第六話 武闘派令嬢と元傭兵
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
櫻がおもむろに押し入れを開けたと思うと階段が出てきた。
そうして俺を手招きする。
俺は、素直についていく。
拷問室かなんかか?
「任務をするにあたり、訓練をしないといけない。」櫻が話す。
櫻が、無機質な鉄の扉を開けた。
無機質な石の床、白い壁、一面だけ布が被されている。
サンドバックやダンベル。ランニングマシーンもある。
天井には光を出す魔道具が取り付けられている。
「ここが簡易的な訓練場だ。今日からここで訓練したいと思う。」櫻がそう言った。
「確かに死なない為に鍛えやんとな…。」俺は、大和に帰ってから基礎訓練しかしていない。
「早速だが、手合わせをお願いしたい。靴を持ってこい。」そんな事を言いながら軍靴を履く櫻。
「ちょっと待ちい。」
俺も自分の部屋に行きコンバットブーツを持ってくる。
階段を降りると櫻がストレッチしていた。
俺も軽くストレッチをして体をならす。
「体術の訓練は久々なんだ。大夢君には負けないと思うがお手柔らかに願いうよ。」そう言うとコンバットスタンスを構えた。
「えらい。自信がありますなぁ。」俺もコンバットスタンスを構える。
睨み合う。
初めに動いたのは櫻だ。
素早い動きで懐に入ってくる。
俺は、逆にその体を捕まえにかかる。
手早く反応されて、間合いを取られる。
今度は、俺の方から間合いを詰める。
櫻が背後を取る。
右後ろか。筋がいい。
だが、俺は蹴りを入れる。
俺が放った蹴りは、櫻の鳩尾にヒットした。
「かはっ!」櫻の口から小さく悲鳴が上がる。
思いっきりカウンターが入ったのだろう。
「すまん。あんたの筋がいいから手加減できやんかった。」俺は櫻に詫びを入れた。
どさりと倒れ込み、肩で息をしてる櫻を見る。
少し涙目で腹を押さえている。
ちょっと色っぽい。
櫻の手がぼうと光る。
回復魔法をかけているのだろう。
「……。こんなに呆気なく負けたのは初めてだ。」櫻が苦しそうに話す。
「でも、あんたも女にしては十分強いで。」
「大夢君。私を鍛えてくれないか?」櫻は起き上がると木製のハサミを取り出した。
大きさは日本刀ほどだ。
髪をヘアゴムでポニーテールにくくる。
「大夢君の獲物はどんなのがいい?」櫻が尋ねて来た。
俺は、木製の小刀を掴むと構える。
華族の令嬢なのに泥臭い奴…。
そうして、3時間ほど手合わせをした。
◇◇◇
私は、床にへたりこんで座っている。
「はぁ…。はぁ…。」
肩で息をする。
酸素を取り込もうと肺が必死に動く。
体から汗が吹き出してくる。
「もう、今日はもう終わりにしようや。」
大夢が台所からペットボトルのスポーツ飲料を2本持ってきた。
1本を私に差し出す。
「まだだ!まだ、出来る!」
私はそれを受け取らないで叫ぶ。
「“出来る”と“無理やり続ける”はちゃうやろ…。」
私は、大夢を見る。
彼は、少し汗ばんでいるだけで息一つ乱れていない。
「………大夢君。私は、弱いか?」
「弱くはないで。」
「では?」
「基本的すぎるんや。」
「どういう意味だ?」
「真正面から相手を倒そうとしすぎてる。ちょっと手合わせしたら、癖が読めるんよ。」
大夢が冷静に分析する。
私は黙って俯く。
「アンタ、魔法を使わずに人を殺したことある?」
「……ある。」
「ホンマかいな。」
大夢が呆れて私の隣に座る。
「ほい。」
再びスポーツ飲料を勧められる。
今回は、素直に受け取った。
大夢がスポーツ飲料を飲む。
「殺されないように必死な人間って動きが読めん。それこそ、必死にこちらに反撃してくる。それをこっちも殺されんよう殺し返す。」
大夢の持っていたスポーツ飲料のペットボトルが小さく軋んだ。
「……内乱で殺してきた。それこそ…直接。」
私もペットボトルのキャップを開けながら答える。
「………。」
大夢は何も言わない。
そう、私は頭からつま先まで血まみれだ。
でも、彼が潜ってきた死戦は私が経験してきたものより血まみれで過酷なものだったのだろう。
私は、ちらりと大夢を見る。
その、切れ長の目はどんなものを見てきたのだろう?




