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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第七十三話 空飛ぶApe

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日23時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜

朝一の総合病院は、すでに多くの人がロビーにいた。


正面玄関はガラス張りで、吹き抜けになった広いエントランスには、外から柔らかな朝の光が差し込んでいた。


自動受付機に人々が並び受付を済ませている。


私は、指定された通り、まっすぐ受付へ。


「学校共済から来ました。人間ドックの受診お願いします。」


「人間ドックですね。こちらの病院にかかられたことは?」にこやかに受付の女性が話しかけてくる。


「ないです」


「では、診察券を発行するのでこちらの記入をお願いします」そう言って渡されたバインダー。


名前と住所、生年月日などを手早く記入する。


「お願いします」そう言って手渡す。


「では、3階検査室に特別室が用意されているのでそちらへ。赤い線を辿るとわかります」そう説明された。


私は、足元を見る。赤い線がエスカレーターへと続いている。


エスカレーターに乗り三階へ。


あかん、病院のエスカレーターだからゆっくりすぎる。


私は、階段に切り替えて歩く。


そうして、三階へ行くと線を辿って奥に進む。


そこでは、同じ職業なんやろなぁって人々が一箇所に集められていた。


紀州で知り合いは、ほとんどいないのでみんな知らない顔だ。


カウンターがある。そこにも受付の人が居るので声をかけた。


説明された通り、荷物をロッカーの中に入れて病衣を着る。


ファイルに書かれた順番で回る。


「血液検査が空いているのでそちらからお願いします」そう声をかけられたので血液検査へ。


若い看護師が座った。


あぁ……私は年配の看護師の方がいい。


「アルコールアレルギーはないですか?」


「……はい」


「では、腕を出してください」そう告げられた。


「どっちがいいですか?」私は両肘を見せた。


「うーーん!」看護師が唸る。


そう、私の血管は見えづらい……点滴を打つ時も手の甲にされることの方が多い。


一度、「小児科から針を借りてきますね」っと言われたこともある。


「ちょっとキツく絞めますよぉ〜」そう言ってギュギュに絞められるベルト。


赤黒くなる腕。見えぬ血管。叩かれる肘。


私は、後ろにいる年配の看護師に目でSOSを訴えた。


そっと目を逸らされる。


なんでだ!よく見ると採血をしている看護師はみな若い。


その後ろにベテランそうな看護師。


……………。


これ、実験台じゃない?


うぅ〜、これも医療従事者が育つためだ…。


私は、人より時間がかかったが採血を終えた。


身長や体重など様々な検査をこなしていく。


医師の問診の番がきた。


医者が私の過去の健康診断を見る。


「………血圧が年齢の割に高いですね。飲酒も喫煙も毎日ですか?」医者が私の問診を見て尋ねる。


「はい」


「お酒は一日どれぐらい?」


「9%のハイボールを2リットルぐらいですかね?」


「はぁ?飲み過ぎです!よく次の日に残りませんね」


「そんな体質なので」嘘です。本当は朝、回復魔法でお酒抜いてます。


「タバコは?」


「学校では吸えないので5、6本ですかね?」


「そちらは辞めれそうですか?」


「無理です。残業がなくなるなら考えます」そう太々しく話す。


医者がデータを見た後に私を睨む。


「貴方ね!以前の血液検査でもガンマの数値高かったの!このままだと30後半にガクッときますよ!」そう言われた。


「その時にはアルコールの量を減らします」足を組んで言い返す。


倒れるまで飲んでやる!!!


ため息をつく医者。


「あなた、伝達者ですね?」


「ええ、そちらも医療伝達者ですね。魔力でわかります」それに防音結界とね。


「ここで魔力量を計ります。手を出してください」医者がそんなことを言うと簡易魔力測定器を出してきた。


「これだと私の魔力測ることできませんよ?」眉を顰めて説明した。


「え?」


「私は、特級魔術師です。帝都の測定器じゃないと壊れます。壊していいですかぁ?」そう言って笑いかける。


「あ!伊達櫻子さん………では、今度帝都に行った時に測っておいてください。こちらからそのように伝えておきます。以上で問診を終わります」


「はい!ありがとうございましたぁ〜」そう言って問診室を後にした。


私はファイルを見て次の検査場まで向かう。


ガンマか〜酒は辞められない。タバコは……まぁ、辞めてもいいけどなぁ………。


そんなことを思い、廊下を歩く。


視線を少し上げる。妙だ。誰もいない。


先ほどまで人間ドックを受ける人々が長椅子に座っており、次の検査に行く者とすれ違っていた。


なのに今私一人だけ?


魔力探知をする。


妙な魔力が廊下を包んでいる。


一つの扉から強い魔力を感じた。


私は反射的に腰に手を伸ばす。神器を持ってないことを思い出した。


「チッ!」強く舌打ちをする。


認識阻害魔法をかけて、魔力制御もする。


魔力制御により、丹田のあたりに石ができる感覚になる。


嫌いなんだよな……。ヒロは魔力が高いのによく抑えられるなぁ。


怪しい魔力を放っているドアの前に行く。


ゆっくりと透視魔法を使う。


大量のシーツが見える。ドアに「リネン室」と書かれている。


私は、見たことが信じられなくてドアノブに手をかけようとする。


「番号札13番の方!」そんな声が聞こえた。


周りを見る。病衣の人々が行き交い、スクラブ姿の看護師が歩く。


静かだが、どこか活気のある検査病棟の風景。


さっきのはなんだったんだ?


