表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役覇道  作者: wistereal
四章 『皇国覇道』
PR
107/109

勝利を貪欲に求める馬鹿者こそが、後世に賢者と呼ばれる

「こんばんは、あるいは久しぶり。「情報屋」の諸君?」


 会議室に入ってきた俺たちを迎えたのは、朗々と、飄々とした笑みを浮かべるマキナと、そんなマキナが浮かべる憎らしい笑みであった。

 そんな彼の態度に少しの苛立ちと、それ以上に大きい安心感を感じてふと嬉しくなる。「裏町」の勢力図から何から変わってしまった今のこの状況で、「王」となったマキナは変わらず俺たちに接してくれている。その事実が、俺の頬を自然と綻ばせる。


 マキナが意図したであろう「裏町」の「傭兵組合」併合と、その他諸々の裏社会的組織の間に起こった勢力図の書き換え。確実に黒幕はマキナなのだが、そのことに対する怒りのような感情は俺には存在していない。

 そういうものだ、と割り切っているとかそういう理由もあるが、一番はやはり彼の人間性が大きいだろう。彼はいつも、自分だけでなく周りにもいい影響が及ぼされるように考えて動いている。

 その「周り」の基準は相当独善的といって然るべきものなのだが、それでも自分が何かを守るために行動する、という彼の理念には共感できる部分が多々あるのだ。


「たった十日間、十日間しか経っていないのに、この国の裏社会のあり方は大きく変化した。ならば、裏社会の頂点たる「箱庭」も進化を強いられるべきだ。今日の集いは、そのためだよ」


 マキナがそう言葉を発するが、そもそも「箱庭」の内6組織は既に「傭兵組合」に併合済みである。そんな状態で、まともな話し合いなどできるわけがないではないか。

 仮に俺とマキナの意見が対立した時に話し合いは必然的に7対1になるということである。かなり公平性にかけた時話し合いだ。そんなもの参加する意味がないではないか、俺なんかはそう思ってしまう。


 だが、そんなわかりきっている懸念事項、マキナがあらかじめツッコミを入れられないようになんとかしているに違いない……と、そう思っていたのだが、今この場、「定例会議」会場の雰囲気を見る限り、以前と特に変わっていることもない。


 彼がそんな迂闊な隙を残しているとは思えない。実に奇妙である。そういう前提で周りを見渡してみると、俺はもっと奇妙なことに思い当たった。それは何かというと、マキナが今ここにいるという事実である。

 基本的に「定例会議」は下の位階の組織から出席していくのが定例である。だからこそ、「一位」の「傭兵組合」の筆頭であるマキナが今ここにいるはずがないのだ。彼は、全組織の筆頭が揃ったら悠々自適に顔を出すのが役目なのだから。


「やれやれ、鈍ったかな、航君?ちょっと違和感を覚えるのが遅いんじゃないかい?」


 表情に出ていたのか、相変わらずのことだがマキナが俺の心を読んだように言葉を発する。もういい加減慣れてきたが、多分これに慣れるのもそれはそれで良くないんだろうな、とは思っている。あくまで思っているだけだが……


「しょうがないですよ。航様はそんなことより高次なことに思考を巡らせていらっしゃいますので」


 なんだか謎に俺のことをフォローしてくるジンであった。いや、ありがたいんだけども、それによってより情けなさが増すというかね?側から見たら俺がただ部下に庇ってもらっているだけの図というか……いや、部下じゃないんだけどさ……


「まぁとりあえず、座ってくれないかな、三人さん?」


 この場合のマキナが指す三人とは、当然だが俺、ジン、アリアのことである。「子供達」は純然たる執事的な立場なので、組織内で俺やアリアと同等以上の立ち位置に立っていたとしても、このような場で接待される側、椅子に座る側にはなり得ないのである。

 俺からしたらちょっと申し訳ないのであるが、まあそういうもんだと割り切るしかないのはわかりきっている。「裏町」は登れば登るほどしきたりが増えていく面倒臭い登山なのだ。俺がそこに感情を向ける方が損ってもんである。


 俺たちは、マキナの指示通りに円卓に着席する。俺たちは、マキナが既に座っているので、なんとなく空気を読んで円を四等分するような形で席についた。その方が収まりがいいので、本当に意味も何もなくなんとなくである。人生にはそういうゆとりが大切なのだ、とか言ってみるとしようか。


