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二人のそれぞれ


建国祭が終わって正妃が帰国したのを見届けて、ルードヴィヒは正式に、皇族即ち自身への冤罪を擦りつけようとした罪で皇族のみの前で正妃を断罪した。

皇帝が、子供も設けて居る権力者の正妃を庇うことが一番の懸念点だったが、文書・証人・物的証拠を揃えて正しい手順に則って断罪したところ、審議会が設けられることになった。


季節が移り変わった頃、審議会の確認が終わり正妃の罪を認められることになった。

裁判が始まったが、有罪であることは変わりなく、第二皇子の立太子が叶うことはないということが確定した。


そのタイミングで皇国の王宮にて正式にルードヴィヒとソフィーの婚約が認められ、婚約式を執り行った。



長かった婚約式の儀式が終わり、ようやく最後の夜会のために支度をし終わったソフィーをルードヴィヒが迎えにきた。




「ソフィー。

 君の髪は星屑が散りばめられているように煌めいていていつまでも見飽きないね。ため息が出るほど今日も美しいよ。」


そういうルードヴィヒも、正装であまりにも格好良くソフィーはドギマギしてしまうのだった。



そんなソフィーを見てくすりと笑って、

「ソフィー。僕はね、自分の命が狙われて居ることと、いつどのような襲撃があるかわからない不安、

 誰も自分を擁護してくれない焦り、

 誰を皇妃に置くかで変わってしまう政治情勢、

 そんなことを考えると自分は恋なんて一生できないんじゃないかと思っていた。


 ソフィー、君に出会えたことは奇跡としか言いようがない。

 こんなに美しい君が僕の皇妃になってくれるなんて、本当に幸運な男だ。

 絶対に、誰にも渡さない。

 絶対に、幸せに、なる。」


幸せにする、と言わず、幸せになる、と言ったことがソフィーにはとても心地よく感じた。


「ルードヴィヒ、私もあなたに会えて、人生が変わってしまった。

 結婚なんて、義務だと思っていたからいつも人生から逃げていた。

 今、やりたいことだけやって生きたいと刹那的に思ってた。


 でも、こんなに素敵なあなたに会えて、月並みだけど幸せ。

 大好き。


 私、幸せにしてあげられるかはわからないけど、貴方といたら私は幸せ。

 ずっと側にいて」


目を潤ませてルードヴィヒを見上げる。



「…はぁ。これから夜会って言うのが恨めしいな。

 行かないで部屋に篭っていようか。」

ルードヴィヒはそういってソフィーを抱きしめた。


きつく抱きしめられて、ソフィーは真っ赤になったがそんなソフィーにルードヴィヒは優しく口付けた。


ちゅっ ちゅっという音が恥ずかしくて次第に俯いていくソフィーの顎を持ち上げてルードヴィヒは更に深くキスした。


ソフィーは頭がクラクラして下腹部がキュッとするのを感じて心臓の音が聞こえるんじゃないかと思った。今まで色んな訓練を受けたけど、こんなにドキドキしたのは生まれて初めてだった。


「可愛いな、私のソフィーは。

 我慢が大変だとよく聞くが、我慢する必要性を検証する必要があるな。戻ったらすぐに調べておこう」


なぜか我儘節なのにキリッといいきるルードヴィヒにソフィーは吹き出してしまった。



二人は手を取って、二人の婚約を祝う夜会に足を踏み出した。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「なぁ、ルイ。お前があの山賊掃討作戦で行方がわからなくなって、死ぬほど心配したんだぞ」


ルイが、正式にルイとして社交界に戻ってくるとオスカーがすかさずやってきてやつれた顔で絡んできた。


ソフィーから、バタバタしていたので何の引き継ぎも受けていなかったルイは何でオスカーがこんな態度を取るのかさっぱり分からなくて、悪い悪い、今度酒でも奢るからさとかわした。

オスカーは物欲しげにこちらを見ることが増えた。


ソフィーに、思い当たることがないか聞こうとも思ったが、既に皇太子妃教育が始まっていて忙しそうにしているソフィーにわざわざ聞くことでもないかなと思って放っておいた。





ルイは、ソフィーが皇国に行ってしまう前に、自分でお膳立てしたシャルロッテとの初めての面会の後、またまたソフィー姿の自分で次の機会をお膳立てして、何度もシャルロッテと会う機会を作り、少しずつ王女の隣にいる時間を積み上げていった。






―――ただの準騎士だったのに、王配レースで頭一つ出たな


誰しもがそう認識して、ルイ本人も相当に周りを牽制しに牽制を重ねつつ、シャルロッテにも絶妙にアプローチして彼女の好意を確実に勝ち取っていった。



ルイはソフィーの姿の時に、彼女をずっと見ていたのだ。


どんな花が好きか

何色が好きか

どんな紅茶が好きか

どこに行くのが好きか


全て、彼女の好きなポイントが手に取るように分かる。


シャルロッテの好きなラナンキュラスの花束を贈り、

ピーコックグリーンのリボンを贈り、

オレンジペコーの紅茶を淹れ、

観劇に誘った。




王宮の庭を散策した時に、泥濘に足を取られないよう手を繋いだり(わざと泥濘のある道を選んだ)、

贈り物のネックレスを自分で着けると言ってさりげなく首筋に触れたり、

少しずつ、でも確実に嫌がられない範囲を増やして彼女の真っ赤になるところを愛でた。


侍女は、確信犯だと分かっていたが、嬉しそうに舞い上がる主人を前に、また、ソフィーそっくりの紳士であるルイを前にして、誰も何も言わなかった。



父親のミューゼル公爵と共に国王に王配になりたいと交渉を続けて認められた後、すぐにルイは王宮の庭園にある薔薇の映えるガゼボを花で埋め尽くして跪き、シャルロッテにプロポーズした。


王配教育を受けるために登城してはシャルロッテと甘々な婚約期間を過ごした。






オスカーから、結婚式前に独身最後の夜と称して飲みに誘われたのだが、それはそれは酷い荒れっぷりだった。



「おい、お前失恋したのか?」

と酔い潰れそうなオスカーを介抱してやった。

じと目でこちらを見るオスカーがブランデーをグイッと煽る。


「おい、お前が祝ってやるって言うから久しぶりにこうやって呑んでるのに何でお前ヤケ酒してるんだ。

 今度の女にはそんなに入れ込んでたのか?お前らしくない」


「そうだよ…俺らしくない…だけど、本気だったんだよ…」


しくしく泣き出したのでギョッとして家に送ろうかとしたがそのまま酒場の近くの安宿で寝たいというので送ってやった。


部屋に着くなり、誰かと間違えたのかベッドに押し倒されてディープキスをして股間を弄られたので殴り倒して寝かしつけてやった。


後日、全く迷惑なヤローだなと小突いてやると頬を染めてすまん、と呟いたのでお前も大変だったな、といつもの調子で仲直りした。


その後もスキンシップ過剰な気もするが大分立ち直ったと言っていたので交友は続いている。







ソフィーは結婚した後もルイとよく交友を持ち続けた。

ルイはシャルロッテの王配になり、女王をよく支えて国民から慕われた。


シャルロッテもルイを深く愛して二人の間には二男三女に恵まれた。

ソフィーたちも一男二女に恵まれて、それぞれの次世代の子供たちは互いの国に留学しあった。


皇国の姫が王太子妃に、王国の姫は皇国の貴族に嫁いだ。

二国間は双子から、長く続く蜜月が始まったと言われる所以である。




王国に対しては帝国から魔法技術の伝播推進し、ルイとソフィーは歴史にその名を残すことになったのだった。

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