24話 七色カメレオン
第27章 七色カメレオン
辞めようと決意し、一ヶ月ほど働いてから、私は無事に工場を退職した。
もう、人間関係で悩むのは嫌だった。
私の社会復帰のリハビリは、
これで一区切りついたのだと思う。
あの狭い世界を出たわたしはずっと働き続けている。
会社では、自分を出さない。
プライベートなことは話さない。
お金はお金。
私は、お金のために働いているだけ。
仕事のときは、仮面を被る。
それでも、ごく稀に信用できる人の前では仮面を外し、少しだけ心を開くことも覚えた。
信用できなそうな人には近づかない。
苦手な人に好かれるくらいなら、
扱いづらい人間だと思われた方がいい。
その方が、ずっと楽だった。
時に人は、私のことを
「七色カメレオン」だとか、
「浮世離れしている」と言った。
そんな言葉を、人生で何度も何度も向けられてきた。
でも、そのすべてが私だった。
白黒をはっきりさせるところも、
心を開いていない人から見れば冷酷に映るところも、
素直すぎると言われる性格も、
全部、私だった。
もし誰かに
「巳ノ星 壱果ってどんな人?」
と聞いたら、
きっと、一人ひとり違う答えが返ってくるだろう。
でも、それでいいと思った。
私は、それが
人生をうまく乗り切る術だと学んだから。
すべては、自己防衛のためだった。
嫌われてもよかった。
この性格を受け入れてくれる人とだけ、関わっていければ、それでいい。
八方美人になって、陰で人の悪口を言うような人間には、なりたくなかった。
身近な死をいくつも経験する中で、
私は、強く思った。
「みんなの分まで、後悔しない人生を生きよう」と。
我が道を行く。
それが、私の選んだ道だった。
そんなとき、
人生の分岐点が訪れることになるとは、思いもしなかった。




