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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第七十六話 月下、君の記憶を曇らせる

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日23時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜


最近時間守ってなくてごめん。

視界が白銀に変わる。猛烈な暴風で聴覚も奪われる。


その中にかろうじて黒の戦闘服に神器のハサミを携えてた櫻の小さな背中が見える。


「櫻!あかん!」俺は必死に声をかけた。


「殺人を楽しみましょうぉぉぉ!」そう櫻の声が聞こえた。


その声は、とても悲痛で心がここになくて………。


戦場にいる者の声だ。


「…………櫻」


目の前の櫻は般若のような顔で人を切り刻んでいく。


ずるりと崩れ落ちる敵の身体。ゆっくりと雪の上に赤い液体が広がる。


氷の刃が賊に向かって突き刺さる。人の顔から血の気がひけ、土気色に変わり、見開かれた目から光がなくなる。


俺は知っている。そうしないと自分を保てんくなる……。


戦場というゲームで自分を守るために心を殺して目の前の人間を殺す。


俺もそうして生きてきた。そして、殺しすぎた時もあった。


腕のバックルを見た。櫻が前のじゃあかんからと交換してくれたバックル。


俺は三条さんと丸山さんに応援要請を送った。


よし!これで俺があかんくなっても櫻をとめられる人がおる……。


深呼吸をする。


そうして、櫻を見る。


目が見開かれ小刻みに揺れている。口は不自然に歪み、笑顔にも見える。


俺は結界を張りながら駆け出した。


足の魔道具に魔力を込めて、突き進む。


吹雪によって押し返される体をなんとか保ちながら櫻の元まで進む。


「櫻!櫻!戻れ!戻ってこい!」


結界に鋭い氷の刃が当たる。俺は、結界の魔道具に魔力を流す。


櫻があの男の前にいた。


男が腰を抜かして櫻を見上げている。


「あかん!櫻!殺すな!」俺が声をかける。


こいつを殺してしまったら、また被害が増える。少しでも被害を抑えんと!


