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第九話 病と向き合う娘



「父様(ちちさま)、どうにか、和名類聚抄《わみょうるいじゅしょう》は手に入りませぬか。

 施薬院(せやくいん)では、日々増えゆく病人たちに頭を痛めているご様子。

 最近は疱瘡(もがさ)が流行っておりますが、呪禁(じゅごん)や加持祈祷(かじきとう)の類が効くとは、私には到底、思えぬのでございます」



 俺は娘の瑠璃(るり)に詰められていた。

 


「おい、まさか施薬院(せやくいん)に行ってないだろうな?

 菌やウイル……いや、病気をもらって帰ったら命に関わるぞ」



 この子は、幼い頃に母を亡くし、それ以来、病気に関する知識に興味を持つようになっていた。


 年はもう十五になる。

 前世じゃ結婚すらしてなかったのに、現世じゃ十五歳の反抗期手前の娘に詰め寄られている。人生わからんもんだ。


 しかし、幼い頃から、本草和名(ほんぞうわみょう)など、薬学関連の書物を熱心に読み写していたのだが、自ら危険な場所へと飛び込むなどと、まさかここまでとは思ってなかった。



 和名類聚抄《わみょうるいじゅしょう》とは、今、典薬寮(くすりのつかさ)でも話題になっている、編纂中の漢和辞書・百科事典で、薬物や医療に関する項目も収録されているものである。


 若手の源順(みなもとのしたごう)が漢字知識と言葉のセンスを見込まれ、勤子内親王(いんしないしんのう)から「便利な辞書を作ってくれ」とプライベートな依頼を受け、目下取り掛かっているものだった。



 まだ全巻がまとまってはいないものの、各分野の専門書からデータを集めているだけあって、出来上がった部分だけでも知識は広く、見た者たちからは、使いやすい形にギュッとまとまっていると評判になっていたのだ。



「父様まで、穢(けが)れなどとおっしゃるのですか……。

 近頃は呪禁(じゅごん)にばかり傾倒なされて、そのお姿は、いささか危うきことにのめり込んでおいでとお見受けいたしますが――」



 そう言って俺の周囲を見る瑠璃(るり)。


 いや、まさに、賀茂忠行(かものただゆき)邸から帰った俺は、翌日から護符研究をYuiさんと開始していたのだ。


 俺の周りには、墨と木札が積まれ、出し散らかされている。


 何せ文月(ふみづき)(七月)に怪僧退治を命ぜられたのだ。

 あとひと月しかないのである。何としてでもパワーアップしておかねば命に関わるのだ。



「いやしかしな、呪術とは関係なしに、病には悪い気がある。

 それに当たると、お前も病気をうつされかねん。

 私はな、他の誰かが病で苦しんでいようと、そなたの身の方が心配なのだ。

 それはわかるだろう?」



 この衛生観念も薄い平安の世。平安とは名ばかりで人はすぐに死ぬ。

 かといって人死に慣れているわけではない。


 亡き妻のためにも、瑠璃(るり)たちには長生きしてほしいのだ。



「私も、ただ人助けのためだけに施薬院(せやくいん)へ参るのではございませぬ。

 そこには病に苦しむ者がいて、日々その者たちを癒やそうと尽くす者がおります。

 本草和名(ほんぞうわみょう)に書かれた真偽を現場の声で確かめ、何が本当に効くのかを知りとうございます。

 それもひとえに、父様(ちちさま)や直澄(なおすみ)など、我が家の者たちが病に倒れた時のためなのでございます」



 思いは瑠璃(るり)も一緒のようだ。

 そんな危険な場所へ行かせたくはないのだが、このような性格の彼女のことだ。止めたとしても続けるであろう。



「それに、近頃は行ってはおりませぬ。

 九郎(くろう)も叔父上(すみのり)も、お忙しそうにされておりますし……」



 ともあれ病だけではない、京は危険な場所なのだ。

 普段から外出する時は九郎(くろう)か純乗(すみのり)を連れていくように言っている。




  ――そっちを気をつけとけー


     ――これ、どうしますか


 ――あぶねーな!





