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第三話 樟脳と竹炭の錬金術



「主(あるじ)、まことに出来上がりましたな……」



 下男の九郎(くろう)が、感嘆したように素焼きの壺を覗き込む。


 九郎(くろう)に頼み、数日かけて作ってもらったのは、即席の蒸留装置。

 素焼きの大型壺を土台にし、その上に曲物桶(まげものおけ)――杉の薄板を丸めた、現代でいう曲げわっぱの巨大なヤツを竹筒と組み合わせた代物が完成したのだ。


 さすがは修理職町(しゅりしきまち)にて育った職人の息子だけはある。

 結構しっかりとしたものが出来上がっていた。


 さっそく試運転。すると問題点と今後の課題が浮かび上がってきた。


 いや、失敗したわけではない。

 樟脳(しょうのう)を結晶として精製すること自体には成功したのだ。


 最大の問題点は、原材料であるクスノキの調達だった。

 木そのものを切り倒してくるなど、下級貴族の我が家の財力と人手では到底不可能。

 そもそも、京の近郊にクスノキが自生しているわけでもなかったりする……。


 ただ、運のいいことにクスノキを発見することができたのだ。なんと近場に生えていたのである。


 それも宮の中、職場である主計寮(かずえのつかさ)のすぐ裏手――民部省(たみのつかさ)の正倉の隣に、立派なクスノキが三本ほど植えられていたのだからびっくりである。


 虫害やカビを嫌う正倉の守りとして植えられたものなのだろうか。

 まあ、理由はわからないが、クスノキが見つかり、俺は少しホッとする。だがしかし「じゃあ切り倒しますわ」というわけにはいかないのが世知辛いところよ。


 こんな時は困った時のスマホAI様に聞いてみる。

 すると木材チップじゃなくてもいいと言われたのだ。むしろ葉や小枝からでも取れるらしいんだってさ。


 なので俺は、切り倒すことはできずとも、低い位置で生い茂り、今にも屋根に届きそうになっていた枝を「宮の美観を損ね、正倉の防犯上よろしくないため、切り落としますね」と届け出て、すべて貰い受けることにしたのだ。