「いいね?では、改めて「情報屋」諸君」


 そこで一度息を吐ききったマキナは、もう一度大きな呼吸音を響かせてから言葉の続きを補完する。


「彼らが、僕の古くからの新しい部下にして、「円卓」の成れの果てだ」


 マキナの号令と共に現れたのは、六人の若い男女。しかし若いからと言って舐めれるような柔い雰囲気は纏っておらず、むしろ歴戦の猛者を思わせる立ち居振る舞いや体の使い方をしている人物が多い。一人など仮面をつけて素顔すらわからないがその仮面越しでもはっきりとわかる覇気を携えている。

 一眼見ただけで熟練した武人だと誰にもわかるその身のこなしは、まさに「戦士」と呼ぶに相応しい。マキナの部下だというのも頷ける話で、一人一人が少なくとも例の「五角頂」三人分ほどに相当するのではないだろうか、と思われるほどである。俺は戦ってないのでよくわからないのだがな。


 というか、「古くからの新しい部下」とは?マキナはたまに、というか頻繁によくわからないワードセンスを発揮するので、今回もそれだと聞き流しておけばいいのだろうが、やっぱり流石に違和感がすごい。


 と、バカなことを考えていた俺とは裏腹に、ジンは何かに気づいた様子であった。


「航様、彼ら……見覚えがありませんか?」


 見覚えって、今あったばかりだというのにそんなのあるわけがないだろう。「裏町」は裏社会的団体の中では最大の規模を誇るのだ。そんなホイホイと顔を知っている人物に出会うわけが……


「いや、知ってる。知ってるぞ!」


 途中でシナプスがつながったのか、うっすらとその六人の顔が浮かんでくる。過去どこかであったような気がするのだ。しかも、バラバラではなく六人同時に。そんな機会あっただろうか?


「「定例会議」、ですか」


 ジンが漏らした言葉で完全に記憶が繋がる。彼ら六人は、今この場にいない六組織それぞれの一員として「定例会議」に出席していた人物であった。


「『青龍會』の副會長、『ディクルズ商会』の商会長補佐代理、『協会』の仮面の従者、『春夏秋冬』の第三編集長、『パリティアス教』に至っては教祖ですか。なんとも豪華な面々だ」


 ジンがその言葉に込めた皮肉の意味がマキナには確実に伝わっていただろう。しかし、マキナはニヤリと笑うだけでそのセリフへの返答を止める。御名答、とでも言いたげなその表情は、楽しいという感情に満ち溢れているように見えた。


「ここまで見たらわかると思うけれど、彼らは最近正式に僕の配下に復帰した従順な部下たち、そして何よりも「継」だ。一人一人が君たちほどとは言わないけれど、この世界の「強者」を屠れるほどの実力を持っているよ」


 つまり、彼には最初からこの「裏町」を動かす全てが見えてたってわけか。自分が作り出した組織を常に手中に収めておくために、自分の手のひらを広げることを少しも厭わなかった男。それがマキナという人間だということなのだろうな。

 少し馬鹿馬鹿しくもなるが、それ以上に込み上げてくるのは純然たる称賛である。勝つためなら何もかも厭わないというその態度が、素直に俺の心の琴線に触れたというわけだ。勝利を貪欲に求める馬鹿者こそが、後世に賢者と呼ばれる。その典型例を、俺は今ここに見た気がした。


「安心してくれ。今までの「箱庭」のトップも殺っちゃいないよ。彼らの手によって、少し今は静かに鉄に繋がれてもらっているけどね」


「彼らは僕の「秘書隊」と対をなす「特命近衛騎士」。彼らがいれば、僕たちに敗北の二文字はない」


ーーーー


 翌朝、「アノルフィア皇国」は、「ヘル=ドメイン大連邦」に対し、正式に宣戦布告を行うこととなる。

 すなわち、戦乱の幕開けである。

 こんばんは。無能な作者wisterealです。この三連休のんびりと過ごそうと心に決めて予約投稿をしてなろうの方を一切見ていなかったのですが、無事に予約投稿できていなかったことが判明いたしました。

 というわけで、今現在三日分が溜まっております。この作品は、その中からキリの良いところ、だいたい一日半分を切り出しております。明日も同様に通常より多めに投稿しますので、どうかそれで許していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