 大きな声に釣られて俺たちは外を眺めた。


 そう、最近色々あり、忘れそうになるが、義兄元名(もとな)からの依頼、藤原淑姫(ふじわらのよしひめ)の隠居住宅の建築依頼だ。


 どうせ、土地も半分に分けることになるのだ。

 「俺たちの家も含めて建て直そうぜ」ってことにしている。

 今は、この小さな家以外を解体して資材に変えている最中なのだ。


 もちろん、西市の官舎や倉庫も解体許可をもらってるから、資材はもっと増えてくる予定。

 そんなこんなで九郎(くろう)も純乗(すみのり)も大忙しなのだ。


 九郎(くろう)もウチに奉公に出されたとはいえ、修理職町(しゅりしきまち)はすぐそこだ。繋がりが切れてるわけではない。

 その伝手で作業員を十数名用意してもらい、作業に当たらせている。


 最近は内裏(だいり)の財政難で、貴族たちの職人への支払いが悪い。

 なので彼らは飯代だけでホイホイ働いてくれる。


 俺としては労働力を得られて非常に助かっていたのだ。

 ああ、飯代は今のところ、細々と作っている竹炭を売って稼いでいる。

 東市の市人に売っているのだが火力が高いらしく、結構職人に好評なのだ。


 ふっふっふっ。

 チート住宅ブッ建ててやるぜ――


 この土はすぐ泥濘むから、コンクリートでどうにかならんかしら。

 排水機能も作りたいな。


 灰は竹炭作りで大量にある。

 あとは石灰と砂利なのだが、問題は石灰だ。


 この時代の石灰はあるにはあるのだが貝殻を焼いたヤツがメイン。

 コストが高すぎるのだ。


 石灰岩探しに行ってみるかな――



「――父様(ちちさま)、何をそのように、お独りで笑っておいでなのですか?

 少々、気味が悪うございます」



 おおっと、色々と妄想に浸りすぎた。

 娘よ、そんなドン引きした目で見ないでおくれ。父は呪術のせいでこんなになったのではないよ。



「……時に、父様(ちちさま)。

 お尋ねしたいことがございます――」



 そう言って、自分で書き写した本草和名(ほんぞうわみょう)を出してくる。



「この、瘧(おこり)に効くと書かれている宇末佐久(うまさく)ですが、以前、施薬院(せやくいん)にて病人に与えましたところ、一向に効き目がございませんでした。

 書物にある宇末佐久(うまさく)とは、別の草なのでしょうか」



 ふむ。宇末佐久(うまさく)は河原に生えている草か。

 そういえば熱に効くとは聞いたことがある。



(宇末佐久(うまさく)は前世でいう黄花蒿(くそにんじん)に近い植物です。

 瘧(おこり)はマラリアである可能性が高いですね。

 ……この場合、書物にある薬効がそのまま出なかった理由はいくつか考えられます)



 ――じゃあ、どうすればいい?



(本草和名(ほんぞうわみょう)を見る限り、服用の際、煎じるなど煮出すことが多いようですね。

 成分を変質させないよう加熱せず、乾燥させたものを細かくし、水で服用する方法が良いのではないでしょうか)



 なるほど、本草和名(ほんぞうわみょう)を見るが、煎じて飲むように書いている。

 違った方法として、煮出した汁ではなく、そのまま飲む方法を瑠璃(るり)に提案してみよう。



「唐の記録とて、この国へ伝わる間に違ってしまうこともあるのですね……。

 ああ、どうしても、どうしても和名類聚抄《わみょうるいじゅしょう》を読んでみとうございます!

 そこには、より確かな唐の知見が記されているのでしょうか。

 それにしても、それほどの知識を持ちながら、唐の国は何故滅びてしまったのでしょうね、父様(ちちさま)」



 うむ。そんなこと聞かれたって俺にはわからんし、単純な話でも無いだろう。



「お願いでございます、父様(ちちさま)!

 どうにかして手に入れてはくださいませぬか。

 そして、このことを施薬院(せやくいん)の者たちにも伝えねばなりませぬ!

 ……ああ、なれど今は九郎(くろう)も叔父上も手が離せぬのでございましたね。何とももどかしゅうございます!」



 そんな、娘よ父を買い被りすぎだ。

 父にはそんな本を手に入れる伝手などない。まだ編み終えてもいない書物なのだからなおさらだ。



(しかし、病魔退散の護符を作るのが先決かもしれませんね)



