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仮面を被ったまま生きていた部屋  作者: 巳ノ星 壱果


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27話 支配者のその後

 第30章 支配者のその後



 私は、支配者と会ったことで、

 本来の自分を少しだけ取り戻したと実感した。


 彼のことを、美化する気持ちはどこにもなかった。

 ただ別れてよかったと、改めて思った。


 私は地元に未練を残さず、一人ひとりに別れを告げた。


 何度も引っ越しをしてきた私でも、

 大人になってからの引っ越しは、想像を絶するものだった。


 孤独の中での戦い。


 泣きながら、前の会社の同期に

「地元に帰りたい」と電話をしたこともある。


 それでも、様々な経験を乗り越えたことで、私は確実に強くなっていた。


 痛みを知った分だけ、人の傷もわかるようになった。



 ある日、親友から電話がかかってきた。


 いつも通り

「なにかあった?」と聞くと、


 支配者についての話をされた。


「こないだ、びっくりしたことがあってさ」


 親友の旦那さんの地元のお祭りに、私の元カレが来ていたという。


 再会した時に元カレに写真を撮ろうと言われた。

 親友と一緒に撮った写真を送っていたから、すぐにわかったらしい。


 最初に見かけたとき、元カレは一人でいたらしい。


 誰かと一緒だと思ったそうだが、三度見かけても、彼はずっと一人だったという。


 昔は、あんなに仲間がいたのに。





 気づけば、彼は独りになっていた。





 その話を聞いて、ふと、昔の記憶が蘇った。


 一緒に行った夏祭り。


 出店の食べ物は少し高い。

 でも、あの場所で食べるからこそ美味しかった。


 それも含めて、私はお祭りが好きだった。




 人混みの中を歩いて、やっとたどり着いたのに、


「全部高い」と言って、

 何も買わずに帰った彼。


 夏祭りの帰り道、私達はチェーン店の牛丼を食べた。


 あのときの私はきっとどこかで気づいていたのかもしれない。


 この人とは、誰かと同じ景色を楽しめないのだと。


 彼はきっと、自分しか愛せない。そんな寂しい人間だった。


 周りから見れば顔立ちは整っていたかもしれない。


 でも、内側は歪んでいた。


 だからこそ、周りの人たちは、少しずつ離れていったのだと思う。


 彼はとっくに、私の中で終わった人だった。

 そう気づけただけで、十分だった。


*―――*―――*―――*―――*


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


本作は、第14回ネット小説大賞「事故物件」部門に応募しています。

もし少しでも心に残るものがありましたら、

ブックマークやレビュー、感想をいただけると、とても励みになります。


「笑う事を許されなかった部屋」を書いたあと、

さまざまな記憶がフラッシュバックし、

当時の出来事を改めて言葉に残したいと思い、本作を書きました。


自信のある作品とは言えませんが、

悩みを抱えている誰か一人にでも、

この物語が届いてくれたらという気持ちで綴っています。


次回が最終話になります。

ここまで拝読していただき、本当にありがとうございました。


巳ノ星 壱果


*―――*―――*―――*―――*


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