第十七話 干上がった犬上川
「……ひどい有様だな」
リーダー、平朝臣守澄が低く唸る。
茹だるような熱気を孕んだ淡海の風を背に受け、数隻の平田舟が犬上川河口の津(港村)へと滑り込んだ。
――ガッ
――ガガ ガッ
船底を擦る鈍い音が響く。
舟はそれ以上進むことができなかった。
本来ならば、豊かな水量で諸国からの舟を迎え入れるはずの港は、無残にも干上がり、ひび割れた川床を晒している。
水運で栄えるのどかな光景であるはずのそこは、異様な場所に成り果てていたのだ。
照りつける日差しの中、腐敗した魚の死骸の臭いが鼻をついた。
泥濘の先、村の周囲には木柵やトゲのある逆茂木が張り巡らされ、まるで野戦砦のようになっている。
柵の内側には、外から逃げてきたとおぼしき難民たちが、虚ろな目で身を寄せ合っていた。
そして至る所に、犬上の郡兵たちが倒れ込んでいる。
泥とどす黒い血にまみれた者、うわ言のように恐怖を呟き続ける者、そういった怪我人たちが、陣地のあちこちでうめき声を上げていた。
舟が浅瀬に乗り上げ、泥水に足を取られながらも上陸した俺たちを出迎えたのは、泥と腐敗臭、そして人々の絶望に満ちた表情だったのだ。
「若、何やら気配が悪うございます。お気をつけを」
腰には帯ではなく荒縄を巻きつけた、熊のような巨躯を持つ僧が良源に声をかけていた。堂衆の棟梁・慈眼房である。
「賊を相手に、ここまで無惨なことになるのかよ?」
我がチームの、剛太が呟く。
元犯罪者、顔の刀傷も生々しい強面だが、彼は残りの四人に合図し、主である平朝臣守澄の通り道を警戒するため、統制の取れた動きで周囲へ散っていった。
それぞれのチームの護衛たちを引き連れ、村の中を平判官、良源たちと共に奥へと進んでいく。
「……惨憺たる有様だな。天の理から外れた邪教に侵された地は、これほどまでに死の穢れが満ちるか」
良源は柿渋を塗った赤茶色の編み笠を「クイッ」と上げてそう言う。
普段は若く、血の気が多そうに見える彼だが、この時ばかりは少し怯えたような表情をのぞかせた。
――ざわ ざわ
――来たぞ
――早く大領を呼んでこい
我らを迎え入れるため、泥と血にまみれた鎧を着た郡兵たちが現れる。
その先頭にいるのは五十を過ぎた屈強な武人だが、その顔には深い疲労と絶望が刻まれていた。
そして俺たちの前に来ると見渡し、縋るようにその場に平伏した。
「よくぞ……よくぞお越しくだされた、判官殿。そして叡山のお上人様。
私はこの犬上郡を統べる大領、犬上稲継。
どうか、どうか我らをお救いくだされ!
此度の凶事、もはや我ら郡兵の手に負えるものではありませぬ」
守澄は何も言わず、ただ静かに膝をつき、犬上の大領の肩に手を置く。
「よく持ち堪えられた。だが、京より検非違使が駆けつけたのだ。もう心配はいらぬ」
そういって犬上の大領を慰める。
――そんな二人を冷ややかに見つめる良源。
「大領殿、面を上げられよ。
当山が下りてきたからには案ずることはない。
……して、長寺を占拠したという怪僧は、いかなる者なのだ?」
良源は犬上の大領に尋ねた。
「はっ……それが、自らを「空海」と……。
乱れた世を憂い、高野山より出てきた、弘法大師の御霊が乗り移った生き仏であると、そう名乗っております……」
犬上の大領は顔を上げ、自分でもおかしなことを言っていると思っているのか、自信がなさそうに報告した。
その言葉に、慈眼房たち堂衆は一様に顔を見合わせざわつき始めた。
――まさか
――高野山で入定
――百年も前の話では
良源は堂衆の動揺を抑えるように右手をあげ、手に持った数珠を「ジャラリ」と鳴らした。
「空海、と……なるほど。南山(高野山)の奥深くで今も永遠の禅定にあると真言衆が誇る開祖が、わざわざ近江の村へ下りてこられたと?