 実験数回分、いや、数十回分に足る葉と小枝を確保できた。

 だが問題はそれだけではない。クスノキの葉をただで手に入れたとしても、次の問題が待ち受けていたのだ。


 「薪」のコスト問題である。


 この平安京には都市ガスも電気も通っていない。

 我が家のようなボロ家に住む下級貴族には、水を沸騰させ続けるための薪や炭はなかった。

 これらを際限なく買い揃える余裕など、どこを叩いても出てこないのが現状なのだ。


 そのため、いつも生活で使う燃料は、治安の悪い右京(うきょう)の寂れた竹藪や、桂川(かつらがわ)の河原に放置されている生えっぱなしの竹を使っている。

 それらを九郎(くろう)や弟の純乗(すみのり)に切り出してもらい、乾燥させることで薪代わりに使っていたのだ。


 しかし、竹は燃え尽きるのが異常に早い。

 おまけに、水分を含んだ竹を燃やすと、凄まじい勢いで白い煙と煤が立ち上るのだ。



「兄上、何やら妙に鼻を突く臭いがするな。

 ……何のいたずらだ?」



 ひょっこり顔を出したのは、俺の弟の藤原純乗(ふじわらのすみのり)だった。


 大宰府にいた父、藤原良範(ふじわらのよしのり)と地方豪族の娘である側室との間にできた子らしい。

 大宰府で父が亡くなった後、しばらく九州にて生活していたが、生活が困窮し、身の振り方を求めて七年前に家にやってきたのだ。

 現在二十七歳、どことなく父に面影が似ており、体躯の良さを生かし、我が家の用心棒として働いてもらっていた。



「確かに、いまだ嗅いだことのない臭いにございます」



 九郎(くろう)も、壺の隙間から漏れ出す蒸気を、いぶかしげに眺めている。

 二人が「鼻を突く」と言っているのは、もちろん樟脳の香りだ。


 今回の精製で取れた結晶と、そこに混じっていた液状の精油。

 それらはなんというか、前世の箪笥の中のような……ミントとは少し違った清涼感のあるスーッとした匂いが漂っていた。


 なので「臭い」というより上品で良い香りのハズなのだが……。

 お可哀想に、大宰府にて育った彼には、京の薫物(たきもの)の優雅な香りを知らないのだろう。それなら、これはただの得体の知れない異臭に過ぎないのかもしれない。



「やはり、燃料の竹が足りなくなってきたか……」



 火力を安定させなきゃならんのに、この燃料効率の悪さはキツいな。何かいい代替案はないものか。


 もうね、困った時のAI様頼み、である。

 俺は自然エネルギー、メタンガスや太陽熱の利用について聞いてみた。


 しかし、返ってきた答えは、「どれも実用的ではない」という厳しいものだった。

 メタンガスには爆発の危険性がある。太陽熱は、湯を沸騰させ続けられるほどの火力を保つのが難しい。なにより、不安定な天候に左右されてしまうのだから実用的ではないのだろう。


 相談した結果、安定した熱が長時間欲しいなら、竹を「炭」にしてから使えばどうかとなった。



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 竹炭作りは、現状の純友(すみとも)様にとって「一石三鳥」の大きなメリットをもたらします。


1. 燃料の自給自足:

 周囲に自生している竹を炭化させることで、高価な木炭を購入する費用を完全に削減できます。


2. 燃料としての性能向上:

 竹はそのままだと一瞬で燃え尽きますが、炭化させることで、煙が少なく火力を一定に保ちやすい優秀な燃料になります。樟脳の精製に必要な「長時間の安定した熱源」として最適です。


3. 水質の浄化(ろ過):

 完成した竹炭は、水の臭いや一部の不純物を吸着するろ材として利用できます。

 

【製法:伏せ焼き】

 地面に溝を掘って乾燥した竹を詰め、土を被せて部分的に空気を遮断し「蒸し焼き」にします。 ※排気口から出る煙を冷やすことで、副産物である「竹酢液(ちくさくえき)」も採取可能です。


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 竹酢液(ちくさくえき)か……。そういえば、前世の園芸や害虫対策でそんなのあったな。



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【竹酢液(ちくさくえき)の主な用途】


 1. 屋敷の消臭・衛生:

 便所やゴミ溜めに散布。臭気を抑え、ウジやハエの発生を抑制します。


 2. 防カビ・防虫:

 床下や柱への塗布。シロアリを遠ざけ、木材の腐食を抑制。


 3. 農業・園芸での利用:

 希釈して散布。害虫対策や土壌改良などに利用例があります。効果や適切な濃度は用途によって異なります。


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 なるほど、煙をただ逃がすのはもったいない。

 これなら、近隣への煙害対策にもなるし、もちろん竹酢液(ちくさくえき)自体も役に立つ。


 やるべきことが、一気にクリアになっていく。


 だが、庭先で何度も地面を掘って竹を焼くのは、土が崩れて効率が悪い。

 しっかりした「窯」を組みたいところだが、耐火レンガなんて文明の利器はこの時代には存在しない。大掛かりな須恵器(すえき)の窯でも作るべきか。



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 炭作りに現代的な耐火煉瓦は不要です。地元の「瓦用の強い粘土」や「版築土」を叩き固めるだけで十分耐えられます。

 

窯内の予想温度:

・普通の竹炭(黒炭): 400℃~700℃

・高級竹炭(白炭): 800℃~1000℃

 

 鉄の精錬に必要な1500℃とは異なり、一度しっかりと焼き締まった土(粘土)であれば、竹炭を焼く熱量には問題なく耐用可能です。


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 なるほど。要するに、瓦を焼く程度の簡易な土窯で十分ってことか。なら、窯の構造はどうする?



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【推奨する窯の構造(上下二層式)】

 

・下層(燃焼室): 火を焚くスペース。

・上層(炭化室): 竹を詰めた大きな土甕を設置。

・煙突: 上層の甕から直接ストロー状の竹パイプを差し込み、ダイレクトに竹酢液(ちくさくえき)用の煙を回収。

 


