうか?しかもその勢力は下手をすると箱庭が負けるレベルで強い、と。
「そういうことで間違い無いと思われます。ですが、その相手が問題ですね。全くと言っていいほど心当たりがありません。探ってはみますが……」
俺の疑問にはっきりと答えを返したジンだったが、俺にはあまり声に覇気がないように感じられた。珍しく自信のなさそうな表情である。重宝してきた自分の部下が減っているのだから、当然と言えるのかもしれないが。
「私に心当たりがないほど無名な者で、子供達を攫えるほど強い。十中八九、外様でしょう。ですが……」
俺の存在を一時的に忘れているのだろうか。彼は深い思考の海へと潜っていった。この状態になった彼は外からの呼びかけにあまり反応を示すことがない。ただ考えていることを呟き続けるだけである。聞きたいことがまだまだあったが無駄だと諦めて、彼から離れる。
マーディッシュ商会、正体不明の強者の存在。不穏なことが多い。フェリスタークを取り巻く状況の片鱗が見えてきた今、彼に与する以上、俺は強くあらねばならないだろう。スキルの検証も、訓練も、自らを守るため、そして現在進行形で増え続けている恩を返すために。
読んでいただきありがとうございます。二話目も読んでいただけると幸いです。