フハハ、しかしその怪僧、ずいぶんと肝の据わった外道だ。東寺の寛朝らがこれを聞けば、さぞ怒りで顔色を変えることであろうな」
良源の言葉に、比叡山の堂衆たちも笑い声を上げる。
「――大領殿ッ!」
その時、堂衆たちの笑い声を裂くように郡兵が飛び込んでくる。
「長寺のある甲良郷から、命からがら逃げてきたという職人の夫婦を保護いたしました。奴らの内情を知っているやもしれませぬ!」
陣の奥から数人の郡兵に連れられ、薄汚れた男女が引き立てられてきた。
犬上郡豊郷あたりに住むというその夫婦は、泥にまみれ、疲労困憊している様子だった。
夫は恐怖に震えながらも何とか妻を庇うように前に立ち、妻は青ざめた顔で伏し目がちに夫の背に隠れている。
犬上の大領は怒りの表情を抑えながらも、静かに顎で先を促す。
それを見た郡兵たちに急かされ、職人の夫が震える声で語り始めた。
「我ら職人は捕らえられ、長寺修築のために働かされておりました。
昨夜、見張りの隙をついて、なんとか妻の手を引き、二人で抜け出してきたのです……」
大領は立ち上がり、その夫婦に詰め寄る。
「空海を名乗る僧は何を企んでおるのだ!
奴について何か知っておることはないか!?」
職人の夫は、その大領の剣幕に驚きつつも答え始めた。
「あ、あれは……およそひと月前のこと。
空海と名乗るあの僧は、南の愛知郡秦川郷に現れました。
そこで日照りに困っていた村人たちの前で雨乞いをし……雨を降らせてみせたのです」
「雨だと?」良源が目を細める。
「ならば、なぜこの地は干上がっておるのだ」と続けた。
「ほんのお湿り程度の、通り雨に過ぎませぬ……。
近隣の我らも雲行きを見ておりましたし、焼け石に水でございました。ですが……」
――夫は顔を歪めた。
「飢えと乾きで極限にあった秦川の村人たちは、あの程度の雨でも『奇跡』だと信じ込んでしまいました。
それから、村では夜な夜な怪しげな儀式が始まったのです……」
「あの怪しげな「まぐわい」を用いた儀式が、近隣で流行り始めたのは、怪僧のせいだったのか!?」
犬上の大領は声を荒げる。
「仏の気を取り込むと称し、男女が入り乱れ、正気を失うような「まぐわい」を用いた秘術を……。
あの儀式に参加した者は皆、目が虚ろになり、僧の言いなりになっていきました。
奴はあっという間に村人たちを取り込むと、狂ったように長寺へ攻め込んで寺を乗っ取ったのです」
「仏の道を外れた畜生行……反吐が出る」
慈眼房が、腰の荒縄をギリッと握りしめて野太い声で吐き捨てた。
犬上の大領は、震える拳を握りしめ、憎悪に満ちた声を上げる。
「しかし、愛知郡の秦川郷から始まっただと……!
判官殿、お聞きになられましたか!
やはりこれは、南の愛知郡を牛耳る依智どもの陰謀に相違ありませぬ!
我ら犬上郡の水源を完全に絶つため、あの怪僧をけしかけて秦川の者を取り込み、我が氏寺長寺を奪ったのだ!」
犬上の大領の目は、極限の飢えと水争いの怨みからくる疑心暗鬼に囚われているようだった。
「大領殿のお怒りはごもっともだが」
良源が、落ち着いた様子で、しかし有無を言わさぬ声でそれを制した。
「空海を騙り、人の理を外す外法を使う者が、ただの土豪の使い走りで納得するとは思えぬ。
それに、まずは根本の邪気を絶たねば、この地は救われまい――
日照りもそれに関係しているやもしれぬぞ」
西の空を見ると、すでに太陽は淡海の彼方、対岸の山並みへと沈みかけ、血のような夕焼けが干上がった川床を照らし出していた。
「陸路を進んでおるはずの、寛朝ら東寺の輩は、いまだ到着する気配はない。
だが奴らも道中、愛知郡の大領から話を聞くであろう……。これは急がねばなるまいな」
犬上の大領が、焦燥を堪えながら守澄と良源の前に進み出た。
「判官殿、お上人様。すでに日は落ちかけております。
あの怪僧が巣食う夜の山に入るのは、自ら死地に赴くも同然。
どうか今宵は、この陣にてお身体を休められよ。
明朝、夜明けと共に我らが先導し、長寺へご案内つかまつる」
守澄は、犬上の大領の熱意を受け取ると、わずかに頷き、静かに応じた。
「……相分かった。剛太、陣を敷け」
「承知!」
剛太が即座に大声を上げ、他の者に夜営の指示を飛ばし始める。
良源も「夜に進むわけにはなるまい。地の利を知る者の言には従おう」と頷いた。
篝火が焚かれ、火の粉が夜闇に舞い上がる中、野営の準備を進め始める。
ふと、あの職人の妻がこちらを見ているような気がしたのでそちらを向くと彼女と目が合う。
彼女はすぐさま深く頭を下げ、再び夫の背後へと隠れた。
なんだろう?