【効率的な熱の複合利用(排熱システム)】


・一次(炭化): 乾燥竹を焼いて「竹炭」を作り、煙から「竹酢液」を回収。

・二次(余熱利用):窯の余熱を利用して、次の蒸留に使う水や生竹を温める。


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 すごい。これぞスマホ無双、知識チートじゃん。

 アウトドア行って、着火剤があっても火起こしに一時間もかかる俺からすれば、これらは知らない知識ばかり。ほんと、スマホがあってよかったぁー。


 三十五歳のおっさんに転生した不運を、この知識チートで覆せるかも。


 ふっふふ。この調子なら、歴史の「承平天慶(じょうへいてんぎょう)の乱」という死亡ルートを完全に回避し、悠々自適なスローライフを確立できるのではないだろうか。


 そんな妄想に浸っていた、その時だった。



「少属(しょうさかん)様。我が主の前備後守(さきのびんごのかみ)様が、折り入ってお話があるとのことにございます。

 これより、邸へお越しいただきたいと仰せつかっております」



 不意に、我が家のボロい垣根の隙間から声が響いた。

 隣に住む、義兄――藤原元名(ふじわらのもとな)の、下男であった。


 うげ。義兄殿がお呼びか。

 隣の高くて立派な土塀を見上げる。



 あの人苦手なんだよなぁ……。

 早くに亡くしてしまった妻、千代(ちよ)の実兄であり、同時に位が上の貴族だから苦手というのもある。


 せっかくのチートによるワクワク感。

 それらが一瞬で、不快な梅雨の湿気に沈んでいくのを感じるのだった。





――――――――――





「そういった訳でな。これを受け入れれば、摂政(せっしょう)殿の覚えもめでたかろう」



 目の前で、義兄である藤原元名(ふじわらのもとな)が、笑みを浮かべて扇を弄んでいる。


 俺は今、元名(もとな)邸の、立派な作りの縁側に畏まっていた。

 要請の中身は、早い話が「長明親王(ながあきらしんのう)の御母君に、お前の土地を分けてくれ」という、いかにも平安貴族らしい不条理な要求だった。


 ことの始まりは、延長(えんちょう)八年の夏――。

 清涼殿(せいりょうでん)に凄まじい雷が落ちるという前代未聞の落雷事件が起こり、その心労から、同年の秋に醍醐天皇(だいごてんのう)が崩御された。すべてはそれからのことだった。


 青天の霹靂ってやつだろう。

 まあ、言葉の綾ではなく実際に雷が落ちてるのだが……。


 そのため、わずか八歳の朱雀天皇(すざくてんのう)が即位し、幼さを補うために、伯父である藤原忠平(ふじわらのただひら)が摂政(せっしょう)の座に就くということになったのだ。


 義兄元名(もとな)が「摂政(せっしょう)殿」と呼んでいるのは、その北家最高権力者である藤原忠平(ふじわらのただひら)のことである。



「はて……されど、なぜ某(それがし)のような者に、そのような大それたお話が回って参りましたのでしょう……」



 元名(もとな)の笑顔は変わらない。だが、その瞳の奥には野心のようなものが見え隠れしているようにも見えた。



「何せ、先の帝は数多くの更衣(こうい)を囲っておいでであったからな。それゆえ皇子や皇女も数多おいでになり、内裏(だいり)を去らねばならぬ御方も多かったのだ。

 そうした方々の隠居所の差配が、巡り巡って、北家の末席たるお前のところへ回ってきたというわけよ」



 更衣(こうい)とは、側室のようなものだ。俺のような地下(じげ)でも、帝に更衣(こうい)が沢山いるという噂は聞いたことがある。しかし、このような話が自分にも関係してくるとは思ってもいなかった。



「特に、長明親王(ながあきらしんのう)の御母君は、菅原道真(すがわらのみちざね)の怨霊をひどく恐れておいでのよう。

 お父上の故参議(さんぎ)があのような最期を遂げられたこともあり、格別の思いがあられるのだろう」



 菅原道真(すがわらのみちざね)を失脚させた報いで、その怨霊の雷に呪い殺されたとされる参議(さんぎ)藤原菅根(ふじわらのすがね)。

 その娘であり、先の帝の寵姫で長明親王(ながあきらしんのう)の御母君であった藤原淑姫(ふじわらのよしひめ)様。父親も、そして夫である帝さえも怨霊に奪われたのだ。そりゃ、怖いだろうさ。



