第六十八話 リアルな夢
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
毎日23時更新!
時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
ーーピコン!
スマホのメッセージアプリの通知が鳴った。
【櫻子はんたちの軍服のデザイン。ほんまにヒロにまさせてええの?】
豊富からそんな連絡が来た。演習の賭けに勝った俺は櫻のオリジナル軍服を作る代金を豊富持ちにすることに成功した。
ついでに小野兄妹の軍服の代金も持ってもらうことになってる。
櫻の性格だ。自分一人だけだと申し出を辞退するだろう。
そんなことを思い出しながら、ホテルのベッドの上でそのメッセージを見ている。
隣にはぐったりと櫻が力尽きて寝ている。
スースーと寝息を立てている櫻の横顔を覗く。
髪の毛は乱れ、猫耳がズレている。
とりあえず、猫耳を取ってやることにした。
「うぅん。」と櫻が寝返りを打つ。
櫻を見る。俺の魔力が混じっている。あまり良くないな……。
櫻の頭を撫でながら自分の魔力を抜く。そうして、気が付く。
俺?魔力高なってない?前より?自分の手を見る。
色んな女と寝たことあるがこんな現象初めてだ。
櫻も魔力量が高くなっている気がする。なんだ?この相乗効果?
でも、考えても仕方がない。櫻が気がつかんかったらええやろ。
難しいことを考えないようにメッセージアプリを操作する。
【俺の知り合いに美容系関連の奴がいる。そいつに任せるわ。悪いようにしやんからまかしとき】
そう、メッセージアプリを送信した。
「………っヒロ……」櫻が目を覚ます。
「どしたん?」様子がおかしい。
「なんかっ!体が変なんっ!」櫻の目が潤む。
魔力が溢れそうになっている。
しかし、いつもの凍てつくものと違う。
暖かく、清らかな魔力だ。
俺は眉を顰めた。
「櫻。神器を見るで」そう短く言い、ベッドから立ちあがろうとする。
「あかん。いかんといて……。」櫻が肩で息をしている。
頬が紅潮し、艶っぽさが増している。
コンカフェババアが自衛官をメロつかせていた方法を思い出す。
性行為もある意味相手の魔力を操作するのと同じだ。
俺は急いでマジックバッグから自分のゴーグルを出した。
櫻の体に俺の魔力の糸が絡まり合っている。
しまった!やり過ぎた!
「ヒロ!ヒロ!」櫻の目の焦点が合ってない。
そうして、櫻が俺の体に乗る。
艶っぽく頬を赤らめ、苦しそうに息をしいてる。
「櫻!すまん!応急処置や!」そう言いながら俺は櫻の口に自分の口を重ねた。
次の日。
櫻は、そのことを覚えていなかった。
よかったような……。悲しいようななんとも言えん気持ちになってしまった。
でも、これでよかったんだ。そう自分に言い聞かせた。
◇◇◇
次の日……。私たちは神辺に行って麗乃さんに会う約束をしていた。
軍服を新調するのに美容師をしている麗乃さんにアドバイスを受けるためだ。
高機能で、魔力を広範囲に扱えるよう、色々なデザインを考えてくれたらしい。
「櫻子ちゃんに似合うようにちゃんと考えたからね♩」と麗乃さんからメッセージが来ていた。
急な依頼なのにありがたい。
麗乃さんは今は美容師だが、デザイナーも目指したことがあるらしくその辺は得意らしい。
そして、私が伝達者で元華族ということも驚きながらも受け入れてくれた。
今日は、豊富家で小野兄妹と軍服新調会議がある。お盆休みも今日で最後だ。
みんなで集まれるのも今日ぐらいだろう。
麗乃さんを迎えに行くのにヒロが車を運転する。
………ヒロが見れない。
昨日……妙にリアルな夢を見てしまった。
ヒロとキスをした夢だ。
確かにヒロは好きだ……。
でも、私はキスの経験もないのにあれほどリアルな夢を見るぐらい妄想しているのか?
唇が触れたと思ったら、暖かなヒロの舌がするりと口の中に入ってくる。
食べられるかと思うくらい深い。ヒロの舌の動きに合わせて自然と私も舌が動く。
思い出すな!!!!!!