まだ何か言いたいことがあったのだろうか?
――――――――――
重厚な板扉が特徴の、分厚く塗られた土壁に囲まれた部屋。
この中には、ひんやりとした涼しい空気が満ちている。
仄かに漂うのは、どこか心が落ち着く上質な沈香の香り。
俺の作った樟脳と混ざり合い、この空間をさらに爽やかなものとしていた。
「やっぱ、この中はいいよなぁ」
寝苦しい夜とは無縁な、隠世の塗籠の中に俺はいる。
さっきまで犬上川河口の村にいたのだが、あまりにも酷過ぎて……厠に行くと言って『緑青の鏡』の中に逃げ込んでいるというわけだった。
しかも、この時代の農村の厠といえば、川や水路の上に小さな小屋を建てて、そのまま出したものを川に流す方式。
こんな大旱魃の最中、川は干上がっており、強烈な悪臭が漂う不潔なものとなっていたのだ。
そんな所で絶対、用を足したくない。
そこで、この遠征に出る前に、隠世の塗籠をDIYして清潔トイレを作っていたのだ。
しかし、この隠世とは便利である。
DIYとはいえ、道具でトンテンカンする必要はなく『緑青の鏡』に頼んで、内部のエーテルを操作してもらうだけでリフォームすることができるのだ。
自由に構成できるエーテル空間なので、空調の効いた前世の部屋のように心地よい冷気が漂っている。
(エクトプラズムで構成されているので、私が手を加えることも可能です。
完全な物質を変形させるほどの労力は必要ありません)
そう。前世知識を使って、この板扉の向こうに水洗トイレを作ってもらっているのだ。
ウォシュレットは完備だし、永久補充されるトイレットペーパーもある。
水洗トイレに流せば、出したものも含めてゆっくりとエーテルに還元していくシステムもできているので、汚物が溜まる心配もない。
むしろ前世よりも清潔で快適な、超クリーン空間。
今更、木べらで尻の汚物をこそぎ落とす生活には戻れない。
本当に『緑青の鏡』を使役することができてよかったと心から思っている。
さて、無事、用を足した俺は塗籠を見渡した。
隠世の中も、外と時間を合わせているので、夜の帳が降りている。
密室を照らすのは、部屋の四隅に置かれた灯台の火である。
揺らめく琥珀色の灯りが、滑らかに仕上げられた白壁に柔らかな陰影を落とし、幻想的で穏やかな空間を演出していた。
この部屋は一般的な塗籠よりも広く、普通の倍ぐらいはあるのではないだろうか?
調伏に行った際はボロボロとなっていたが、立てた当時はさすが菅原家と呼ばれるぐらい立派だったのであろう。
「葛子さん、ありがとうございます」
俺はお礼を言ってお辞儀をする。
塗籠の中央、色鮮やかな縁取りがなされた畳である茵の上には、人影がひっそりと座っていた。まるであらかじめそこにある美しい調度品のように、彼女は静かに座っている。
その身に纏う薄紫色の袿をはじめとした平安の装束は、小柄な身体にしなやかに馴染んでおり、上品な高貴さを漂わせていた。
さらに目を引くのは、彼女の背を覆い尽くすほどの見事な黒髪。
それは、毛先へと伸びるにしたがって徐々に青々とした植物へと変わり、先端は見事な葛の蔓と葉となって、周囲に広がっている。
――カサッ
蝋燭の柔らかな光に照らされた彼女の手元には、一幅の巻物が広げられている。
細く長い指先を、流麗な墨の文字をなぞるように滑らし、彼女は読書に耽っていた様子だったが、俺の挨拶に反応して、目だけをコチラに向けた。
そう、彼女が『緑青の鏡』の持ち主である葛子だ。
「……」
無言で僅かに頷くと、また巻物に視線を戻し、文字をなぞり始めた。
この隠世は彼女が支配している。
いくら使役をしているとはいえ、ご機嫌はとっとかなきゃな。
(打算ですね)
そこの君、人を小さい男のように言うのは止めたまへ。
こういうのは打算というより礼儀なのだよ、礼儀。
部屋の隅に重ねた、遠征用の食料や荷物を眺める。
ずいぶんな荷物だが、ここに収納しているおかげで、今のところ他の皆よりは、ずいぶん楽に移動できていた。
この隠世がなかった時のことを想像してみるが、俺は外の悪臭を思い出し「ブルッ」と少し身震いをして頭からそれらのことを追い払っていた。
さて、こうしてゆっくりできる空間になったのだ。
外では環境が悪く集中できないので、思考を整理するのには向いていなかった。
これを機に、Yuiさんとも話し合っておきたかったのだ。
(確かにそうですね。ここに来て不穏な情報が出揃っています。
一度ゆっくり分析したほうがいいでしょう)
そう、まずは怪僧の話。
話を聞けば聞くほど怪しい僧。挙げ句の果てには「空海」とまで名乗っているヤバい奴である。
本気で真言宗の連中――東寺のみならず高野山の連中も敵に回すつもりなのだろうか?
