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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第八十三話 フェイク?素?

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日23時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜

あれから、数日が過ぎた。


表向きの仕事……小学校の方も二学期に入った。


悠長にしていたらまた、表向きの仕事と内宮の仕事の板挟みの時期になってしまった。


訓練場。


以前は、かけられていた布を取り払い鏡に向かう。


その前でタブレットから曲を流しながら、腕を上げてみる。


右手、左手、大きくボックスステップ。


子供たちに教える時は自分は左右反転して覚えないと……。


右手を上げさせたいなら、左手を……。左手を上げさせたいなら、右手を……。


そうして、曲のどの部分を表現、創作できる場所にするか考える。


2年生だ。そんなに多く創作ダンスをすることは難しい。あとは、一人で考えるもの……


でも、楽しいメロディーの場所じゃないとな…。


私は、バインダーを覗き込みながら振り付けと児童が創作するパートを書き込む。



主任に相談してもいいな。


そうして、もう一度ダンスをした。


自分が覚えないと教えられない。


軽快なメロディを流しながら鏡で動きを確認する。


自分の顔と腕を見る。血まみれだ……。踊っている自分が。


血なんてないのに………。


でも………不思議と目を逸らさずとも見れる。


以前は、見たくなかったのにこんな姿。


何が違うんだろう?


ヒロの顔が思い浮かんだ。


くるりと回る動作をする。


そこにヒロがいた。


表向きの仕事のつなぎを着ている。つなぎは上半身のチャックを開け放たれている。


黒いTシャツがそこから顔を覗かせ、その下の逞しい筋肉に目が行く。



「何してん?」呆れた様子で私を見た。


「運動会のダンスを考えておった。そして、おかえり」私はなぜか恥ずかしくなる。


真面目に仕事しているだけなのに………


「ああ!運動会!だから、踊っておったん?俺はてっきりアイドル事務所にでも応募するんかと思ったわ!」半笑いでそんな事を話してきた。


「とりあえず!おかえり!挨拶は!」


「へいへい、ただいま。で?今日の任務は?」ヒロがやっと挨拶をした。


いつもこうだ。ちゃんと挨拶をしない。


「徳田さんが、伊能君を派遣してくれてる。しばらく、休みや」そう言って私は、水を飲んだ。


「あの、鎖鎌の騎士?」


「そう、私はしばらくお休み。表向きの仕事も運動会で忙しくなるからって」そう言って、バインダーの走り書きを見る。


こんなに教師の仕事だけを考えたの初めてかもしれない。


しかも、楽しんでいる。


「俺は、時々そいつと調査行くんか?」ヒロがそんなことを尋ねてきた。


「そのことについては、ヒロ宛に親展で手紙がきとった。確認して」


「へーい」ヒロが返事をして階段を上がっていく。


鏡を見る。


やっぱり、血まみれのバケモノが写っていた。


大きなウェーブの黒髪。緑の瞳。白い肌。


顔や腕には赤黒い血がべっとりとついている。


私は、緑の瞳を隠す。目を瞑り、目の魔力を黒の布で覆い隠すように……。


そうして、目を開けた。


緑の瞳から黒い瞳の自分がいる。


大きいウェーブの黒髪。少し茶色に緑がほのかに混じった瞳。


不思議だった。そこにいたはずのバケモノは、ただの一般女性になっていた。


この姿のまま。


そどか遠くへ。


それこそ、私のことを知らない土地に………。


そなんことができたら、私は………。


鏡から目を逸らす。目が痛い。魔力を戻す。


学校が始まって目を常に隠している。


私も豊富さんみたいにカラコンにしようかな?


最近、魔力を抑えるのが少し大変になってきた……。


そして、私も訓練所の階段へ向かうべく鏡に背を向ける。


鏡の中の私が、背を向けた私を睨むように目を向けた。


急いで振り返る。魔力を手に込める。


そこには、魔力に手を込めた自分の姿が映っていた。


気のせいか。


今度こそ階段を上がる。


鏡を見ないように魔ランプを消した。


カチリとスイッチが鳴り、部屋が暗くなる。


トントンと階段を上がり地上に出た。


床から伸びてきた血塗られた手を見たような、見ないようなそんな錯覚になった。



◇◇◇



紀州から南海線で電車で一本。


難波にやってきている。今日は、表向きの仕事が休み。


手紙には【この度の紀州ガータロ族違法就労及び組織的関与事案について伊能雅人一等魔尉(いのうまさといっとうまい)に協力して操作をすること。なお、伊達櫻子三等魔佐には、内宮の任務を報告をするが関わらせないことを命ずる。  特殊魔術師編成部隊「オロチ」隊長・徳田恒一一等魔将】そう書かれていた。


俺は、待ち合わせの日本橋に橋を踏み入れる。

電気街は相変わらずの賑わい。


大通りから一本入ると、アニメやゲームの看板が視界を埋め尽くす。ビルの壁面には色鮮やかなキャラクターが並び、店先にはフィギュアや関連グッズのポスターが所狭せしと貼られていた。


行き交う人々の間を歩く。

メイド姿の若い女が谷間を見せたながら「いいかがですかぁ〜」と声をかける。


店の前では、ショーケースを覗き込む者。スマホ片手に地図を確認する者。

目当ての品を見つけたのか、連れを顔を見合わせて嬉しそうに発狂している者。


独特の熱気が、この一角にはあった。


待ち合わせは、この先の交差点のはず……。


ほんまに、ここで合っとるんやろうか?