櫻がこちらをゆっくりと振り返る。


帝王緑の瞳が悲しく揺れた。


吹雪が弱まる。櫻の瞳から光が失われていく。


「…………」


「櫻!戻ってきたか?」雪をかき分けながらそう声をかける。


櫻が俺の顔を見る。


櫻の手が小刻みに震え始めた。持っている神器の要ネジがガクガクと震える。


この一瞬でここまで脆くなるんか?櫻の心で何があった。


「……櫻?どうした?」俺が手を伸ばす。


櫻が後ずさりをして俺から逃げようとする。


あかん。敵と混同しているのかも知れやん。


「大丈夫や!俺や!ヒロ!ここは紀州で櫻は教育伝達者!な?覚えているか?」


「紀州……教育伝達者……?」櫻が顔を上げる。


「そうや。俺のことも覚えているか?ロッキーのことも?」


正常な異常反応。


櫻は本来……戦場にいてはいけないタイプや。伝達者も騎士団も引退させてやりたい……。


「ヒロ…」櫻の瞳から大粒の涙が溢れてきた。


そうして、自分の周囲を確認しはじめる。


雪に覆われたガータロの集落。櫻の周りに転がっている死体。


そして……。「おとん?……おとん!」子供のガータロが櫻が殺したあのガータロの首を持っている。


櫻はそれを見て口をワナワナと震わせた。


膝から力が抜け、雪の上に崩れ落ちる。


神器のハサミが、かすかな音を立てて雪に触れた。


「どないした!田中君!」空間移動魔法で三条さんが現れた。


三条さんに説明しようと櫻から顔を逸らす。


櫻の魔力が薄れていく。


まるで、そこにいたことさえ消し去ろうとするように。


「櫻!」魔力制限と認識阻害魔法を使ってるな。


しかし、爪が甘いのか雪の上に足跡が残っている。


「田中君!追いかけてくれ!ここはどうにかする!」三条さんに声をかけられたので俺は櫻を追う。


「お願いします!その男が主犯です!」そうして、俺は影に消えかけてる男の足に銃弾を打ち込む。


男の顔が歪み、意識を逸らすことを成功した。


その隙をついて、捕縛魔法がかけられる。


捕縛魔法がかけられた方を見ると丸山さんがいた。


「なんか知らんけど!行け田中!」そう声をかけてくれた。


本当は、俺やなくて丸山さんがええんやけどな……。


「はい!」頭の中のウザいツッコミを無視して丸山さんに返事をする。


櫻の足跡がバイクの方まで続いている。


Apeのエンジン音が聞こえた。


咄嗟にネズミの魔道具を出して櫻のApeに付けた。


バイクのシートの後ろに白いハツカネズミの魔道具が張り付く。


俺もR -15にまたがりセルを回した。ゴーグルをつける。


ハツカネズミが仕事している。櫻がどう移動しているのかわかる。


エンジンが冷えてセルが回りづらい。何回かスターターを回したらエンジンがかかった。


バイクを浮かび上がらせ、櫻を追った。


月が綺麗に輝く。さっき…。ついさっきの会話を思い出す。


ー俺と一緒に大和を出て別の国に行くか?ー


自然と出た言葉が自分の胸を呪いのように苦いもので包んでいく。


「言葉とは“呪”に変わる。よく吟味して発言したまえ」そう声をかけてくれたAISの先輩がいたのを思い出す。


月明かりに照らされた紀州の山々を飛ぶ。


眼下には黒々とした山の稜線。そこをハツカネズミの魔道具から送られてくる位置情報を確認しながら進む。


ーーーー。


AIS・警備会社の社宅。


医療班と事後処理班がつまらなそうに俺の向かいの部屋を出入りしてる。


「Yo,what went down?!」何が起きたか声をかける。


「He offed himself. Guess he came to his senses at the worst possible time, huh? Watch your back too, puppy.」黒人の職員が俺の方を見ながら小馬鹿にしたように話す。