それとも『空海関数』を使うために名乗っているのだろうか?
そもそも、そんなに簡単に『空海関数』って使えるものなのだろうか?
(そうですね、普通の人間でも『空海関数』を使うことは不可能ではありません。主に方法は二つあります。
一つは末那識に「空海」に関する情報を蓄えることで、『空海関数』を利用するアプリケーションを構築する方法。
もう一つは、符術などにより『空海関数』を利用したものを作るといったところでしょうか。
ただ、二つともに言えることですが、ノイズが多過ぎて『空海関数』を扱うにしても十分な力を発揮できないということです)
あー、確かに人間、「空海」情報のみでできているわけじゃないしね。
自分の色が入っちゃうから、末那識で出来上がる法力用アプリも思った通りのものができないよね。
(はい、純友様のように、私がスマホを使って直接、末那識にプログラムを組んでいれば、美しいシステムが構築されます。
ですが、人間が肉体から得た情報により末那識に化学反応のようなものを起こしてシステムを作る場合は、そんなに都合の良いものが出来上がることは少ないのです。
例外で言うなら、その『関数』自身と関連づけられた阿頼耶識なら、情報も厳選されており、『関数』をスムーズに動作させるシステムを末那識に構築することが可能です。
例で言うなら、『緑青の鏡』である葛子ですね)
なるほど。だとすると「まぐわい」とか使って儀式やっちゃってる煩悩まみれの人が『空海関数』使ったシステムを作ろうとしてもうまくいくわけないか。
……そうそう、その「まぐわい」使った儀式で洗脳した部隊ってやつよ。そっちの方がヤバくないか?
何か邪教臭をプンプンと感じるのだが。
(俗に言う房中術というものですね。
道教の不老不死を目指す修行法――内丹術と深く結びついた技術です。
『陰陽思想』がベースにあり男性の『陽の気』と女性の『陰の気』を交えることで、体内のエネルギーバランスを整えるというものです。ただ隋や唐の技術であり、知っているとすれば限られた者たちになるといえます)
あー、聞いたことあるかも。
上級貴族の一部で唐からの最新医学で「身体を鍛える養生術」だと実践している人たちがいるとか居ないとか。
俺には関係ない話なので、噂程度で聞いたことある話だ。
(この辺りには、渡来系に起源を持つ支配者や技術者が多いです。
話に出ていた、秦川郷や豊郷一帯は秦氏などの渡来系の血筋が多く住んでいます。
そういった技術が伝えられていてもおかしくはありませんね。
他には、ここ、犬上も、犬上御田鍬という七世紀前半に活躍した遣唐使を祖先に持っています。
――もしかしたら犬上氏の氏寺である長寺には、『房中の秘術』が眠っているのかもしれませんね。
それを狙って、怪僧は長寺を襲ったのかもしれません)
なるほど『房中の秘術』か――
もう長寺が占拠されているということは、この自称空海はそれを手に入れている可能性があるよね。
そう考えると、長寺を攻める際、これからどういったことを考慮しないといけないのだろうか。
(その前に一つお伝えしないといけないことがあります)
うわ、なんだろ、その言い方怖いわ。
(先ほど長寺から逃げてきた夫婦ですが、夫の方には異常は見られなかったものの、妻が纏うエーテルには明確な異常が感知されました。
おそらく、房中術を施されているものと推測されます――)
ええっ!
じゃあ、あの嫁さんの方はスパイってこと?
(その可能性は高いと考えられます)
こ、これは平判官殿に報告すべきなのだろうか?
でも信用されてないしな……そもそもなんでわかるんだって話にもなりそう。
それとも良源殿に知らせるべきか?