「ゆえに隠居所は、お前の土地の半分――わずか二戸でよい、とのことだ」



 さらりと言ってのけた義兄は、そのことがさも当然のような顔をしている。


 ちくしょう。そもそも、我が家の土地の歴史を紐解けば、ため息しか出ない。

 俺、藤原純友(ふじわらのすみとも)は、かつて大宰少弐(だざいのしょうに)や筑前守(ちくぜんのかみ)を務めた藤原良範(ふじわらのよしのり)の三男として生まれた。


 父が生きていた頃、この春日小路(かすがこうじ)沿いの一画には、一町(いっちょう)の半分、南北約百二十メートル、東西約六十メートルにも及ぶ広大な十六戸の邸宅が誇らしげにそびえ立っていたのだ。

 それが今や、北東の角のわずか四戸分ほどしか残っていない。元の四分の一にまで縮小してしまった哀れな我が家を、さらに半分明け渡せというのだ。


 父の死後、十歳だった俺に手を差し伸べてくれたのは、亡き妻・千代(ちよ)の父である藤原清経(ふじわらのきよつね)殿だった。父の親友であり叔父であった彼は、俺の後ろ盾となるため、娘の千代(ちよ)を嫁にくれたのだ。


 ただ、その義父殿も十六年前にぽっくりと熱病でいってしまわれた。

 それからの数年は本当に地獄で、広すぎる屋敷を管理する事もできず、この目の前にいる義兄元名(もとな)に十二戸分を売り払うこととなったのだ。


 藁をも縋る思いで、妻が義兄へと頼み込んだのである。


 この時代なら、俺は妻の家、つまり藤原清経(ふじわらのきよつね)の家を継いでいた可能性もあったのだが、俺の要領の悪さと、妻の人の良すぎる性格、あと元名(もとな)たち義兄弟が猛反発し、妻は俺の家に入ってきたのだった。


 そんな千代(ちよ)も直澄(なおすみ)を産んだ時に肥立が悪く、十年前に亡くなってしまっていた。


 千代(ちよ)の事を思い出し、胸が苦しくなる。

 幸せにしてやりたかったと。



「すでに御息所(みやすんどころ)は出家なされた。

 造りも質素で構わぬゆえ、邸の設(しつら)えは、お前に任せる――」



 そうだ、話を聞いている途中だった。

 俺は慌てて胸の痛みを抑え込む。



「資材は摂政(せっしょう)殿より、西市の官舎や倉庫のものを融通せよとお許しを得ておる。

 あそこは今や、まともに使われておらぬからな」



 くそ、厄介ごとを押し付けやがって。

 この隠居話、よく考えてみると御息所(藤原淑姫)は菅原道真(すがわらのみちざね)の怨霊が怖いといっているが、おそらくそれだけではないのだろう。

 思うに、一番の理由は、現在の幼帝、朱雀天皇(すざくてんのう)の母である藤原穏子(ふじわらのおんし)皇后が怖いのだ。


 朱雀天皇(すざくてんのう)は八歳。

 そこに藤原淑姫(ふじわらのよしひめ)の子、長明親王(ながあきらしんのう)たちがいたら、皇室バトル勃発で血みどろの大惨劇だ。

 御息所(藤原淑姫)さんは自分の子たちが皇后に敵認定されるのを避けたいのだろう。なんせわざわざ摂政(せっしょう)経由で北家の末端に頼んでるのだからな。


 実家が南家の御息所(藤原淑姫)さん。

 彼女そこまでするのは「淑姫(よしひめ)は出家しましたし、子供たちにも、皇位を狙うような野心は一切ありません。つきましては、北家のお力で、彼女たちが静かに暮らせる慎ましやかな隠居先をお手配いただけないでしょうか」というメッセージなのだろう。


 摂政(せっしょう)側である北家からしたって「さすが北家さんっす!」的な評判と、南家の人間が勝手に怪しい邸宅に隠れ住むよりも、よっぽどお得な提案なのである。


 しかし、淑姫(よしひめ)さん、本当に住むのかねぇ、ダミーハウス的なものになるのかなぁ。


 ……まあ、とにかくだ。

 こんな理由で父から受け継いだ土地を、さらに減らすこととなるのだ。礼として米や絹はもらえるだろうが、なんだか釈然としない。


 ――あ、そうだ。

 イマジナリースマホの地図アプリを見てた時に見つけたのだが、東寺(とうじ)のある場所に「アップデート・ターミナル」と書かれたピンがついてたのだ。


 菅原道真(すがわらのみちざね)の怨霊が怖いから、家を建てる前に参拝させてくれとか言ってみようかな。なんか絶対、普通には入れない場所だろうし……。


 俺は意を決して、それをお願いしてみることにする。

 行ったところで何が起きるかわからない。果たして苦労に見合う対価が得られるのだろうか。


 そう考えるとこんなお願いでいいのか? とも思えてくるが、なぜか行くべき場所のように思えて無視するわけにはいかなかった。


 そのある場所とは、東寺(とうじ)の境内中心部にある「講堂」。

 あの有名な仏像群が配置されている「立体曼荼羅」がある場所なのである。







【第三話・用語解説】


■ 平安用語


・曲物桶(まげものおけ)

