第六十五話 どちらが追われている?
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
毎日23時更新!
時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
豊富さんの職質はかなりあっさり終わった。
私たちは、細い路地裏に進み豊富さんのメモを見た。
魔力を流さないとわからないタイプだ。私は魔力を流す。
【マッチングアプリを介して、失踪者が複数起きてる。
神辺の事件と似ている。浪華警察内部では家出として処理をしているが、失踪者に共通点がある。
全員紀州出身者の女性。出会った男の特徴はバラバラ。西林の解析結果で印象が違うだけで同じ男。
見かけたから虫をつけた。伝達者のバックルで追える。写真もバックルで】
そう走り書きしてあった。
私はバックルに魔力を通す。
ホログラムのように男の写真が映し出された。
確かに印象が薄い男だ。どこにでも居そうな顔。
「耳の形を見せてくれや」真剣な声でヒロが話しかけた。
私は写真を動かしながら耳の形を見せる。
「これでわかるの?」
「俺も得意じゃないがな…。櫻も覚えておいた方がええ。ここ、耳が少し尖っている。それに……。結構鍛えているな。柔術か」
「なぜ、そう推測する?」
「柔術は畳の上で鍛える。耳が畳にどつかれてこんな風に潰れるんや。櫻はこの男とは体術でやり合うのやめた方がええで」
ヒロがそんな分析をする。
「なるほど……。私も覚えよう。他に工作員が人物を見るところは?」
「目の間隔と瞼の形。実物を見たら足の捌きや」
また、勉強することが増えたな……。
「わかった。ヒロ、あのポンチョ出してくれない?」
ヒロがポンチョを出してきた。
それを着る。また、髪の毛を素材採取されてた…。
腰のファンにそれをセットする。ポンチョの中が涼しいくなる。
「ヒロもバックルで男追えるやろ?」私が声をかけた。
「俺のは、身分証のみや。その他の機能はついてやん」
「嘘やん」
そうして、ヒロのバックルを見る。本当に身分証だけだ……。
私は頭を抱えた。こっちもどうにかしないと……。
こんなちっさな格差が腹たつ。
「こんなん、助けも呼べやんやん……。バックルの申請しなおすわ」私がそんなことを話した。
「ええよ。魔道具でどうにかするわ」
「それじゃあかんやろ……」私が力無くいう。
そうして、バックルに魔力を流して該当の男を追う。
ヒロが足に魔道具をつけた。
私たちは、飛行魔法を使う。身体を浮かべて男に近づく。
身体強化魔法で視力を良くして男を探す。
通行人の耳をよく見る。
見つからないな……。
「おったで」ヒロが話す。
「どこ?」
「あっこ、ネカフェとかホットヨガのビルの前」
私はヒロに教えられた建物の付近を見る。
眉を顰める。
「今は、ブリーチきかせて黒いワイドパンツに黒いシャツ着ているわ。で、金の細いネックレスをしている」
確かに該当する男がいた。
バックルの位置を見る。
確かにそこ男のようだ。
流石だ……。この技術は私にはない。
「とりあえず追うことにしよう」私が声をかけた。
「神辺の事件……。櫻、捉えられた男の記憶の資料覚えておるか?」ヒロが声をかけてきた。
「その辺は抜かりないよ。捉えた男は末端。高麗人で朴・承哲。金で雇われてる。本部の居場所も何も知らん。高麗のフリーの工作員で魔術師として大和で出稼ぎしていただけ……」
ここで気がついた。
「!?もしかして、大和って工作員いっぱいいるのか!」私がヒロを見た。
「今更?ここは工作員天国やで。魔法は国際的に使用の禁止。条約でしっかり縛られてる。その他、外宮の法律も緩い。見つかりそうになったら、大和に逃げろ。裏社会の奴らの常識やん」
「ヒロはなんで……。そんなに知っているの?」私が尋ねた。
