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Last Stage 遥か未来へ! 《Vision》を越えて!!

いつもご覧いただきありがとうございます!

本話をもちまして、本作品は完結となります。



 季節は、春。

 花咲き誇るこの国では、各地で新生活を迎える人が増えていることだろう。


 かく言う私も、そのひとり。


「そうだ」


 空港のエントランスで隣を歩いていた朱里さんが、不意に立ち止まって鞄から小さな包みを取り出した。


 少しの可愛さと大人の女性のお洒落さが詰まった、素敵なラッピング。


 中を開けると、有名時計メーカーの女性ものの腕時計だった。


「引っ越しの準備でバタバタしていたでしょう? 遅くなったけれど、就職祝を兼ねた誕生日プレゼントよ」


 微笑みながらウィンクする朱里さん。

 腕時計は、ベルトと文字盤が淡いコーラルピンクで、時刻のところには大きさの違うダイヤが嵌め込まれていた。


 シンプルでいて、高級感のある贈り物だった。


「ありがとうございます! 大事な宝物にします!」

「大事にはして欲しいけど、ちゃんと使いなさいよ。あっちは流行の最先端なんだから」


 私の性格を知り尽くしている朱里さんは、クスクス笑った。

 せっかくなので、貰った腕時計を左腕に付ける。


「向こうに着くのは、明日の夕方ですって?」

「はい。時差があると思うので、着いたらメッセージだけ送りますね」


 こちらと向こうの時差は約七時間。

 夕方に向こうに着いても、こちらは既に深夜になっているはずだ。


「あっちに着いたら、ジュリエットや先方の皆さんによろしくね」

「はい」


 ちょうどその時、抱えるトレンチコートのポケットに入れたスマホが鳴った。

 取り出してみると、メッセージの通知だとわかる。


「お友達?」

「はい。雪子からでした」


 通知を開いたアプリの画面には、雪子からの〝頑張って〞のメッセージと犬のスタンプが表示された。


 確か、今の時間帯はちょうど大学の入学式だって言っていたっけ。


「早川からも『気を付けて行ってきてくださいね』ですって」

「はい。朝、ちょっとだけ電話した時にもそう言ってくれました」


 早朝に貰った捺花さんからの電話では、これからメンバーを迎えに行くと言っていた。

 相変わらず抱える仕事が大変そうだった。


「今日はあの子達、生放送に五本出る予定なのよね」


 同局で二本。別局で三本。

 《Vision》メンバーの今日のスケジュールは、引っ切り無しでTV営業らしい。


「売れっ子ですから。仕方ないですよ」


 つい先日新しいシングルを発表して、営業の仕事が盛りだくさんのはずなのだ。


 特に、大学の学業と両立して芸能活動をするという緋織と青史郎は、忙しさに拍車がかかっていることだろう。


 早速、朱里さんから貰った腕時計に目をやる。


「……もう行かないと」


 私が腕時計に目をやっていると、不意に朱里さんに抱き締められた。


 滅多にない朱里さんからの抱擁に私はむず痒くなったけれど、その気持ちは遠慮なく受けとることにして、その背中に手を回す。


「それじゃあ、行ってらっしゃい。フランスでも達者でね」

「はい。行ってきます! 朱里さんもお元気で」


 私は朱里さんと別れて、一人フライトゲートへ向かった。

 

 道中、国際空港の時刻パネルを確認した後に不意に視界に映り込んだのは、待合所に設置された特大型テレビ。

 その画面は主婦向けの情報番組が放送されていた。


 司会と思われる女子アナが、にこやかに告げる。


『今日はあの有名グループにお越しいただいています! それでは、《Vision》の皆さん、お願いします!』


 その名前を聞いて、ぴたりと足が止まった。


「……」


 目を向けた画面越しに、彼らが映る。


『どうも、こんにちは! 〝君の心にVision(僕たち)を伝える〞《Vision》です!!』


『今回披露してくださる新曲は、《Vision》の皆さんが六人グループとして再出発をされた後に発表されたものですが、新生活が始まるこの季節、新しい環境に身をおかれる皆さんにぴったりな歌詞だと伺っています。


 皆さんが歌う際に、何か意識されていることはありますか?』


『そうですね。初めて歌詞をいただいたときに感じたワクワクや、新しいことに挑戦するドキドキが少しでも皆さんに伝わるよう、意識しています』


『ありがとうございます。それでは早速お聞きください。《Vision》の皆さんで〝夢へ向かう君へ〞――』


 私はフライトの時刻を思い出し、再び歩き始めた。

 あの後は観なくても――否、聞かなくてもわかる。


 彼らの新曲を口ずさみながら、私は飛行機の搭乗口へ向かった。




 絶対に、私は《Vision(彼ら)》を越えて帰ってくる。


 それは、彼らと一緒にいた時の自分――〝紫苑〞に誓ったこと。

 そして戻ってきた時、彼らに胸を張ってこれが〝私〞だと言えるように。


(だからそれまで……)


 これは〝私〞が〝私らしさ〞を見つけるまでの物語。

 どうか、あなたの進む道の先に〝あなたらしさ〞がありますように――




ー『《Vision》を越えて!』完ー


脱☆エタ強化月間にお付き合いくださいまして、ありがとうございました!

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