こんな所、華族の魔術師とは一番縁遠いところやん。


そう思った矢先。


「田中殿ぉぉぉぉぉぉぉ!」


緑色のタペストリー柄のバンダナを頭に巻いている男が俺の名前を叫んでる。

デニムにアニメキャラのTシャツをインしている。

そして、どこで買えるのか不思議なレザーベスト。


顔立ちだけは整っている。アスリート体型のスタイルのいい男が全てのスペックを帳消しにしたファッションでこちらに向かってくる。


「なんや!なんや!」俺は思わす、走って逃げる。


「田中殿ぉ!逃げないで!酷いでござるぅ!」オタクが大きな紙袋をガサゴソと揺らしながらこっちに走ってくる。


こんなやつ知り合いにおらん!


「誰やねん!テメー!」俺が逃げながら叫ぶ。


「酷いでござる!それがし!伊能雅人である!徳田殿の命で浪華にきたでござる!」


「はぁ?」俺は足を止める。


そうして、よく観察する。


クソダサバンダから見える明るい茶髪、魔術師特有の魔力がこもった瞳。


間違いない………


演習で豊富をボコっていたイケメンや。


「伊達殿と田中殿をお手伝いに参ったでござる!」そう言って敬礼する伊能。


行き交う人が反応しない。


流石、オタロードや……。


なぜか調和している。


「ああ、とりあえず調査の話せんとあかんから……場所変えへん?いい店知っとる?」そう声をかけた。


「もちろんでござる!こちらへ!さぁ!田中殿!」そう言って俺を導く伊能。


華族の坊ちゃんや。きっと、丸山さんが行くようなコーヒーショップやろう。


俺は、伊能の後に続いて歩き出した。





「って!なんやねん!ここ!」


目に入るものはピンクと白。フリルだらけの衣装を着た女の子たちが、満面の笑みで客を出迎えている。


「お帰りなさいませ、ご主人様ぁ♡」やけに甲高い甘ったるい声。


何人ご主人様おんねんっ!


その店舗の扉に手をかける伊能。


「ちょっと待て!ここで仕事の話をするんか!」俺が伊能の手を掴む。


「田中殿!ここは浪華が誇る癒しの聖地でござる!仕事の話をするのはここが一番ですぞっ!」そう言って、変なポーズをとった。


俺、もうこいつと仕事したくない。働くなら特別手当が欲しい。


伊能が扉を開ける。


「お帰りなさいませ、雅人様ぁ♡」


店員の一人が、ぱっと顔を輝かせる。


「おおっ!ミルフィ殿!本日も麗しゅうございますな!その髪飾り、新作でござるか?以前の星型もお似合いでしたが、今日の月型も実に……実に素晴らしい!」


「えへへ、気づいてくれたんですかぁ?うれしいっ♡」


「もちろんでござる!拙者、ミルフィ殿の細やかな変化を見逃すわけにはまいりませぬ!」


伊能は胸に手を当て、感極まったように目を潤ませた。


「しかも本日は新衣装……。フリルの重なりと袖口のレースのバランスが絶妙でござるな。いやはや、衣装担当殿には金一封を差し上げたい所存……デュフッ」


「雅人様って、ほんとに細かいところまで見てくれるんですねぇ♡」


「そ、それはもう!ミルフィ殿の魅力を語り始めれば、夜が明けても足りませぬゆえ!」


「きゃーっ、恥ずかしいですぅ♡」


「拙者も恥ずかしいでござるぅぅぅ!」


……なんやねん、この空間。


俺は額を押さえた。


「それはそうと……ミルフィ殿!」伊能の目が光った。


「奥の部屋の手配を頼む。そして、飲み物を仕事の話がしたい」


「御意。伊能子爵様」ミルフィと呼ばれたメイドが他の者にわからないように一礼した。


その声には認識阻害魔法がかけられている。


なんや……。


こいつも化けの皮をかぶるタイプの魔術師か?


「でわ!田中殿!こちらへ!」さっきの緊迫した声ではなく軽快なオタク声になり俺を奥の部屋へ促す。


見た目は、古のステレオタイプのオタクだが、そこはオロチの大物ルーキーと呼ばれるだけあるのかもしれん。


俺は伊能のリュックから見えるポスターが目に入った。


今日は、いろいろ見えるように魔道具の眼鏡をかけさせてもらっている。


メガネに魔力を流す。透視魔法を発動する。


裸の女性が描かれたイラストが見えた。


前言撤回しよう。この姿はフェイクと素が混ざっているのかもしれん。


そう考察しながらオタク子爵様の後に続いた。

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