表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~イストワール~  作者: 中村貴之
4/5

異文化交流~食事編~

 数分後・・・。

「いや~、それにしてもなぁ・・・」

台所からジークのニヤニヤとした、愉快気な声が聞こえてくる。

「まさか、あれが東の方では礼式の一種とはねぇ。世界は不思議でいっぱいだわな。俺はてっきりミアがノエルちゃんを折檻してるのかと思ったわ~」

「・・・」

「・・・・・・」」

その後、室内の気まずげな空気は、ジークの入室に気づき顔を上げた彼女が、そのポーズはなんなのかというジークの問いに答えることによってあっさりと払拭された。

信じられない話だが、なんと彼女がしたこちらでいうところの奴隷のようなポーズは、東の方では恭儉の意を示したり、謝罪や請願の時などに行う礼式の一種らしい。

「まぁ、こっちの文化を知らなかったんじゃしょうがないって。まぁ、あれだ。ちょっとした異文化交流だったんだよ、なぁ」

「・・・いい勉強になった」

そう答えるのが、今の私の精一杯だった。

「っし、出来たぞ!じゃ、今度はノエルちゃんに俺らの文化を知って貰おう」

ジークはそう言うと、台所から様々な料理をもってきた。

「!・・・」

テーブルの上に並べられた料理の数々に、彼女は微かではあったが初めて年相応の笑顔を見せた。

「今日来たばっかじゃ、食堂は緊張するだろ?なんで、本日はノエルちゃんのために、不肖このジークが腕を振るわせていただきました」

ジークは従者のように、冗談めかしたポーズで一礼した。

そう、ジークは学院に来たばかりの彼女に気を使って、食材を手に部屋にやってきた。

私はそこまで気が回らなかった。

普段ちゃらんぽらんなくせに、大事な時にこういう気遣いができるジークには素直に頭が下がる。

「右から、エスカルゴの香草バター焼き・馬鈴薯のポタージュがけ、タルト・フランベ(フレッシュチーズと季節の野菜と茸のピザ)、シュークルート・ガルニ(ソーセージとスペアリブ・発酵キャベツ添え)、パンは食堂から色々貰ってきたから好きなの選んでくれ」

ジークが用意したのは、この地域の伝統料理の数々だった。

悔しいが、相変わらずどれもおいしそうだ。

しかし、彼女は初めこそ笑顔だったが、困惑した様子で一向に食事に手を付けない。

どうしたんだ?

「ノエルちゃん、どうした?遠慮しないで食べてくれ」

「・・・・・」

「ひょっとして苦手なものでもあったか?なら、食べられるものだけでもいいんだぞ?」

私なんかは、味はともかくとして、エスカルゴは見た目のせいでどうも苦手だ。

しかし彼女の問題は、私が想像したものよりももっと根本的なものだった。

「・・・・ない」

なに?

私はジークに視線を送った。

彼女は一体何を言っているんだ?

ナイフもフォークも目の前にあるぞ?

「あ!悪い、忘れてた」

しかし、そんなノエルの言葉にジークはすぐさま何かを理解したのか、台所に行き何かを持ってきた。

二本の木の棒?

「ノエルちゃんはこっちだった。ほいよ」

そして、ジークはその木の棒を彼女に差し出した。

それを見た彼女の顔が微かだが安堵のものに変わった。

「・・・・(コク)」

彼女はジークから木の棒を受け取ると、なんとそれを使って器用に料理を口に運んだ。

「!」

彼女は控えめな、しかし満面の笑顔でジークの手料理に舌鼓を打った。

「美味いかっ!そいつは良かった、遠慮しないでどんどん食べてくれ。ほら、ミアも」

「あ、あぁ、そうだな」

私も彼女に倣い、ジークの料理に口をつけた。

ジークの料理は、相変わらず悔しいほどにおいしい。

しかし、今はそんな感想より彼女の、もっと言うと彼女の使うあの木の棒ついてだ。

あの木の棒はなんだ?

「(<ヤマト>にはナイフもフォークもないんだってよ。全部あの<ハシ>っていう食器で飯を食うんだってさ)」

私の視線に気づいてか、ジークがこっそり教えてくれた。

「(あぁ、それでか)」

私はその言葉に納得した。

確かに、初めてナイフとフォークを見たのなら戸惑うだろう。

仮に、私もあの<ハシ>で食事しろと言われたなら、やはり先程の彼女以上に困惑したであろうから、彼女のあの戸惑いは当然のものだ。

「(しかし、<ハシ>なんてどこにあったんだ?私の部屋にはなかっただろう?)」

「(食堂で借りた。なんかウチの料理長ソッチ方面のマニアだったらしくてな。わざわざ教えてくれて、気前よく自前の<ハシ>を貸してくれたんだ)」

「(ほぅ。そうか、それは運が良かったな。私も後でお礼を言っておく)」

しかし・・・。

私は改めて、彼女の手にした<ハシ>なるものを見た。

『あれが食器とはな』

普段食べなれた料理はずの料理も、彼女の<ハシ>捌きによって全く違った料理に見えるから不思議なものだ。

『今日は、本当に驚きの連続だな』


この時、私はまだ知らなかった。

この後に、それ以上の驚きがあることを・・・。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