 杉やヒノキの薄板を丸く曲げ、桜の皮などで綴じ合わせて作る木製の容器。現代の「曲げわっぱ」の原型にあたる古い工芸技術で、奈良時代以前から日本各地で作られていました。


・前備後守(さきのびんごのかみ)

 「前」は元・前任を意味し、かつて備後国(現在の広島県東部)の国司(守(かみ))を務めていた人物、という意味の呼称。国司としての任期を終えた後も、社会的な敬称としてこの肩書きで呼ばれ続けました。


・大宰少弐(だざいのしょうに)

 大宰府の次官にあたる官職。大宰府は九州諸国の行政を管轄し、対外関係や軍事・防衛にも関わる重要な役所でした。


・一町(いっちょう)

 平安京の条坊制における区画単位。一町は約120メートル四方で、内部は四行八門の方式で32の「戸主」に細分されています。


・更衣(こうい)

 天皇の後宮に仕える女性の身分の一つ。皇后・女御に次ぐ地位で、身分は女御よりやや低いものの、天皇の寵愛を受け皇子女を産むこともありました。


・御息所(みやすんどころ)

 天皇や東宮などの后妃・女性を指す敬称として用いられた語。時代や文脈によって対象となる女性の範囲は異なります。


・参議(さんぎ)

 太政官における重要な役職の一つ。大臣・大納言・中納言に次ぐ地位で、国政の審議に加わる資格を持つ公卿の最下位にあたります。


・西市(にしのいち)

 平安京の朱雀大路を挟んで東西に設けられた官営市場のうち、西側にあったもの。平安時代中期以降、都の発展が東側(左京)に偏ったことで、西市は次第に衰退していきました。



■ 現代知識


・竹酢液(ちくさくえき)

 竹を炭化させる際に発生する煙を冷却・液化して得られる、酸性の茶褐色の液体。強い殺菌・消臭・防虫効果を持ち、現代でも農業や園芸、消臭剤として利用されています。


・版築(はんちく)

 土を層状に突き固めて壁や基礎を作る古代からの建築工法。中国から伝わり、日本でも古代の城壁や寺院の基壇などに用いられた、耐久性の高い伝統技術です。



■ 登場人物/歴史人物


・藤原純乗(ふじわらのすみのり)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 藤原純友の弟。

 本作では、父・藤原良範と地方豪族の娘である側室との間に生まれ、大宰府で育った後、生活の困窮を理由に七年前に純友の家へやってきた人物として設定されています。

 現在二十七歳。体格が良く、純友の家では用心棒のような役割を担っています。

 第三話では、樟脳の精製実験中に現れ、未知の匂いについて純友と九郎(くろう)に尋ねています。


・藤原元名(ふじわらのもとな)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 平安時代中期の実在人物。藤原清経(ふじわらのきよつね)の子で、藤原純友(ふじわらのすみとも)とは父方の親族にあたります。承平年間に伊予守を務め、純友が伊予掾として伊予へ赴いたことと関係する人物として知られています。

 本作では、純友の亡き妻・千代の実兄であり、純友にとって身分の高い義兄として描かれています。


・千代(ちよ)

【本作オリジナル人物】

 純友の亡き妻。

 藤原清経(ふじわらのきよつね)の娘で、藤原元名(ふじわらのもとな)の妹。本作では純友との間に直澄をもうけています。十年前、直澄を産んだ際に肥立ちが悪く亡くなっています。


・藤原清経(ふじわらのきよつね)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 本作では、純友の亡き妻・千代の父であり、純友の義父。

