↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目が覚めるとそこは…異世界だった!Ⅲ サクリファスの亡霊  作者: 鷹茄子おうぎ
第1章 謎と事実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/15

アルクニクス商会

「カレンが書いた報告書、読ませてもらったわ…」

「そうですか」

ここはリアルナさんの部屋だ。


「大活躍だったそうじゃない…私としても、すごく嬉しいわ…」

「ありがとうございます」

耳元で、熱い吐息まじりの言葉を紡いでいるのはもちろんリアルナさんである。


「でも…この事件にはぁ、謎があるわね…」

「そうですね」

リアルナさんに後ろから組み付かれている俺は、努めて冷静に言葉を返した。どうでもいいけど、そろそろ放してほしい。


「これって暴行とかになるんじゃないですか?」

その組み付き方はさすがは魔法戦士、簡単には振りほどけそうにない。


「あなたの方が…んふぅ、私よりも強いからぁ…むしろ正当防衛ね」

いやいや、正当防衛になんか絶対にならないだろ…それとこんな所で変な声を出すんじゃねえよ、この変態女。フェリシアさんにもアレなところはあったけど、やはり本物は段違いだな。俺は内心でため息をついた。


それはライラリッジに戻り、ようやく落ち着いてきたある日の朝食後のことだった。リアルナさんに「あの事件について話したいことがあるから…後で部屋に来てね」と言われて行ってみたら、部屋に通され、その直後に後ろから組み付かれてしまったのだ。


ユリーシャ邸には危険なんかないだろう…と思っていたらこれである。油断大敵ですな。


もっともリアルナさんの気持ちも分からなくはない。最後にリアルナさんとあんなことやこんなことをしたのは、確かアインラスクへ出発する前日だったはずだ。間違いなく溜まっているのだろう。旦那さん、もっと頑張ってください!


「それで…謎って何ですか?」

謎があるなんて言われると、誰もが知りたくなるものだ。


「私…もう、おかしくなりそうなの…ちゃんと、話せそうにないわ…」

こんな朝っぱらから夜の営みをするのはどうかと思うが、リアルナさんのような女性に後ろから抱き付かれ、その柔らかな体をこれ以上ない程に押し付けられるとさすがにね…それは理性でどうにかできることではない。


「たっぷりご褒美をやるから放せよ、雌イヌ」

「あはぁ…分かり、ました…」

ようやく解放してくれたリアルナさんを引き摺るように寝室へ連れ込むと、あとはいつも通りだ。時間が時間だけに気が引けるんだけど、事ここに至っては仕方がない。やることはちゃんとやってしまおう。


いつも以上に性獣だったリアルナさんには、いつも通りという訳にはいかなかったが、それでも必ず終わりはやってくる。今日も間違いなく満足してもらえたはずだ。俺はシャワーを借りて汗を流し、黒雷を着て寝室に戻った。リアルナさんはまだベッドの上だ。


「いつまでも寝てないで起きてくださいよ…」

俺はベッドの上で余韻を楽しむリアルナさんに、呆れたように声を掛けた。


「あなたに叩かれたお尻が痛いわ…」

確かに叩いたけどね。


「リアルナさんが叩いて!って言ったんですよ…」

そこはきっちりと指摘しておかなければならない。こんな変態と一緒にされるのは御免だ。


「でも、そういうことも時には必要になると思わない?」

「そうかもしれませんね。リビングで待ってますから」

否定はしないが、朝っぱらからこれ以上こんな話をしたくない。リアルナさんはまだ何か言っているようだが、気にしないでおこう。


待つこと数分、リアルナさんが寝室から出てきた。まるでカレンのようにピシッと軍服ワンピースを着こなしている。あの変態女と同一人物とは思えない。


どう見てもシャワーを浴びてきたように見えるのは、寝室から浴室へ直接行くことができるようになっているからだ。変わった作りのようにも感じるが、プライバシーに配慮した作りなのかもしれない。リアルナさんにとってはうってつけの仕様だな…俺の部屋は普通の間取りだけど。