 うむ。この調子ならいずれ無茶なことをしそうで信用できない。

 Yuiさんの言う通りだ。


 瑠璃(るり)は、外に飛び出し、九郎(くろう)と純乗(すみのり)に話しかけている。

 行くなと言ってるのに……。



 俺はため息をつく。

 そして九郎(くろう)と純乗(すみのり)が断るのを確認して、護符の研究を始めるのだった。





――――――――――





「◼︎◼︎◼︎さんさー。なんか男として無いのよねー」



 会社の給湯室だろうか。

 同僚の女の声が聞こえてくる。



「あー、あれでしょ。部長に責任押し付けられてたやつね

 あんな時、俺じゃないとか言えないなんて――」


「でもさ、そんな性格だから仕事も押し付けやすいんだけどね――」




 ――アハハハ


      ――アハハハ




「あいつさぁ、お前の事、好きみたいだぜ――」



 会社の休憩室だろうか。

 同僚の男の声が聞こえてくる。



「やめてよー、気色悪い――」


「今日だってお前の仕事、代わりにやってくれんだろ?」


「だってー、私たちそのおかげで奥さんに内緒で会えるんじゃん――」





 ――アハハハ


      ――アハハハ





「あなたの、そのようなところが好きなのでございます――」


 千代(ちよ)が俺のボロ服を繕いながら言った。

 主計(かずえ)で、働きもしない貴族たちが、家の力で俺を追い抜いていく様を幾度となくみてきた。



「良いではございませぬか。

 こうしてあなたと生きていけるのですから――」



 父、良範(よしのり)を亡くし、後ろ盾のない俺。

 その俺を憐れみ、父の友人で叔父でもある清経(きよつね)は娘である千代(ちよ)と婚姻させてくれた。


 俺としては嬉しかったのだが、こんな性格が災いしてか、目をかけてくれた義父が亡くなった後、妻の家は全て元名(もとな)含む、義兄弟たちに取られてしまっていた。



 本当に千代(ちよ)は幸せだったのだろうか?



 瑠璃(るり)を抱き上げ、大きくなったお腹をさすりながら笑顔で――



「このようなことを、幸せと思われませんか?

 私は幸せにございます――」



 確かに、幸せだった。

 生活は苦しくなり、屋敷の維持もままならなくなり、半分以上、義兄に譲ったとしても、彼女が一緒にいてくれるだけで、前世も含めてこの数年が一番幸せだった。



「この子たちを……お頼み申し上げます」



 笑顔で彼女は言った。

 病床で、意識も朦朧とし、体も起こすことはできない。

 頭だけ動かし、横に眠る直澄(なおすみ)を見て言ったのだ。


 死の淵に立ってもなお、千代(ちよ)は笑顔だった。


 優しい、女だった。


 その優しさゆえに、俺の優しいと言い訳された「弱さ」や「怠惰」を包み込んでくれていた。



 しかし、その結果がこれだ。

 俺の「弱さ」のせいで彼女が死んだのに。

 俺の「怠惰」のせいで彼女が死んだのに。



 彼女は死の淵でも、俺を笑顔で包み込もうとしていたのだ。




  ――行かないでくれ!


     ――俺を置いていかないでくれ!


         ――一緒に連れて行ってくれ!




 遠ざかる彼女を追いかける。


 俺の声は届かないかのように、笑顔の彼女は遠ざかり――





 ――――――――





(少し眠っていたようですね。

 おかげで夜明けまでにあと一回分のエーテルは溜まりそうです)



 どうやら少し眠っていたようだ。

 頬に手をやると少し濡れているのを感じた。



 俺は今、夜の京に出ている。


 狙いは百鬼夜行だ。

 この『隠行符(おんぎょうふ)』を先に作っておいてよかったな。

 なんせこうやって、隠れながら鬼たちを一匹ずつ仕留めることができるからだ。



 しかし、何故、またこんな危険なことをして、鬼を狩り続けているのかには理由がある。



 賀茂忠行(かものただゆき)の屋敷から戻った後、護符を製作していたのだが一つ問題が浮上してきた。


 それは俺の圧倒的なエーテル容量不足であった。


 Yuiさんが様々な護符を学習できたのはいいが、その護符を書くためには自身のエーテルが必要だったのである。

 線を数本書くたびに、木札の墨にエーテルが吸われていく。

 なので護符を完成させるのも大量のエーテルが必要で大変なのだ。


 じゃあ、符を書かずに技を使ったほうがいいじゃんって?

 いや、そんなに簡単な話ではない、しかも護符を使うのにもメリットはあるのだ。


 

 賀茂忠行(かものただゆき)の護符には、周囲のエーテルを利用するためのソースコードがついていたのだ。


 ただそれは、書くために使えるものではなく、その護符の効果を維持するためのもの。なので、俺のエーテル量を増やす訓練は相変わらず必要なのが現状だった。

 だが、これで一度護符を作ってしまえば、本人のエーテルを使わずとも長期間の運用が可能になる―――



(三日もかけて作りましたからね。

 これからは少しペースをあげたいので鬼狩りを頑張ってください)



 頑張れと言われてもなぁ。


 一応、今回、丑三つ時から夜明けまでの狩りで、エーテルが全快すれば『聖なる矢』が六発は打てるようになったらしい。三発と比べたら倍、大した進歩だ。


 鬼の強さに応じて容量が上がるそう。

 だが、ある程度まで上がると、百鬼夜行の小さい鬼では頭打ちになることが予想されている。


 十発ほど打てるようになったら、「もう少し強いやつを狙いにいくか」とは話し合っていた。



(次の護符の候補はやはり『病魔退散の護符』ですね)



 ――え、作れるの?



