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目が覚めるとそこは…異世界だった!Ⅲ サクリファスの亡霊  作者: 鷹茄子おうぎ
第1章 謎と事実

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ダンシングワンズ

身も蓋もない言い方になるが、謎多きあの女のことは考えるだけ無駄だろう。だからと言って、諦める訳ではない。なぜかは分からないが、あの女は動いたのだ。これからも動く可能性は十分にあるはず…だったらそこで何とかすればいい。


他力本願なやり方ではあるが、どこにいるかも知れないヤツなんだから、それは仕方がないだろう。


今はできることをやっていくしかない。その一つが新たな魔法具の開発だ。アイデアはある。それは複数の攻撃端末を同時に操作し、敵を包囲して攻撃する…というもの。元の世界の某ロボットアニメに出てきたアレですよ、アレ。


あの事件で俺はサリエラと戦った。その戦いは読み合いや駆け引きの応酬だった。それを不得手としている訳ではない。リアルでの戦いの経験こそ皆無だが、格闘ゲームの経験は豊富だからだ。差し合いでは負けないぜ。


それでもたった1人を相手に時間をかけるというのが得策なのか?と言われると、決してそうではないだろう。だが、アレが実現できれば、使い方によっては手数で圧倒してケリを付けることができるはずだ。


あの事件で、俺達は数的不利だったにも拘らず急襲するという策をとった。それはアリューシャを囮として使っていたこと、サリエラの部下の実力がある程度分かっていたことによる。だが、いつもそんなに上手いこといくかどうかは分からない。


サリエラクラスのヤツを相手にしながら、別のヤツを攻撃する。そんな状況に追い込まれる可能性も、想定しておく必要はある。そして、アレができれば間違いなく対応できるはずだ。どうなんですか?ユリーシャさん。


「空駆ける俺の得物という魔法がありますから…それを応用することでできると思います」

空駆ける武器では駄目だったのだろうか…と思うのだが、そこは気にしない方がいいだろう。


「その魔法では術者が武器を操るのですが、ショウの場合は魔剣が制御するようにした方がよさそうですね」

「そうだな…そうしてくれ」

さすがはユリーシャ、よく分かっているね。


「それで…どうしますか?」

「何を?」

「この魔法具の名前です」

そういえば、ユリーシャは魔法具の名付けに拘っていたな。センスは微妙だが…。


「攻撃端末はどんなものになるんだ?」

「今のところ錫杖にするつもりです」

錫杖か…。


「それなら、ダンシングワンズでどうだ?」

ユリーシャの反応が…ない。これはボツかもしれんね。


「…コいい」

「えっ?」

何だって?


「カッコいいですね!ダンシングワンズ…最高です!」

そ、そうか…気に入ってくれて良かったよ。


どうやらその名に惚れ込んでしまったようで、この日のユリーシャはずっと上機嫌だった。そして、湧き上がる意欲の勢いそのままに、あっという間にダンシングワンズを完成させてくれた。


まさか頼んだその日のうちにできるとは思わなかったぜ…でも、早いことは良いことだ。どんな仕上がりなのか、早速試してみよう。これまでとの変更点としては、ロングコートの背中の部分に、お洒落なアナログ時計の文字盤のような模様が入ったことだ。


「そこに12本のダンシングワンズが収納されています。射出して光の矢で攻撃する時は、3本のワンズを1セットにしたものが基礎になります」

「同時に4人を攻撃できるってことか…」

これは思っていた通りの出来だ。


「あまり分散すると撃力が落ちてしまいますので…それくらいが丁度いいかと」

「そうだな…」

基本的な説明を聞いたところで、実際に使ってみようか。


気になっていたのは射出の際の衝撃だが、これはほとんど感じない。これなら戦闘中に気が散るということもないだろう。ユリーシャの言っていた通り、3本のワンズを最大で4方向に射出できる。場合によっては12本のワンズを1方向に一斉に射出する、ということもできるようだ。


面白いのは3本の射出の場合はワンズから光の矢が同時に発射されるのに、一斉に射出した場合はそれが時間差で順番に発射されることだ。相手からすれば、攻撃される時間が長くて避けにくいだろう。さすがはユリーシャ、よく考えて作ってくれているぜ。


そして、このダンシングワンズで最も気に入った機能が一斉射撃だ。これは俺の周囲に12本のワンズを展開して乱れ打つというもので、普通なら光の矢を1発しか打てない局面で12発も打ちまくれる優れもの。俺自身が打つものを合わせると、13発にもできる。コイツは本当に凄いぜ!


唯一の問題点は、射出の際に僅かな時間ではあるが、足を止める必要があるということだ。


もととなった空駆ける俺の得物という魔法では、術者は動き回らず武器のコントロールに集中する。ダンシングワンズは魔剣がコントロールしてくれるが、動きながらだと狙いが定まらなくなるようだ。これは仕方がない。射出の際には気を付けるさ。


一方で、一斉射撃で乱れ打ちをする場合は、移動しながら打つことができる。これは狙いを定める必要があまりないからだ。ただし、調子に乗って打ちまくると魔力の消耗も激しい。使いどころは考えないと駄目だな。


よほど気に入ったのか、ユリーシャはダンシングワンズを自分用にも作ったようだ。同じダンシングワンズなので互換性があるのは便利だね。性能はまったく変わらないが、俺のワンズが12本なのに対してユリーシャのワンズは24本だ。


俺は戦いで色んな魔法を使っているからこんなにも増やせないが、ユリーシャはそんなに使ってないし、そもそもユリーシャの魔力は強大だ。それだけ増やせるのも納得である。それからユリーシャのワンズはいつも使っているあの杖から射出される。魔法使いっぽくていいね。

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