「それで…謎って何ですか?」

俺は改めてリアルナさんにそのことを聞いてみた。


「あの女とアルクニクス商会の関係よ」

アルクニクス商会か…確か今回の事件であの女がサリエラに紹介した商会だったな。


「それがどうかしたんですか?」

「アルクニクス商会は世界最大の商会よ。そんな商会がエステルマギの埋蔵金なんて話を信じて、協力するのかしら?」

確かにエステルマギの埋蔵金の話は都市伝説の類だったのかもしれない。でも、考え方は人それぞれだ。


「リスクを取るべき話だと思ったのかもしれませんよ」

そういう可能性もあるはずだ。


「あの女はお守りの持ち主を全員知っていたのだから、商会が埋蔵金の伝説に真実味を感じたのかもしれないわね。でも、それは結果よ。商会の人間なら、あの女がサリエラと組んで騙そうとしていると考えても不思議じゃないわ」

リアルナさんの言わんとしていることは、よく分かる。


「そもそもリスクを取ると言っても、そこに犯罪行為が含まれるのはどうなのかしら?」

それもそうだ。随分と危ない橋を渡っているように見えるね。


「あの女とアルクニクス商会は、どんな関係なんだ?」

「はっきりしたことは分かっていないけど、事実を積み重ねていくとそこに疑惑の関係があることが分かるわ」

そうしてリアルナさんがアルクニクス商会の歴史を簡単に説明してくれた。


アルクニクス商会が商売を始めたのは今から665年前。それは奇しくもレガルディアが大陸への進出を開始した年だ。この頃のアルクニクス商会は、小さいながらもしっかりと地に足をつけた商売をしていた。キラリと光るものはあったが、後に世界一の商会になる片鱗などなかったという認識でいいだろう。


「そんなアルクニクス商会が世界最大の商会へと動き出したのがレガルディア暦1749年のことよ」

「大災厄があった年か…」

ここにも奇妙な因縁を感じるね。


「そうね。この年からアルクニクス商会は多くの商会を買収していき、急激にその勢力を広げていくことになるの。平時なら疑いを持たれたかもしれないけど、当時はそれどころじゃない大変な状況だったから…誰からも何も言われなかったみたいね」

みんな生きることに必死だったからな…仕方がないさ。


「ようやく世界が大災厄以前の安定を取り戻した頃、アルクニクス商会はすでに世界最大の商会の立場を確固たるものにしていたわ。当時のレガルディアはそのことを訝しく思っていたものの、詳しく調べることはしなかったの」

商会は時機を見て行動したって訳だ。


「暗黒の時代に終止符を打ったばかりだからな…」

不愉快な話だが、これは仕方がない。


「上手くやられた感はあるけど、世界最大の商会の持つ販売網はレガルディアにとっても無視できないものだったのよ。対立するよりは協調を…それがレガルディアの考え方ね。アルクニクス商会もレガルディアにはかなり気を使っているから、両者の間でトラブルになることはほとんどないわ」

むしろ今回のような件は珍しいということか…。


「それで…謎っていうのは?」

大雑把ではあるが、アルクニクス商会のことは理解できたと思う。それは知っておくべきことだろう。だが、それは俺が知りたいことではない。


「あなた達が発見した遺跡が、エステルマギの埋蔵金の隠し場所だったことは間違いないわ。そこにはほとんど何も残されていなかったけど、何もなかった訳ではないのよ。数十枚の金貨や銀貨が見つかったの…いずれも鋳造されたのは300年程前よ」

これはユリーシャの見立てと一致する。目新しい事実ではないが、その確認が取れたことには意義があるな。


「遺跡には相当長い間、人が立ち入った痕跡はなかったそうよ」

「アルクニクス商会が急激に勢力を拡大したのは今から252年前だ。おそらく最後に立ち入ったのはその時だろうな…」

「埋蔵金が買収の原資に使われた可能性は高いわね」

いくつかの点が繋がり、線になっていく感覚がある。


「そうなると…アルクニクス商会の実質的なトップはあの女ということになる」

「そこまで分かれば、そこにある謎も分かるんじゃないかしら?」

その先は言われるまでもない。確かにこの見立ては正しいように思える。


だが、大きな問題を抱えている。それがどうやって埋蔵金を運び出したのか?ということだ。


「当時の状況を考えると、あの女が何かやっていたとしても軍は気付かなかっただろう…それでも、だ。5兆リガなんて大金を誰にも気付かれることなく運び出すのは、かなり難しいぞ」

分かりやすく言うと、5兆円を運び出すようなもんだ。


「置換の魔法を使うにしても限度があるものね…」

また一つ、謎が増えた。本当に厄介なヤツだぜ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。