(賀茂忠行(かものただゆき)の屋敷で貼っているのを見かけましたので、当然スキャン済みです)



 ――おお、今の時点で作れる護符って他に何があるんだろ?



(『鬼神不入(きしんいらず)』ですね。

 結界により鬼や邪霊などを侵入させないようにするものです)



 ふむふむ。いいといえばいい物かもしれないけど、この鬼に見つからない札作っちゃったからな。若干残念。



(これらのソースコードを解析したおかげで、賀茂忠行(かものただゆき)の使った隠形法(おんぎょうほう)と合わせることができ、この『隠行符(おんぎょうふ)』を開発することができたのです)



 ――なるほど、手に入れたコードを改良して新しいものを作っていけばいいか……何か作成計画ある?



(そうですね……まずはどのような要素があったか分解してみましょう。

 隠形法(おんぎょうほう)を説明しますね)



[DISPLAY] -----------------------------



 【隠形法(おんぎょうほう)】


 ・九字

 「神仏の軍勢よ、私の前に並んで私を護れ!」と言う意味でエーテルの結界を作成。


 ・真言

 オン: 言葉の始まり、神へ帰依する言葉。

 マリシエイ: 摩利支天(まりしてん)の力を使用。

 ソワカ: 願いを神に届けるための結びの言葉。


----------------------------------------



(使用時にも解説しましたが、九字によってエーテルで出来た結界の部屋を作成。

 その後、真言によってアストラル次元の側にエーテルで作った部屋を移動させたのです。この真言で特筆すべきは、「摩利支天(まりしてん)」の力を使ったことでしょう)




 ――「摩利支天(まりしてん)」ってあの仏様の?




(はい、そうです。

 賀茂忠行(かものただゆき)が使った真言の仏とは、この世界を成す「阿頼耶識(あらやしき)」という共有の場に組み込まれた、仏教思想パッケージの中にある「摩利支天(まりしてん)」という神仏関数なのです。

 構造だけ画面に表示します。詳しい仕組みは、また日を改めてゆっくりお話ししますね)



[DISPLAY] -----------------------------


 ■ 阿頼耶識基本OS:

 ┗ 日本語社会システム(共有プロトコル)


 ■ 虚構拡張フォルダ(宗教ライブラリ):

 ┗ 神道神話パッケージ / 仏教思想パッケージ

 ┗ 神仏ライブラリ(個別の機能関数): 「摩利支天(まりしてん)」など


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 ――なるほど、神の力を借りるってことは「阿頼耶識(あらやしき)」の機能拡張から関数を呼び出しているのか……「関数」って表計算ソフトとかである、入力したら勝手に計算してくれるやつだよね?




(はい、そうです。

 しかし、純友(すみとも)様。もっとお話ししたいところですが、もうしばらくすると夜が明けそうです。

 今日は、後一体、夜明けまでに倒すことを優先しましょう)



 そうだった。

 難しい話してたら、本来の目的を忘れるところだった――



 回復した、あと一発分の『聖なる矢』で倒せる相手を探さないとな。

 周囲を見渡し、気合を入れ直す。


 弱さのせいで――大切なものを失わないためにも、俺は強くなりたい。

 ここは頑張りどころなのだ。 







【第九話・用語解説】


■ 平安用語


・施薬院(せやくいん)

 貧しい病人や身寄りのない者を収容し、治療や施しを行った公的な医療・福祉施設。奈良時代に光明皇后の発願で設けられたのが始まりとされ、平安時代にも存続していました。


・典薬寮(くすりのつかさ)

 宮内省に属し、宮中の医療・薬事全般、医師や薬園の管理を司った役所。


・和名類聚抄《わみょうるいじゅしょう》

 源順が、醍醐天皇の皇女・勤子内親王の依頼により編纂した、漢和辞書兼百科事典。承平年間(931~938年)の成立とされ、有力説では承平4年(934年)頃の完成とされています。本作の時間軸(承平元年)ではまだ編纂の途上にあります。


・本草和名(ほんぞうわみょう)

 深根輔仁が編纂した、日本現存最古の本草書(薬物辞典)。延喜18年(918年)頃の成立とされ、中国の本草書に基づき、薬物の和名を対応させたものです。


・疱瘡(もがさ)

