第4章 第19話 舞台作りと私
蝙蝠男とアンが戦う舞台作りは街に近過ぎると作業現場を見られる危険があるので少し離れた山の中で行われる事になった
その場所に1から舞台を作るのは苦労しそうだなと思っていたのだか・・
「姉さん!こいつはどこに持っていけば!」
「それは、向こうの木の箱のところに持っていっておいて!」
「へい!」
私の指示に従い、テキパキ動き回る男達の手によって山の中に蝙蝠男とアンが戦う舞台が着々と作られていく
「しかし牢屋にいた山賊を馬車馬のように働せるとは・・嬢ちゃん本当に癒し手なのかよ?」
「山賊たって同じ人、誠心誠意頼めば分かってくれるものよ」
「嬢ちゃんの世界じゃ誠心誠意頼む時は穴を掘るものなのか?」
「・・まぁ、そんなところよ」
手に持っているスコップで穴を掘ると青い顔した山賊達の作業スピードがアップする
「おーいミコ!ボロロ!」
「ん?どうしたのピピ」
「舞台に取り付ける魔道具、用意出来ダゾ」
「おっ!もう出来たの!さすがピピね!」
私とおっちゃんでピピの作った魔道具を確認していく
「ふむ、これなら問題ねぇな、後は俺が仕掛けを完成させた舞台にこの魔道具を取り付ければ良いだけだな」
「ありがとうとねピピ」
「分かったゾ!ならピピ、エレサ達の手伝いしてくるゾ」
そう言うとピピは舞台での司会進行の流れで魔玉を使って空中にどの文字を浮かばせるのかを話し合っているエレサとレティカの元へ飛んていく
「しかし、あの翼人の嬢ちゃん、魔道具を作れるなんで凄えな」
「まぁ、ピピはああ見えて凄腕の魔術師だからね」
「バカ言うな、魔術師ってだけで魔道具を簡単に作れるかよ、これはあの翼人の嬢ちゃん個人の才能だな」
確かにピピの場合、計算とかじゃなくで感覚で魔道具を作ってる感じよね
「これだけの魔道具を作り出せる翼人とはな、まるで翼国女王のようだぜ」
「翼国女王?」
「前に翼国が多くの魔道具を開発していたって話をしただろ」
「ああ、水を大量に持ち運べる魔道具や肉を長期間保存可能にする魔道具よね」
めっちゃ便利な魔道具よね
「その魔道具はな、翼国女王一人でその仕組みを考え開発してたんだよ」
「女王一人で!そりゃまた凄いわね」
「そうだ、まったく亜人は魔術が苦手のはずなのに翼国女王は恐ろしい才能を持っていたぜ、ワシらドワーフでも考えなかった魔道具を次から次に開発するんだからな」
昔を思い出すようにしみじみと語るドワーフのおっちゃん
「あの内戦さえなけりゃな・・」
そういえば、翼国って便利な魔道具で得た利益をめくって内戦が起こって滅んだのよね
「翼国女王は内戦で亡くなったの?」
「ああ、何よりも民の生活を良くしようとしていた心の優しい女王だったのによ・・」
善人ほど早死にするってやつが・・
「内戦が始まる前には娘が産まれたって喜んでいたのによ、その娘も病気で死んじまってよ・・」
「それは、キツイわね」
「・・しかし、あの顔立ちにはどことなく翼国女王の面影が・・いや、まさかな・・」
ピピの顔をしばらく見ていたおっちゃんは自分の考えを否定するように首を横に振る
「皆さん、ご苦労さまです!差し入れをお持ちしましたよ!」
あっ、竜王も来たんだ
「なんだコイツは?」
「あっ、私は竜王・・」
「なんだ竜王のバシリが」
「確かにバシリっぽい顔してるもんな!」
「いや、その私は・・」
「あんたも竜王のバシリなんで大変だろうけど、人生生きてるだけでめっけもんなんだ、そう気を落とさずに頑張れや!」バシバシ!!
「は、はぁ・・」
あんたが背中をバシバシと叩いている人が竜王本人なんだけどね
「しかし竜王様から差し入れが届くなんで、俺達が作っているものってそんなに凄え物なのか・・?」
「バカヤロー!下手な詮索すれば埋める、ここの事を口外したら埋める!何も考えずただ作業しろって姐さんに言われたのを忘れたのか!」
「そうだった!考えるな!考えずに作業しねぇと・・」
「イヤだーっ!!生き埋めはもうイヤだーーっ!!」
「また神に祈りを捧げる日々に戻るために早くこの苦行を完了させるぞ!」
怯えた様子で急いで作業に戻る山賊達をしり目に私とおっちゃんも竜王の元へ
「竜王自ら差し入れ持ってきたの?」
「はい、他の竜達に任せるわけにはいきませんからね、それに人化していれば誰も私が竜王とは思わないでしょうから」
人化した見た目は疲れた中間管理職だからね、山賊達にも竜王のバシリ認定されていたし、これが竜王とは思わないのだろう
「それで、仕掛けの方は完成出来そうなんですか?」
「嬢ちゃんのおかげで人手も十分だからな、これなら思っていたよりも早く完成出来そうだ」
「本当ですか!」
「そっちの方は大丈夫なの?竜達がここに来たりしないでしょうね」
仕掛けを作ってる途中を竜に見られるわけにはいかないからね
「竜達にはここでアンが戦いの準備しているから絶対に近づかないように伝えていますので、竜達がここに来る事はありませんのでご安心下さい」
なら作業中に邪魔が入る事はないって事ね・・あっ!けどここって竜の墓場がある山に近いわよね
「ねえ、この辺りってゾンビって出たりはしないの?」
竜の墓場に現れた亜人ゾンビが作業中に襲って来られでもしたら厄介なのよね
「ゾンビ?なんですかそれは?」
やっぱり竜王もゾンビを知らないみたいね・・
「バーンも知らなかったし、やっぱりこの世界にはゾンビは存在しない・・?」
なら、あの亜人ゾンビはいったいなんだったの?