耳が熱くなる。
私は……とんだ変態になってしまったようだ。
自分の腕を摩る。
「なんや?櫻。寒いのか?エアコン緩めるか?」ヒロに声をかけられる。
「ひゃ!いや、そんなことない!」変な声が出る。
「ほんまかいな?ノースリーブやし……。それになんなん?そのスケベニット?」そう言って私の胸を鷲掴みするヒロ。
「やめえや!ダメ狐!」私が反射的に悪態をつく。
ふーふー………。いつも通りで良かった。
今日のヒロは豊富家に行くから、濃紺のシャツに黒のテーパードパンツだ。
ラフな格好もいいけど、このかっちりした感じもかっこいいな。
私は、ノースリーブのサマーニットに黒のハイウエストのワイドパンツ。
黒く細いサスペンダーをつけている。
髪の毛も低めのポニーテールにした。なんとなく、今日は地味でいたい……。
そうこうしているうちに麗乃さんと待ち合わせした場所にきた。
大量の荷物を抱えた麗乃さんが車に乗り込む。
「櫻子ちゃんおはよー!また、可愛くなった?」そんな挨拶をされる。
今日も麗乃さんは、かっこいい。
アンシンメトリーにセットした髪の毛。
センスいいオーバーシャツ。それに黒のワイドパンツ。シルバーのアクセサリーがアクセントになっている。
「なんや、麗乃…。その荷物は?マジックバッグに入らんのかい?」ヒロがそんな悪態をつく。
そうして、浪華に向けて再び車を走らせた。
「これから、華族の顧客を取りに行くのよ!準備は抜かりなく行かなきゃ!!マジックバッグが足りやんわ!」麗乃さんが拳を握って話す。
「豊富さんのところの筆頭側支えの西林さんに気に入られたらいいですね」そんなことを私が話す。
「絶対気に入られるわ!そうして、実家の顧客をゲットよ!」
「え?」私が小首を傾げた。
「なんなん?大夢!ちゃんと話してないん?」麗乃さんが呆れる。
「麗乃から話せや」
麗乃さんが一つ息を吐いた。
「私の実家は呉服店なんよ。でも、庶民向けなん。ほら、内宮の和洋折衷の服装。あれ流行らせたん。うちのひいおじいちゃんなん。」そんなすごい事をサラッと言う。
「ホンマですか!?私、あのスタイル好きです!動きやすいし!大和らしいし!子供の頃、好んで着てました!」
内宮にいる時に着物にならんといけないのがどうも窮屈だった……。
「ホンマ!ありがとう♪でも、まだ華族の方には広まってないでしよ?私のお姉ちゃんが継いだんだけど…営業をかけられへんって…」そんな事を麗乃さんが言う。
あぁ、多分、側支えに弾かれちゃうんやな……。
基本、華族は保守的だ。
「でも……増えてきてますよね?その…和洋折衷スタイルの服装?」私がそんな事を言う。
「あぁ…。それなぁ」麗乃さんが言い淀む。
「櫻は、はっきり言わんとわからんでー」ヒロがそんな事を言う。
「もう!ほんと!デリカシーない男!櫻子ちゃん!こんな乱暴な男捨てて私と付き合おうよぉ」そう言って、後部座席から私の肩に手を置く。
「そんなこと言われてもっ」どんな感情を持ってどう返していいのかわからない…。
「ええ…いいやん。」麗乃さんが私の二の腕を触ってくる。
と!赤信号になったところで、急ブレーキがかかった。
「あ!ごめーん!」ヒロがニヤリと笑いながら車を停車させる。
麗乃さんが思いっきりヘッドレストに顔を打ち付けている。
「シートベルトしやんのがあかんのやぁ!俺が捕まるから早くシートベルトしぃ!」ミラー越しに挑発的にヒロが麗乃さんを見た。
「なんなのよ!あんたなんて!小さい頃ちっちゃくて女みたいだったのに!」
衝撃的な事実を知る。
「ええ!ヒロがぁ?小さくて女の子ぉ?」理解が追いつかない…。
「せやで、このゴリラはそれが嫌でゴリラに変身したんや」麗乃さんがそんな事を言う。
「二人ってそんな昔から一緒なんですか!」そう言うとまた、麗乃さんが下を向く。
「ホンマ!大夢って!昔からちゃんと説明せんなぁ!周りに!」
「したい奴がしたらええねん!」
「櫻子ちゃん。このゴリラがごめん。私ら一応、再従兄弟や…親戚なん」そう、力なく話した。
「あぁ!だから魔力が若干似てるんですねえ!二人とも職人だから似てるのかなぁ?って思っていました」私が出会った時の疑問を話す。
「櫻子ちゃん。そんな事わかるん?」麗乃さんが驚く。
「はい。私は特級魔術師なんで」そう言ってニヤリと笑って見せた。
「櫻子ちゃん悪い顔も可愛い!キスしていい?」
“キス”その単語に夢の事を思い出す。
顔が赤くなるのがわかる。
何故か感触を思い出してしまう。
自分のタバコと違う味。
そこにまた急ブレーキが踏まれた。
「あ!ごめーん!」ヒロがルームミラーを睨む。
麗乃さんが再びヘッドレストに顔を打ち付けた。




