表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/322

真也と勝

 みんなの後を追うため、湖のほとりに意識を集中させようとしたその時、(しょう)が俺を引き留め、声をかけてきた。


 「で・・・・・。どうだったんだよ。」


 突然の問いかけに、俺は初め、なんのことを聞かれているのかわからず首をかしげた。


 「聞いたんだろ?宮下の記憶喪失(きおくそうしつ)事件のこと。」


 そこまで言われて俺はようやく、勝も例のリコ記憶喪失事件を覚えているのだと悟った。

 先ほど俺が翡翠(ひすい)久遠(くおん)に確認していたことにも、ちゃんと気づいていたのだ。

 勝は本当に大切な物事を見落とさない・・・・・・。

 俺が内密に動いていることに気づき、2人きりになれるまで黙っていてくれたのだ。


 「ああ・・・・・。やっぱり都古(みやこ)の家に来たことが原因だった。」

 「まじかよっ!それじゃ、俺らもっ・・・・」

 「いや。今の時点で記憶が無事ならもう心配はないらしい。安心しろってさ。」

 「そうか・・・・・・。」

 「・・・・・勝。お前、都古のこと怒るなよ。都古。どんな結果になっても、独りで全部抱えてく覚悟をしてたんだと思う・・・・・・。」


 もし俺たちが記憶を失っていたら・・・・・。

 俺たちに忘れられた日常で、都古は独りどんな顔をして過ごすのだろうか。

 もし、俺だったら・・・・・。


 「俺・・・・なんも言えねぇよ。」


 ところが、木にもたれかかり、腕を組んで俺の言葉を聞いていた勝の返事は、でっかいため息だった。


 「ばーか、真也(しんや)。都古のことなんか、めちゃめちゃ怒ってやりゃぁいいんだよ。ふざけんじゃねーぞ!どんだけ信用してねーんだ!俺らお前にとってなんなんだ・・・・ってよ。」


 そういうと、勝は俺の肩に軽くパンチを入れ、ニヤリと笑った。

 勝のパンチは、俺の中のわだかまりを粉々に打ち砕いてくれた。

 勝の言う通りだった。

 俺は都古のことがわかっていないどころか、自分の気持ちさえも全然わかっていなかったみたいだ。


 どうやら俺は、都古に本当のことを打ち明けてもらえなかったことを相当ショックに感じていたのだと、今更のように感じた。


 「そうだな。都古にも、勝の肩パンが必要みたいだ。」

 「だろ?」

 「ま、勝が返り討ちにあうだろうけどな。」


 俺がそう言って笑うと、勝はいつもの情けない顔をした後、声を立てて笑った。


 「記憶が奪われたって、俺はあいつに声かけるぞ。都古の奴が『しつこい。もうやめろー』ってなるくらい。そしたら、伝わんだろ。俺たちには都古が必要だって。何度だって、出会い直せばいいだけだってよ。だいたい、あんなおかしな奴がクラスにいたら、真也と俺が放っておくわけないしな。光弘(みつひろ)だって同じだろ。・・・・・・都古を独りにはさせねーよ。」


 ここに来て、初めて俺は心から笑顔になれた。

 ふいに勝が真剣な顔を見せる。


 「けどよ。俺らって、今でこそ執護(あざね)とかいうのの卵になっちまったけど。都古のやつ、そもそもは自分の手伝いをさせるためだけに、俺たちをつれてきたってことだよな?たかが手伝いのために、都古がこんな危ない橋を渡らせるとは思えねーんだ。俺。」


 勝の言う通り、俺もそれが引っかかっていた。

 都古が自分の手伝いをさせるために、記憶を失う恐れがある場所に俺たちを連れてきたり、巻き込んだりするわけがない。

 それ相応の事情があるはずだ。

 だとすればそれは・・・・・。


 「・・・・・光弘・・・・か。」

 「・・・・・かもな。」


 俺の意見に、勝も同意する。

 俺たちが知りえない何かが、光弘が抱え続けているものと関係しているのかもしれない。

 もし光弘のことがかかわっているのだとしたら、都古がこんな賭けにでたことにも納得がいく。

 何かを為すために、必要に迫られてここに俺たちを連れて来たのだとしたら・・・・・。

 都古の性格上、俺たちを無駄に不安にさせるようなことをわざわざ伝えてくるわけがなかった。


 「ま、なんかありゃ、あいつから言ってくんだろ。」


 これだけの状況に身を置いてなお、伸びをしながらのんきな物言いをしていられる、そんな自然体の勝の姿には本当にホッとさせられる。


 俺と勝は、みんなの元へ移動するべく意識を集中させ・・・・・そして、顔を見合わせた。


 えーと・・・・・今度は何が始まってるんだ?

 とりあえず、深く考えないで今は移動することだけに集中しよう。


 俺たちはみんなが集まっている湖のほとりへと移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