私はトイレに行き見られないように魔法を解いた。


ゾクリと舐め回すような視線を感じた。


後ろを振り返る。トイレの鏡に私が写っているだけだった。



◇◇◇



今日の訓練は紀州巡礼道で行おうと提案した。


俺はマジックバッグからApe50を出す。


青いボディのそれを櫻がじっと見つめてる。


「これどうしたの?」


「俺が、魔石で動くようにエンジンを組み替えた」


「へぇ〜すごっ!」櫻が呑気にそんなことを言う。


「ガソリン代節約や。櫻、これに乗ってみぃ」


「はぁ?私バイクの免許持ってへん!」櫻が頓珍漢なことを話す。


「これは50ccや!自動車の普通免許で乗れんねん」


「え!そうなん?こんな形のバイクってバイクの免許ないとダメなんじゃないの?」


「なんで、なんでも知っておるのにそこだけアホなんよ……」ため息が出る。


「だって、興味ないもん」


まぁ、女子は大概そうよな。


俺がApeに跨った。


「ええか、エンジンをこうやってかけるんや」そう言ってキックスタートした。


「何これ!かっこいい!」櫻からそんな歓声が上がる。


普段賢いのに今の知能指数どうなってんねん。


「櫻、ちょっとこっちきて、これがクラッチ」そう言って左レバーを握る。


「え?ブレーキちゃうの?」


「………チャリとちゃうんや」


「ブレーキはこっち。右手がフロントブレーキで右足がリアブレーキや」


「え?どっちがどっちって?」


「右手が前のタイヤのブレーキ!右足が後ろのタイヤのブレーキ!」俺の語気が強くなる。


「じゃ、足の方のブレーキ使った方が安全に停まれるんやな」櫻が顎に手を乗せながら話す。


その辺は賢くてよかった。


「………で!右手のスロットルを回す」


ブォォォォン!っとエンジンが回る。


「おぉぉ!」アホ面で感心している櫻。


「左でクラッチをしっかり握って左足でシフト下げる。」ガチャリとシフトを下げて一速にする。


「ほいで、少しずつクラッチを緩めて、スロットルを回して動かす」俺が少し走らせる。


そして、ニュートラルにシフトを戻してエンジンを切った。


「やってみぃ」そう言って櫻を見る。


「え?」緑色の目をまん丸にしてアホ面を下げている。


「乗りなよ」


「無理だよ」


「なんでよ?」


「乗れへんもん」


「まだ、乗ってないのに?あ!櫻子姫様には無理でしたかぁ?」俺が芝居がかった言い方で煽る。


「はぁ?」櫻の目が細くなる。


よし!食いついてきた。櫻は負けず嫌いだ。こうすると乗る。


「姫様が好きなアルビオンの魔法少年の映画みたいな空飛ぶバイクにしたのに残念でしたぁ!この魔道具はお蔵入りにいたしますねぇ!」そう言って俺がバイクをマジックバッグになおそうとする。


「待ちいや!」大きな声で櫻が静止してきた。


しめしめ、乗ってきたな。


「ほんまなん?ほんまに飛べるん?」櫻の帝王緑の瞳が煌めいている。


「まぁ一応な。でも、櫻……飛行魔法使えるやん」俺が呆れて話す。


「それはそれ!これはこれやん♩」そう言ってApeに跨る。


「どうやって飛ぶの?」狸のような目が好奇心で輝いている。


「あかん。まずは普通に走らせぇ」


「えー……飛びたいなぁ」


「途中でエンストしてバイク落ちたら直してくれるんか!」俺が一番恐れていることを話す。


「うー……えっと、エンジンをかける。」そう言うとキックアームを蹴る。


うんともすんとも言わんバイク。


「壊れた。」


「………キックする場所が悪いんや」


「どういうこと?」


ここからかいな!俺はイーとなってきた。


「…ゆっくり踏んでみぃ。」


櫻がゆっくりキックアームを踏む。


「重いところあるやろ」


「あぁ、あるな」


「そこに力をグッと入れて押し込む形や」


櫻がグッとキックアームを踏んだ。


エンジンがかかり、振動するバイク。


「ヒロ!かかった!」子供のようにはしゃぐ櫻。


「よかったわ。それでな」


そんなやり取りをしながらバイクの運転を教えた。


数時間後。


俺は、飛行魔法で櫻のバイクを追いかけている。


「ふん・ふん・ふんふ・ふん♩」櫻は映画のテーマソングを鼻歌を歌いながらバイクを飛ばしている。


合法ロリババアが本物のロリに戻っている。


「ヒロ!これ楽しいよ!すごいすごい!」楽しそうにバイクを旋回する櫻。


一回コツを掴むと早いやつやな……相変わらず。


「そうですか。よかったですよ。櫻これで通勤したらどうや?」そんな事を提案する。


「え!学校に飛んで行ったらあかんやん」


「ちゃうわ!普通に地面を運転していけ!」


「あ!そっか!少しは寝れる時間増えるかな?」そんな事を話してくる櫻。


「それは、知らん。もう降りようや。十分やろ」


「はーい」


紀州巡礼道の杉の森の間。


月明かりがバイクに跨った櫻を照らす。


ポニーテールが風になびく。


櫻の楽しそうな横顔が俺の目を引く。


こんな時間がずっと続けばええな。でも、いつか俺の手から離れてしまう。


出来るだけ考えないようにしたいが、その時が来るのを覚悟しないといけないとも思った。

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