彼なら俺が法力を使えることを知っている。
俺が見鬼をしたとでも言えば、信じるかもしれない――
ただ、やっぱこの話は保留だな。
そもそも敵の考えが読めない。
それを図るためにもこの女スパイの動きはいい指標になるとは思う。
平判官殿や良源殿に知らせると騒ぎを大きくしかねない。
彼らは何というか、行動が「ド直球」なのだ。
素直というか、思慮深くないというか、根が真面目なのでスパイがいる、なら捕まえないと、とストレートに考えてしまう。
(バカなのですね)
いやいや違うって。
頭はいいんだよ。だけど何っていうのか……。
――そうだ大物なんだよね。
大物なので小回りが効かないというか。
だから小回りが利く俺が、気を利かせるほうがいいのではないだろうか?
今のところスパイとは言っても知られたら困ることなどない。
横から平判官殿や良源殿を「ブスッ」と刺さないかとか、敵が攻めてきた時に破壊工作をしないかどうかを見張っといたほうがいいだろう。
まあ、皆、明朝から長寺へ乗り込むと言ってるのだ。
まさかその戦闘に連れて行くということはないだろう。
(房中術については、今は解析中です。
どうやら身に纏っているエーテルを、効率的に動かしているように見えるのですが……末那識を使用するというより、エーテルそのものを動かしているので解析が難しいのです。
エーテル体強化によって身体強化、細胞の活性化などを行っている純友様の『EPが上がるほど身体能力が上がる』に近いものを感じます。ただ、悔しいことに、彼方の方が性能は上のようですが……)
声色に、少し悔しさを感じる。
まあ、チートっていっても万能じゃないってことだろう。
(戦闘の様子を見ることができれば、解析が格段に進むはずです。
奴らに会うのが楽しみですねフフ――)
また腕をぶん回し始めた。
まあ、そろそろ外に出ないとな。
この環境は名残惜しいが、いつまでも姿が見えないと怪しまれてしまう。
厠に行くって、どこまで行ってんだよオイって感じになるよね。
俺は再度、葛子さんにお礼を言い、隠世から出るのであった。
【第十七話・用語解説】
■ 平安用語
・長寺【本作オリジナル施設】
犬上氏の氏寺。創作上の寺。
・逆茂木
先端を尖らせた木の枝を外向きに組んで並べた、簡易的な防柵。敵の侵入を防ぐための古代・中世の野戦施設。
・大領
郡司(地方の郡を治める役人)の最高位。「大領・少領」の四等官制における長官職。
・入定/禅定
深い瞑想状態に入ること。特に空海が高野山にて永遠の禅定に入ったとされる伝承(入定信仰)を指す。
・依智
愛知郡一帯を指す地名・氏族名。渡来系氏族「依智秦氏」に由来するとされる。
・房中術/内丹術
道教の不老不死を目指す修行法の一系統。陰陽思想に基づき男女の気を交える術とされる。
・犬上御田鍬【実在人物】
犬上氏から出た実在人物。七世紀前半に遣隋使・遣唐使として活動した。
・袿/茵
袿は平安装束の一種(衣を重ねて着る上着)。茵は縁取りを施した座るための敷物・クッション。
■ 登場人物・歴史人物
・良源【実在人物をもとにしたキャラクター設定】
天台宗チームを率いる若い僧。承平元年(931年)時点で十九歳。後の元三大師・慈恵大師。
・慈眼房【本作オリジナル人物】
比叡山の堂衆の棟梁。腰に荒縄を巻いた熊のような巨躯の僧。
・犬上稲継【本作オリジナル人物】
犬上郡を統べる大領(郡司の長官)。犬上御田鍬を祖とする犬上氏の一族という設定。
・剛太【本作オリジナル人物】
朝廷側のお目付け役チームに属する、元犯罪者の用心棒たちの筆頭。
・葛子【本作オリジナル人物】
『緑青の鏡』の阿頼耶識である女性。橘公頼と嘉子の娘の種子情報で構成されている(第十五話参照)。
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※AIを文章の校正・改稿、設定整理、資料調査、アイデア検討等に活用しています。また、一部の本文にはAIが生成した文章を直接使用しています。物語・世界観・登場人物・展開等の創作および最終的な文章の判断は作者が行っています。
※本作に登場する仏教用語・哲学用語・科学用語は、実在する思想・学説・科学的知見を参考にした、作中独自の解釈です。現実の思想・学説・科学的見解を厳密に説明するものではありません。
※本作に登場する歴史上の人物・出来事は、実在の史実を題材としておりますが、人物像・人間関係・行動・出来事などに作中独自の創作・改変を含みます。史実とは異なる部分がありますので、歴史創作としてお楽しみください。




