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狂人転生  作者: ナオト


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22/24

国境越え⑥ 彼の名は…

エミリアの肩を優しく叩いてグリストは静かに腰を下ろした。


「俺の話なんて大した事ないが…」


そう言うとグリストはゆっくり話始める。


グリストは王の隠し子として誕生した。

話の流れ的に、王家の相続争いで…とかと思いきやグリストはあっさり捨てられて、ある人物に拾われた。前騎士団長である。


グリストは幼少期から軍について徹底的に教え込まれた。そして、10歳には初陣を果たし雑務からなんでもこなした。グリストにはきつい軍生活があっており、とても好きだった。

騎士団の仲間は皆グリストの事を弟の様に可愛がり、分からない事は何でも教えてくれる団員は、グリストからすれば兄のようにだった。


ここまで話していたグリストが急に言葉に詰まり始める。辺りは暗くなってきて森の暗さが不気味さを放っていた。そして、首から下げていたペンダントを握りゆっくり落ち着いた声で話し始めた。


「俺は、あの日起きた事は…今でも忘れない…」


剣の柄をギュと握り締めゆっくり話し始める。


それはまだ幼さが残るグリスト18歳の頃だった。

朝靄のなか数人の騎士団員と団長が横になっているグリストを囲むと大声でグリストを叩き起こした。


「王の命令によりフォレスト・ハンク貴様を直ちに処刑する。処刑は王国からの見届け人が到着次第執行する。」


そう通達すると周りの団員がグリストを捕え目隠しをし丘の上にある柱に縛りつけた。


グリストは訳も分からず団員達に必死に訳を聞いた。


「俺が何をしたんですか!!頼みます!罪状を教えて下さい!」


すると、誰かの足音が聞こえ頭を殴られそのまま気を失った。


           ……


しばらくすると見知らぬ男の声が聞こえてきた。


「こいつが例の男で間違いないですか?」


団長が低く怒りに満ちた声で答える。


「間違いありません。全て確認済みです」


見知らぬ男は喜んだ声で話し始めた。


「ずいぶん探しましたよ!それでは早速始めましょう!刑は火あぶりでお願いします」


グリストは叫ぼうとしたが口枷があり上手く喋れない。足元に薪が準備されオイルが撒かれるとグリストは泣きながら項垂れていた。


「それでは点火してください!!」


高々に響いた声の直後にグリストの顔に生温かい液体が飛んできた。


目隠しが外され、全ての拘束が解かれると足元には知らない男が倒れていた。


「すまなかったな…こうするしかなかった…」


団長と団員がグリストを囲むと団長が話し始めた。


「お前の名はフォレスト・ハンク正統な王位継承者だ。王家に捨てられたお前を息子のように育ててきた。しかし、ここまでだな。」


団長は当時グリストが生まれたタイミングと同じ時に幼い息子を亡くした。妻はショックの余り自ら命をたった。その時、捨てられていたグリストを拾い息子の様に育てた。最初は何かにすがりたい一心だったが妻を亡くし、どん底にいた彼を救ったのはグリストの笑顔だった。


「多くを語れないが、お前の事は本当の息子の様に思っている。我々はこのまま前面に展開しているドワーフ軍に突撃する。グリストよ。思う事はあると思うが王国を国民を任せたぞ…」


そう言うと団員と共に隊列に並ぶ…崩れ落ちているグリストに全団員が寄ってきた。


「まぁそんな落ち込むな!お前は今からちゃんと人生を楽しめよ!」


「お前の事は…本当に弟のように思っている…強く生きろよ…」


「おまえとは酒を呑みたかった…あの世で待ってるからな」


「この手紙を故郷の家族に渡してくれ。いままでありがとう…」


数々の言葉の中には一つも嫌味など無かった。皆グリストの為に覚悟は決めていた。団長がゆっくり近づき優しくグリストに話す。


「いつかこうなる事は皆わかっていた。覚悟の上だ。最後の命令だ。我が隊はドワーフ軍の奇襲により全滅したと軍本隊に伝えよ。その際に王国から派遣された見届け人また罪人も殺されたとな!グリストよ…何があっても復讐など考えるな!皆の分まで生きろ。」


そう言うと団長は剣を抜き号令をかけた。


「皆よいか!あの世で償わせてくれ!グリストの為に!突撃!!」


その瞬間怒号ともに地響きが起こった。グリストはただ最後まで彼らの後ろ姿を眺めていた。


両軍がぶつかり全ての生命が尽きた大地に雨が降ってきた。頬につたってくるのは涙なのか雨なのか…わからないまま呆然と立ち尽くしているグリストに味方の偵察に来た騎馬兵が近づいてきた。


「何があった!!騎士団はどうした!」


グリストは顔を上げ答える。


「我が隊はドワーフ軍の奇襲により全滅!また!王国から派遣された見届け人と罪人も殺されました!生き残ったのは私のみです!」


偵察兵は周りの地獄絵図に動揺を隠せないままグリストに声をかけた。


「そうか…よく生き残ったな…現状は私が本部に連絡する!名は何という?」


グリストは強くただ力強く答えた。


「グリスト!我が誇り高き騎士団の生き残り!皆の意思を継ぎ我が王国を守護する者!」


地面に落ちている剣を拾い上げ偵察兵に声を掛ける。


「皆を埋葬します。ご報告宜しく頼みます」


グリストは兄達を一人一人埋葬した。そして父を…父が握りしめていた剣の柄にはグリスト同じペンダントが巻かれていた。


グリストはペンダントを見つめながら話を終えた…

長い間お休みいただきましたが、ゆっくり再開していきます〜

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