第六十話 後輩を信じなぁよ。
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
二日目の演習。
もう、東軍は「オロチ」のメンバーと緊急で呼び出された中央騎士団メンバーのみになった。
他の東軍の華族はコンカフェ嬢の失態を見て演習から逃げた。
そして今、俺は東軍で身代わりの魔道具を配ってる。
右側には有栖川宮様がいる。
並んでは…いけない2人です。
俺の左側にはちんまり櫻いる。
櫻も魔道具を配っているが、俺らよりも背が低いから飛行魔法で自分の体をふわりと浮かばせて箱の中の魔道具を配ってる。
有栖川宮はそれを見て何故か楽しそうだ。
「殿下も演習に臨むのですか?」櫻が話しかける。
「あぁでも見学に近いな。本当は西軍で魔道具を使った戦い方を間近で見たかったのだが…。」
「魔道具を使っても我ら“オロチ”が勝利しますよ。」豪快でそれでいて自信家な声が聞こえる。
声の方を見る。
俺より背は低いが、がっしりとした肩幅と鍛えられた体。
白髪を短く刈り上げ、角ばった顔。
深い葡萄色の瞳。茶色の奥に紫が溶け込んだような、不思議な色をしている。
左頬に傷がある。
無駄がない動きだな…。櫻とどっちが強いやろう。
不思議な雰囲気の初老の老人がこちらに近づいてきた。
「櫻子君、そちらが例の魔道具職人か。」豪快に話しかけてきた。
「えぇ、ご紹介が遅れました。徳田さん。こちら、私のバディの田中大夢君です。」
「オロチの隊長をしている。徳田恒一だ。田中、よろしく。」そう言って手を出してきた。
俺が手を握り返そうとするといきなり投げられそうになる。
それを寸ででかわし、間合いをとる。
何人かの軍人が驚いた顔をし、何人かはうんざりした顔をした。
そして、櫻もうんざりした顔をしていた。
「ほう、筋がいいな。」徳田が話してきた。
「いきなりなんですの?」俺が答える。
「流石、元イージスってところか。」
その言葉に何人か驚いた顔をした。
「だが、所詮一人だ。それに西軍もそこまで連携できておるまい。魔道具なんぞ使っても我らオロチの敵ではない。」ニヤリと徳田が煽る。
あぁ、これは乗っちゃいけない煽りだ。
はいはい、強いですねぇで勝たせた方がええで。
そう思っていたら隣から冷気を感じた。
夏で暑いはずなのにひんやりとしてきた。
俺はゆっくり櫻を見る。
あかん!乗るな!
「魔道具なんぞ?そう、お話で?」櫻が完璧な笑顔で徳田に話しかける。
後ろの騎士団が息を呑んで恐れおののいている。
「櫻!落ち着け!」俺が必死に宥める。
キッと睨まれた。
俺の心に少し吹雪が舞う。
もうダメだ。後で、三条さんに止めてもらおう。
俺は思考を停止した。
「聞き捨てならないですわ。徳田さん。うちのヒロは凄いんですよ。」ニッコリ笑う櫻。
「彼氏を自慢したいのはわかるが、ちとかい被りすぎだなぁ。櫻子君、恋は盲目か?」徳田がニヤリと笑う。
あーあーあー!聞こえない。
俺は、こっそり認識阻害魔法と魔力制御をして姿を消す。
そして、少し離れたところで三条さんに助けを求めた。
訳を話したら……。
「おもろいやん!田中君!私が責任を持とう!今回の演習暴れてええで!」そんな声が聞こえた。
え?無双してええん?
櫻とだったら多分半分ぐらい余裕かもな。
なんや、俺も腹たっていたんかい。
それに、久々にゲームが出来る。
俺は口角が上がるのを隠すことが出来なかった。
◇◇◇
「と!言うことで私らが先行してオロチと中央騎士団を無双するのから取りこぼしを他の班のみなさんにお願いしますね!」そんなこと笑顔で私が伝える。
全員の顔が呆れていた。
「私ら、出る幕なくなるじゃないですか…。」友香里ちゃんが力なく話す。
確かに…。
「それもそうねぇ。みんなも思い切り暴れたいよね。せっかく特訓したんだし…。」私が考え込む。
「もう、全ての部隊突進でええんちゃう?索敵魔道具使って…。索敵撃つ。せや!」ヒロがいきなり豊富さんと内緒話をはじめた。
豊富さんがニヤっとしたら
「ええで!それで行こう!」そんな会話が聞こえた。
なんの話をしているんだろう?
