26話 支配者との再会
第29章 支配者との再会
私を支配していた人の番号を手に入れて、数日が経った、秋の昼間だった。
私は彼に電話をかけていた。
私が接近禁止命令を出した相手に、自分から会いに行くなんて、おかしいと思う。
でも私は、DV保護施設で出会った仲間たちのように、未練はなかった。
ただ私は、すべてを終わらせたかった。
3コール目くらいだろうか?
「はい」
きっと仕事中だったのだろう。
「あの、壱果だけど」
「あぁ」
「写真の話を聞いて、電話したの。あのときは急にいなくなって、ごめん」
「俺が一番悪かったよ。ごめん」
会話は、たった数分だった。
電話を持つ手は、震えていた。
「私、もうすぐ親の元に引っ越すことにしたの。
実は、数年前に両親が移住していて」
「少し、会えないか?」
私は、元カレと会うことにした。
自分の過去と、決別するために。
会う約束をしたのは、一週間後。
ショッピングモールのカフェだった。
未練なんて、何もなかった。
だからこそ、密室は選ばなかった。
元カレと顔を合わせるのは、ゆうやの通夜以来だった。
何年も会っていない元カレは、髪が金髪になっていた。
いろんな話をした。
私が驚くほど饒舌に話すものだから、元カレは少し戸惑っているようだった。
付き合い始めた頃の私は、よく笑う、明るい人間だった。
でも、元カレの中の私は、きっともう別のものに塗り替えられていた。
鳥籠の中で飼われていた私。
そんな姿しか、覚えていなかったのだと思う。
だから、今の私を見て、驚いていたのかもしれない。
元カレの話も聞いた。
家賃を払うのがもったいないからと、一人で一軒家を建てて、そこに住んでいること。
猛暑でもエアコンを一度も使わずに過ごせたと、どこか誇らしげに話していた。
その言葉を聞いた瞬間、
昔の記憶が蘇った。
エアコンも禁止。
使うお金も制限されていた日々。
あの頃は、まだ網戸で我慢できた。
でも今は違う。
こんなにも暑さが厳しくなっている中で、
もしあのまま一緒にいたら、
私はきっと倒れていたと思う。
やっぱり、この人は変わっていない。
そう思った。
気づけば、二時間ほど話していた。
用事があると告げて、私はその場を後にした。
そして私は、もう二度と会わないと決めた。
あのとき、離れることを選んだ自分は、間違っていなかった。
*―――*―――*―――*―――*
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
本作は、第14回ネット小説大賞「事故物件」部門に応募しています。
もし少しでも心に残るものがありましたら、
ブックマークを感想をいただけると、とても励みになります。
「笑う事を許されなかった部屋」を書いたあと、
さまざまな記憶がフラッシュバックし、
当時の出来事を改めて言葉に残したいと思い、本作を書きました。
自信のある作品とは言えませんが、
悩みを抱えている誰か一人にでも、
この物語が届いてくれたらという気持ちで綴っています。
間もなく完結しますので、もし読んで頂けたらうれしいです。
本当にありがとうございました。
巳ノ星 壱果
*―――*―――*―――*―――*