 天然痘の古称。平安時代を通じて度々流行し、多くの死者を出した恐ろしい伝染病でした。


・呪禁(じゅごん)

 道教や中国医学の影響を受けた、まじないによって病魔や邪気を祓う医療的呪術。律令制下では「呪禁師」という専門職も置かれていました。



■ 現代知識


・黄花蒿(くそにんじん)

 黄花蒿(学名:Artemisia annua)は、古くから薬用植物として利用されてきた植物の一種。マラリアの治療に有効とされる成分「アルテミシニン」を含むことで知られています。

 本作では、宇末佐久(うまさく)がこの植物に相当する可能性があるものとして、Yuiが知識を提供しています。




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※ここから先は、本作の世界観・設定に関する説明です。物語を楽しむだけなら読み飛ばしても問題ありません。興味のある方はどうぞ。



【第九話・Yuiの脳内講義】


(純友(すみとも)様、先ほどは駆け足になってしまいましたので、少しだけ補っておきましょう。「摩利支天(まりしてん)」がなぜ関数として呼び出せるのか、という話です)



 ――お願いします、Yuiさん先生。



(まず、以前お話しした「阿頼耶識(あらやしき)界」を覚えておいでですか。

 あれは簡単に言えば、社会構築によるパーティション――いわば自己と他人の境界――存在承認のための世界なのです。

 他人がいることによって、自己と他との境界という存在承認が生まれる。そう認識していただいて構いません)



 ――他人がいるからこそ自分という物があるってことね。

 そりゃ一人の世界に他人なんか存在しないしねぇ。

 とにかく「存在承認」ってのはその存在そのものを周囲が認めること。「社会」は「存在承認」された物達が集まった組織や環境ってことなのかな?



(はい、そういう意味での存在承認(パーティション)であり、社会なのです。

 そしてその出来た存在承認(パーティション)の集まりは社会であり、そこに日本語社会システムである基本OSを形成します。

 自ずと「阿頼耶識(あらやしき)」という存在承認(パーティション)には日本語社会システムが組み込まれ、「社会性」が生まれるのです)



 ――うーん。

 「社会性」って個人が「社会」で適応するための能力って意味だよね?

 ……とりあえず「阿頼耶識(あらやしき)」が「社会性」の土壌ということなのか?



(はい、ここで「人の魂とは」という話をさせてもらいます。

 例えば、これから産まれる赤子なら、母胎や父親との関係によって、まず存在承認されパーティションされた後、日本語社会システムが形成されます。

 その事が我々のいう魂――阿頼耶識(あらやしき)が生み出されたといっていいでしょう)



 ――「社会」に「存在承認」された時、胎児には魂が宿るんだね。



(はい、そして母体や父親が日本語ユーザーなら、その阿頼耶識(あらやしき)には日本語OS――日本語社会がインストールされるものと想像してください。

 そのOSは、パーティションの生み出された関係に帰属します)



 ――ふむ。それはなんとなくだが理解できるな。

 じゃあ、ハーフだとハイブリッドOSだな。



(はい、そうなりますね。

 インストールされる時期により、ハイブリッドOSか、日本語OS上で外国語OSを運転するか、ぐらいの差が出ます。

 このOSはインストールされていても時代――「社会」の変化と共にアップデートされ、その「社会」が存在する限り、新しく更新され続けます)



 ――日本語社会が存在し、「社会」で使われる限り自動アップデートされるってことね。



(そして、ここで最初の話に戻りますが、賀茂忠行(かものただゆき)の使った真言の神というのは、この日本語OSに入った仏教思想パッケージの神仏ライブラリにある「摩利支天(まりしてん)」関数なのです)



 ――日本語OSに入ってる機能拡張の一つが真言ってこと?



(はい。そして、賀茂忠行(かものただゆき)が使った真言はその「摩利支天(まりしてん)」関数から効果を得ているのです。

 ――さて、このあたりで居残り授業は終わりにしておきましょう。夜明けが近づいていますから、続きはまたの機会に)




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※AIを文章の校正・改稿、設定整理、資料調査、アイデア検討等に活用しています。また、一部の本文にはAIが生成した文章を直接使用しています。物語・世界観・登場人物・展開等の創作および最終的な文章の判断は作者が行っています。

※本作に登場する仏教用語・哲学用語・科学用語は、実在する思想・学説・科学的知見を参考にした、作中独自の解釈です。現実の思想・学説・科学的見解を厳密に説明するものではありません。

※本作に登場する歴史上の人物・出来事は、実在の史実を題材としておりますが、人物像・人間関係・行動・出来事などに作中独自の創作・改変を含みます。史実とは異なる部分がありますので、歴史創作としてお楽しみください。


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