「本当だったら今からいくはずだった場所。斎宮古書店の店主経子さんにあったらわかるわ」ヒロが賊から目を離さないようにしながら話す。
私は、その琥珀色の瞳を覗く。
「ガキの頃偶然見つけたんよ。自衛官として初めての給与で魔道具を漁りに天六へ来た。その時に『斎宮古書店』を見つけて。古い図鑑ないか探そうと思って入ったのがきっかけや。そんな話はええ。集中しいや。早く終わらせんとせっかくの古書店行けんくなるで」
その言葉に私は男の方に意識を向けた。
男はゆっくりと歩きながら路地を進んでいく、途中何人かの人と軽く挨拶をしている。
この辺を良く飲み歩いている印象だ。裏路地は個人店が多いからな。
私たちは静かに地上に降り立って男を尾行する。
「櫻は少し飛べ、足音がする」鋭くヒロが注意する。
私は指示通り、少し体を浮き上がらせて男を追う。
男が走った。我々も走る。
男が角を曲がる。
私が角を曲がろうとするの腕を掴まれた。
ヒロが首を横に振る。そうして、手鏡を出した。これも魔道具だ。認識阻害をしていてもこの鏡には映し出せる。
角の隅で息をひそめながらゆっくり鏡で路地を確認した。
アッシュブラウンのふんわりとした巻き髪。切れ長の目元。左の涙袋。
露出は少ないがセクシーで体のラインがわかる服装……。
あの女がいた。その隣に例の男。
「誘われているな……戦闘はしたくない。引き上げよう。この男が黒とわかっただけでいい」
私が短く話す。
ヒロが頷きその場を離れようとする。
「行っちゃうの?」路地の向こうから女の声が聞こえた。
ヒロがナイフを構えた。私もハサミを構える。
こんな時のために体に装備できるようにヒロにシザーケースを作っておいてもらってよかった。
「遊びましょうよ。紀州の伝達者さん。」私たちは目を合わせる。
「櫻、これをしろ。俺の面は割れているが、櫻は顔がわからないようにしろ」そう言って、何も描かれてない面を渡してきた。
「のっぺらぼうの面だ。櫻だけでも面を隠せ」ヒロの額から静かに汗が流れる。
相手はかなりの強敵なのが私でもわかる。結界も張らないといけない。
私は頷いて面をつけた。
そうして、地面を蹴った。
私は、一般人が入らないように簡易結界を張る。
式神を飛ばして、陣を作った。
その間にヒロが女に切り掛かる。
紙一重でかわす女。
結界を張り終わり、私は余裕そうにしている男の方に切り掛かる。
「こっわ!」男がニヤリと笑いながら避ける。
こいつは、強い。ここだと本気が出せない……。戦わないで逃げたい……。
私は上の電線を見る。
そうして、男と間合いをとりながらヒロに近づく。
ヒロも女の攻撃をかわしながら間合いをとっていた。
私たちは背中合わせになりながら敵と向かい合う。
「絶対零度を出す。それと同時に電線を切れるか?」短く指示を出す。
「了解」無駄口を叩かずに承諾してくれた。
「絶対零度」詠唱をする。
簡易結界の中が凍てつく。絶対零度級の冷気で、結界内部の空気や水分が一時的に極端に凝結・凍結した。
ヒロは結界を張りながら脆くなった電線を切った。
私が簡易結界を解除する。
一気に外の空気が流れ込み、凍りついていた空気や水分が動き出す。
電線が地面に落ちそうなのを見て私は飛行魔法を使って空に舞い上がった。
電線が落ちるのと同時にバチリと大きな音がしたと思うと青白い光線が見えた。
敵の姿を探す。
いない。逃げたか………。
ゆっくりとヒロがこっちに近づいてきた。
「相変わらず、無茶するな」そんな言葉を私にかける。
「戦闘が長引く方がやばいやろ……」そう呟く。
「そうやな」ヒロが下を見ながら答えた。
凄まじい音と停電により、人が集まってきた。
消防に電話している人もいる。
「行こう。これ以上は二人では無理だ」ヒロを見る。
気だるそうに頷くヒロ。
私たちは周囲に気が付かれないよう飛行魔法を使ってその場を後にした。