 純友の父・藤原良範(ふじわらのよしのり)の親友であり叔父でもあり、父を亡くした純友の後ろ盾となるため、娘の千代を純友に嫁がせたという設定です。


・藤原淑姫(ふじわらのよしひめ)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 醍醐天皇(だいごてんのう)の更衣。藤原菅根(ふじわらのすがね)の娘で、長明親王(ながあきらしんのう)・兼明親王(かねあきらしんのう)・英子内親王(ひでこないしんのう)・源自明(みなもとのよりあき)の母として知られる実在人物です。

 本作では、醍醐天皇(だいごてんのう)の崩御後に出家し、菅原道真(すがわらのみちざね)の怨霊を恐れて隠居所を求めている人物として描かれています。


・長明親王(ながあきらしんのう)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 醍醐天皇(だいごてんのう)の皇子。母は藤原淑姫(ふじわらのよしひめ)。913年生まれ、953年没と伝わる実在人物です。

 本作では、藤原淑姫(ふじわらのよしひめ)の御子として、その母の隠居所を用意することが純友に土地を譲らせる要求の背景となっています。


・藤原穏子(ふじわらのおんし)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 醍醐天皇(だいごてんのう)の中宮・皇后。藤原基経(ふじわらのもとつね)の娘で、朱雀天皇・村上天皇の母。朱雀天皇の即位後、兄の藤原忠平(ふじわらのただひら)が摂政となった時期の政治状況を理解するうえで重要な人物です。

 本作では、純友の推測の中で、幼帝・朱雀天皇の母として強い政治的影響力を持つ人物として描かれています。


・藤原忠平(ふじわらのただひら)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 藤原北家の公卿。醍醐天皇の崩御後、幼少の朱雀天皇が即位すると摂政となった実在人物。

 本作では、藤原元名が「摂政殿」と呼ぶ人物として登場し、藤原北家の最高権力者として純友の土地問題にも間接的に関わっています。


・醍醐天皇(だいごてんのう)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 第60代天皇。朱雀天皇の父で、藤原淑姫・藤原穏子らを後宮に置いた人物。

 本作では、延長8年に崩御した先帝として登場し、その死後に八歳の朱雀天皇が即位したことが、現在の政治状況の背景となっています。


・朱雀天皇(すざくてんのう)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 第61代天皇。醍醐天皇の皇子で、母は藤原穏子。930年、八歳で即位しました。即位後、伯父の藤原忠平が摂政となりました。

 本作では、幼帝として即位したため、藤原忠平が摂政として政治を担っているという状況の説明に登場します。


・藤原菅根(ふじわらのすがね)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 藤原南家の公卿。菅原道真の左遷に関与した人物として知られ、908年に落雷によって死去したことから、後世に菅原道真の怨霊との関連で語られました。

 本作では、藤原淑姫の父として登場し、純友が「菅原道真」を恐れる淑姫の心理を理解するための背景人物となっています。


・菅原道真(すがわらのみちざね)

【実在人物をもとにしたキャラクター設定】

 平安時代前期の学者・公卿。藤原時平らによって大宰府へ左遷され、903年に大宰府で没しました。死後、都で落雷などの災害が続いたことから怨霊として恐れられ、後に天神として信仰されるようになりました。

 本作では、藤原淑姫が恐れている存在として言及されています。



■ 藤原元名・千代・藤原清経・藤原純友の関係


藤原清経

 ├─ 藤原元名

 └─ 千代 ── 藤原純友

         │

         └─ 直澄



■ 藤原淑姫・長明親王・朱雀天皇・藤原穏子の関係


醍醐天皇

 ├─ 朱雀天皇

 │ └─ 母:藤原穏子

 │

 └─ 長明親王

   └─ 母:藤原淑姫




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※AIを文章の校正・改稿、設定整理、資料調査、アイデア検討等に活用しています。また、一部の本文にはAIが生成した文章を直接使用しています。物語・世界観・登場人物・展開等の創作および最終的な文章の判断は作者が行っています。

※本作に登場する仏教用語・哲学用語・科学用語は、実在する思想・学説・科学的知見を参考にした、作中独自の解釈です。現実の思想・学説・科学的見解を厳密に説明するものではありません。

※本作に登場する歴史上の人物・出来事は、実在の史実を題材としておりますが、人物像・人間関係・行動・出来事などに作中独自の創作・改変を含みます。史実とは異なる部分がありますので、歴史創作としてお楽しみください。



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