「バーン?・・クリイスモアの息子のバーンの事ですか?」
「竜王、バーンの事知ってるの?」
「それはもちろんですよ、英雄竜クリイスモアには私も何度も命を救ってもらいましたからね・・ですか、魔物の大群からこの竜国を救うためにクリイスモアはその命を・・」
「俺達ドワーフの間でも英雄竜クリイスモアは有名だったからな、それが亡くなったって言うのは衝撃だったぜ」
ドワーフのおっちゃんも知ってるほどバーンの父親は有名だったのね
「ですからクリイスモアの息子であるバーンの事は私も気に掛けていたのですか、バーンと癒し手様になんの繋がりが?」
ふ~む、ここは正直に話しておくかな、今の竜王の話を聞く限り、バーンに厳しい罰を与えるとも思えないし
「実はね・・・・・・」
竜王に詳しい事情を説明する
「そうですか、竜王の秘宝はバーンが盗ろうとしてそれを追いかけたシャイニングマンさんが共に岩穴に・・」
私から話を聞いて悲痛な表情を浮かべる竜王
「バーンはなぜそのような愚かな事を・・」
「分からない・・けど、誰かに持って来るように頼まれたって言っていたわね」
「ではバーンはその者に利用されていると!」
「たぶんね」
「幼い子供を利用するなど・・その者は必ず見つけ出して厳しい処罰を与えないといけませんね」
バーンを利用されているのか許せないのだろう竜王は人化しているのを忘れ、低い声でうねり声を上げている
「何、言ってんのよ竜王」
「癒し手様は捕らえる事を反対されるのですか!?」
「そりゃそうよ・・子供を利用しようなんで奴、見つけ次第ぶっ殺すに決まっているでしょ」
自分がしでかした事を出来るだけ後悔させて殺してあげないとね・・ふふふ
「お、おい嬢ちゃん?お、落ち着いてくれや、嬢ちゃんの顔を見ちまった山賊達がブルブル震え上がっちまって、作業が止まっちまっているからよ」
あっ、本当だ山賊の頭領だった男が頭を抱えてうずくまっているわね
「しかし、その者はなぜバーンを利用してまで竜王の秘宝を手に入れようとしたのでしょうか?」
「そんなの竜王の秘宝の力を利用するためでしょ」
「利用ってあの水晶玉にそのような力があるのですかね?」
「はぁ?」
あっけからんと答える竜王に思わず啞然となる私
「あんた謁見の時に竜王の秘宝は破滅への道しるべとかなんとか言っていたじゃないの!」
「あっ!・・いや、それは・・その・・」
「いったいどういう事なのよ!」
「あれは、癒しの神てあるユグドラから守るように言われていたもので・・その・・」
「そのユグドラが守るように言われたあの水晶玉にどんな恐ろしい効果があるわけ?」
「・・私にもわからないんです・・」
「はあ?」
今この竜王分からないって言わなかった?
「分からないってどういう事よ?」
「あの水晶玉はユグドラ様から譲り受けたモノであると初代竜王様から言われているのですが・・その・・使い方などは伝えられていないんですよ」
「ならなんで、あの時持ち出したら破滅するとか言っていたのよ?」
「そんなの当たり前じゃないですか!竜王の秘宝って呼ばれているのに竜王本人が使い方も分からないなんでバレたらどうなると思うんですか!!」
「どうなるって・・どうなるのよ?」
「そんなの決まっているでしょう!きっと『竜王本人が使えない竜王の秘宝(笑)』とか言われて皆に笑われる事に!そうなったらせっかく喋り方を変えてまで上げた私の竜王としての威厳が破滅してしまいますよ!!」
「破滅ってあんたの破滅の事が!!」
なんつう紛らわしい言い回しをするのよ!この竜王は!!
「そんな訳で民には竜王の秘宝の事は秘密にしています、今では民の間で竜王の秘宝は存在しないものと噂されていますよ」
バーンや町の皆が竜王の秘宝は作り話だって言っていたのはそういうわけだったのね
「なら竜王の秘宝に危険はないのね?」
「・・たぶん危険はないかと・・どんな効果があるのか何度も検証をしたのですが、どうやって発動させるのかも分からずじまいでしたので・・」
竜王は危険がないとはっきり断言は出来ないようで言いよどんでいた
「まぁ、シャイニングマンがいっしょなら問題ないと思うけど・・」
まったく!何やってんのよシャイニングマンは!さっさとバーンと竜王の秘宝を連れて戻って来なさいよね!