「守りは…大杉さん!お願いできますか?」私が大杉さんに話を振る。
「あいわかった。」お茶を飲みながら大杉さんが返事する。
このジジイ動くないやろ。まぁ、帰らなかっただけ偉いか。
「とりあえず、陣の周りに塹壕を掘って敵の侵入を少しでも防ぎますか。」私が提案する。
「せやな。ここまで辿り着かんと俺らが無双するけどな。」そんな会話をヒロとする。
「じゃ、塹壕掘るんは、俺がやっておくわ。ついでに本部の守りも俺がやっておく。若いのは暴れてこい。」丸山さんが話す。
ありがたい。
「あ!そうだ!三条さん!丸山さん!」そうして私は二人の元に行った。
そうして、私オリジナルの魔法陣を展開して相手の様子を伺う魔法を教えた。
「流石やな…。こんな魔法陣よく思いつくな…。」丸山さんが感嘆の声をあげた。
私は、丸山さんと三条さんに魔法陣を印した紙を渡す。
三条さんが考え込む。
「丸山君、私は太陽の君のところに行きこの魔法陣で全体の様子を映し出す。悪いが本部指揮権を丸山君に渡す。」そう言うと空間移動魔法で居なくなった。
「と!言うことで各分隊暴れ回ること、離脱者は櫓の下の救護施設な〜。誰が一番に逃げ出すか見ものやな。」丸山さんがニカっと笑う。
「俺はヒロよりも多く分隊を落とすから、ヒロよりは先に離脱はせえへんけどなぁ」豊富さんが挑発する。
「はっ!言うたな。俺が勝ったらわかってるな」ヒロが挑発を返す。
一体、この二人はどんな約束をしたんだろうか?
そうして、演習二日目の実践の火蓋が切って落とされたのだ。
青々とした木々の間を飛行魔法を使い間を縫うように駆け抜ける。
そうして、一個。
また、一個と魔道具を設置していく。
私たちは以前使ったポンチョを着て魔道具を設置している。
「豊富さん達も暴れ回れるよう豊富さんたち2班が敵の分隊とかち合ってから我々は動こうか。」そうヒロに提案する。
「そうやな、それまで休憩でもええか。」
私は魔法陣を展開した。
大きく演習場を見る。
本部に隊長の徳田さんと2つ分隊が残っているな。
2つ分隊が先行か……。
初めに動き出したのは冬馬班だ。
的確にステルス偵察を行っている。
「どんな感じや」ヒロが映像を覗き込んできた。
「偵察は2つ分隊出てる…お!友香里ちゃんたちが気づいて的確に偵察してる。」短く説明する。
「そっちにコウモリ飛ばすわ」そう言うとヒロが魔道具を飛ばして私たちはまた体を密着させながら様子を伺った。
私は、映像を拡大する。
アナグマの魔道具を使って塹壕を掘り始めた冬馬班。
「ここから撃つ作戦やな。」ヒロが短く話す。
「でも、友香里ちゃんの魔法が半減しそう。壁に当たるから。」私がそんなぼやきを漏らす。
「まぁ、後輩を信じな〜よ。」そうヒロに言われた。
私は目線を魔法陣に落とした。
『冬馬!いくで。』友香里のそんな声が聞こえた。
友香里がギターを構えた。
CmーGm
「大地は〜♩豪雨!」友香里ちゃんの詠唱がここまで聞こえる。
映像には地面が揺らぎいきなり雨が降り始めた。
そこに冬馬君の植物魔法で敵の足を絡める
AフラットーEフラット
「そなた♩迷うやら♩」
東軍の敵が混乱し始めた。
そこを冬馬君が次々と敵の首を締め上げていく。
友香里ちゃんが歌う曲の歌詞が、次々と現実になる。
楽しそうにギターを弾く友香里ちゃん。
リズムと共に塹壕から出てきてふわりと体を浮かばせる。
友香里ちゃんのギターソロだ。
音を具現化して敵に浴びせていく。
具現化された音符とコードが縛られた東軍の騎士団に降り注ぐ。
結界でなんとか防ぐ騎士団のメンバー。
FーFm
「突き刺す」
Em7
「刃と!」
無数のナイフが東軍の頭上に現れる。
E7
「大地の息吹が」
A m
「交わり♩喧嘩をする♩」
一斉に降り注ぐナイフ
東軍の騎士団が持つ身代わりの藁人形が、一斉に燃えた。
『もう終わりですか?まだ、曲は終わってませんよ♩』
そんな友香里ちゃんの声が聞こえた。
そうして、ニヤリと楽しそうに笑う。
「こちら冬馬。一個分隊殲滅成功。」そんな通信が入る。
私はヒロと目を合わせる。
「紀州巡礼道でへこたれていた子に見えないね。」私がそんな感想を言う。
「な!後輩と信じろって。櫻は一人じゃないんやから。」