どうやら向かいの部屋の職員が自殺したらしい。


「Oh, gee, thanks for advice.」そう返して強くドアを閉めて自室に入る。


ーーーー。


戦場に長く身を置きすぎた奴が、帰ってくるとこうやって自ら命を断つ奴が一定数いる。


向かいの部屋の男もそんな奴だった。優しくて、正義感が強い……そして、責任感もある。


櫻のように。俺は櫻に死んでほしくない。


どんな言葉をかけたらわからん。でも、一人にしては行けないことだけはわかる。


アクセルを回す。速度を上げる。


櫻を追いかけた。バイクのエンジン音だけが響く、月明かりの中で。



◇◇◇



ぽっかりとスポットライトが当たったようにそこだけ月に照らされているようだった。


苔むした岩壁は黒く溶け落ちたように見える。木々の葉は月明かりを受けて白銀の毛並みを思い出させる。


足元では湿った土と落ち葉が、踏むたびに静かな音を立てる。空気は冷たく、深い緑の匂いと、絶え間なく落ちる水の気配だけが濃く立ちこめている。



目の前で滝が落ちていた。


私は、その滝が落ちてる淵を見てる。


バイクの音がした。

ガチャリとギアをニュートラルに戻す音が滝が流れる音と共に辺りに木霊す。


エンジンが切られて私の側にバイクから降りた人物が近づいてくる。


「……櫻」ヒロが声をかけてきた。


「………」返事をしない。出来ないのだ。


ヒロが無言で私の側に来た。

そして、タバコの箱を出すと一本を自分の口に咥え、もう一本を私に咥えさせた。


ジッポを擦って私に火を貸してくれる。


落ち着くために素直に火を借りてタバコに火をつけた。


「座ろうや」そう言ってヒロが敷物を出してくれた。


「アンタって見かけによらずマメよな」


「アンタのほうが見かけによらず雑なんや」


そんな会話をしながら滝のほとりに座る。


「………なんで来てくれたの?職務放棄したから?罰則するため?」


「ちゃうわ。俺らはバディやろ。相方になんかあったら支えやんと」ヒロが煙を吐いて話す。


そんなヒロを横目で見た後に己の持っているタバコの火を見る。


自分のタバコとは違う味……。


吸ったことがない銘柄なのに何故か知ってる。不思議だ。


タバコの火が風に揺られて赤くゆらめく、その光が大きくなったり、小さくなる。


ここで、殺した白狐の亜人の魔石を思い出した。


「私が、奴隷紋をはじめて見たのはここなの……なんで、ここに来たんだろ……」


「櫻がわからんなら、俺はもっとわからん」そう言ってヒロはタバコを吸ってる。


携帯灰皿に灰を落とす。それを私に差し出してきた。手の中のタバコの灰を落とす。


「吸いや。勿体無いな」


そんな言葉をかけられ、タバコに口を付けた。


ガツンと重い。ヤニクラがおきる。


「重いな…タールいくつ?」


「8」


「私、普段5だから重いや」そう言ってタバコを見た。


「標準語で話すなや。いつも通り話せ。気持ち悪い」ヒロが片目を細めて悪態をつく。


この表情をする時のヒロは、自分が考えてることを相手にどう伝えていいか迷ってる時の顔だ。


ロッキーがいたら暴露してるかな?


「ねぇ、ヒロ……遠くに行って知らない土地に行ったら…。何もかも忘れるのかな?」


「そうはならんやろ。未練が残ってグダグダするだけや」


「へぇ〜そうか」そう言って、私はタバコを咥えて天を仰ぐ。


あの時と似たような星空が見える。


「ここでな……白狐の亜人の女性を殺したんよ。」自然とそう言葉が出た。


「その人な。殺してくれって奴隷紋で……九尾の狐に変わりつつあったから……」


ヒロのタバコを吸う音が煙と共に滝に消えていく。


「それでな……息子達の縁をきりたくないって………」


「私は……その人の息子に恨まれてるやろうな……」そう言って、自分の体を縮めた。


「どうして、そう思うん?」


「だって…殺しちゃったし…奴隷紋から解放できなくて……それに……」


「遺体が魔石にかわっちゃって……」そこで涙が自然と溢れる。


「お日様みたいに綺麗な魔石で……っ!」嗚咽が漏れる。


「その魔石見た時にっ!……尊術派にもっ……大和側にっ……も、渡しちゃいけないって……」涙で上手く説明出来ない。


私は、ヒロと一緒に過ごすようになって自分が酷く泣き虫なことに気がついた。


そんな自分が嫌だ。泣きたくない。


でも、泣いてしまってる自分がいる。


滝壺を見る。


「魔力がっ…高いから…魔術師から見たら…魔力っ……抜き取って……それで…それで……」


「もう、ええ。もう、ええよ。話さんで」ヒロが私を抱きしめた。


「聞いて……お願い……」


ヒロの琥珀色の瞳をみながら私はそうお願いした。


「だからな……ここに封印したん。その人の魔石を……息子さん達にあわせやんと……こんな冷たい滝壺の中に……」私はそう言い終えた。


そして、ごうごうと打ちつける滝壺の下に眠る白狐の亜人の女性のことを思う。


「そっか…おおきに」ヒロが静かにそんなことを言う。


「なんで、ヒロがお礼言うんよ?」私はヒロの顔を見る。



ヒロの目から一筋の涙が流れてる。



「その息子さんならそう言うと思って……知らんけど」そんなことを言ってきた。



「また、知らんけどかい…いい加減やな」そう言ってヒロの顔を改めて見つめた。


ヒロの顔が近づく、私も抵抗しない。


唇が触れ合った。


強引さはない。お互いの温度を確かめるように、私の口が自然と開く。


ヒロの吐息を感じる。


自然と深くなっていく。


しばらくして、唇が離れた。


「ヒロ…ごめんね」


ヒロが困惑した顔になる。


そんなヒロの顔に手を置いた。


この人の温もりを、忘れたくない。


もう少しだけ、このままでいたい。


そう思ってしまった自分がいた。


だからこそ、これ以上はいけない。


朧記魔法(おぼろきまほう)を使う。


ヒロとのキスは私の中だけの思い出としてしまいこんだ。



頑張ってさ!スラング調べて英文作ったんだらさ!みんなも頑張って英訳しておくれよぉ!


本編では中国語とドイツ語で頭パーンだし、こっちはこっちで英語で頭パーンだし……。



母国語である日本語もままならい誤字脱字マスターのぽんぬの頭のキャパシティを超えそうです。

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