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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第五十八話 戦場を何だと思ってるん?コンカフェババア

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日18時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜

ーーーーー。

初めて三条さんとヒロが会った日。


「………なぁ、櫻。」


三条が帰った後だ。


思い詰めたヒロが私に話しかけてきた。


「魔力の補給ってどうやるん?」そんな事を聞いてきた。


「基本的には、手に触れたら出来るよ。貸して。」そう言って私はヒロの手を取ると魔力を少し流した。


「こちょばいな。」少し笑うヒロ。そして、考え込む。


「ヒロ?」


「他の…方法とか…ないわな?これって、魔力操作がうまくないと出来やんやん。」ポツポツと話すヒロ。


「そうやな…。」


「普通の自衛官……こんな魔力操作出来やんで。しかもこれって……かなり難しい。」ヒロの顔からいつものおちゃらけた感じがない。


「………。」その時感じた…。もしかしたら、内宮で嫌な目に…ヒロは…。


ヒロは浪華出身だ紀州から近い尊術派(そんじゅつは)の子供も多かったに違いない…。


「もしかして!櫻子姫様が俺とキスしたがらないのって!」ガバッと顔を上げてそんな事を言ったヒロ。


「ちゃうわ!単純にファーストキスは好きな人となん!」そこで、ヒロが後ろから抱きついてきた。


「他はぜーんぶ俺なのに?」そう言って太々しく笑う。


ヒロにバックハグされながらその顔を見た。


いつもの調子、いつものダメ狐。


しかし、その灰みのある琥珀色(アンバー)の瞳に過去の闇が覆い被さっているように暗くなったのを見た。



ーーーーーー。


ヒロが目をぎゅっと瞑ると静かに開いた。


「大丈夫や…。櫻すまん。」落ち着いた声で話す。


「ほんま?」私がヒロの目を覗き込む。


琥珀色の瞳が暗く悲しく揺れている。


その時きらりと光ったと思ったら、私の胸に手を置いて揉み始めた。


「これで、元気出たわぁ!」ニヤリと笑うヒロ。


「そりゃ、よかったですね!ダメ狐!」ふぅ、ヒロの長所よな、切り替え早いの。


『一ノ瀬さん、もう降参でええですね。』イヤホンから豊富の声が聞こえてきた。


「ヒロ、私だけ豊富さんの様子見るわ。」


「あぁ」


そんな様子を尻目に魔法陣を展開して、もう一度映像を見る。


項垂れている一ノ瀬さん。


あんな一ノ瀬さん見るの初めてやな。


そして、その足元には…。


私は通信をオンにした。


「こちら伊達。豊富さん、死傷者は?」


「こちら豊富。一ノ瀬さん以外…死亡確定や。」


「こちら伊達。本部。よろしいですか?」ため息をつきながら本部に呼びかける。


「こちら本部。状況を話したまえ。」


私はヒロを見る。【大丈夫】そう口が動く。


「こちら伊達。戦闘を偵察していたところ一ノ瀬荊伯爵令嬢が側仕えの魔力を強制補給。それにより、9名の側仕えが亡くなった模様。豊富さん、これであっているか?」


「こちら豊富。櫻子はんの説明で間違いないです。死者が出ました。演習をどうするか指示をお願いします。」


「こちら本部。東軍と話し合ってくる。各分隊本部に帰還せよ。」


そう言うと緊急事態を知らせる信号が西軍から撃たれた。


『わ!一ノ瀬さん!どこ行きますの!』そんな声がイヤホンから聞こえた。


「豊富君どうしたの!」


『一ノ瀬さんが逃げおった!』


「はぁ!豊富さん!捕まえて!」


私は、ヒロを見る。


「ヒロは本部に戻って!私が行く。」そう言って潜伏していた木から降りた。


ヒロも降りてきた。


「あかんって!危ないで!」私がヒロを見る。


「何がぁ!」ヒロの目に怒りが宿っている。


「あんな、コンカフェ嬢に俺がやられると思うん?」そう言って私の隣を魔道具を使って飛ぶ。


なんだかその表情を見て安心する。


「それもそうやな、私のバディがやわなはずないわな」そこでふっと鼻で笑ってしまった。


「なんか、ヒロがコンカフェ嬢コンカフェ嬢言っていたら急にあの人痛い人に思えたわ」そんな事を思う。


「今更ぁ?だいぶ、痛いで。あのコンカフェ嬢」ヒロが眉を顰める。


「ふふふっははは。ほんま!私らって井の中の蛙!小山の大将!」そんな言葉を並べる。


「なんそれ?」ヒロが尋ねてきた。


「ことわざや。ザックっと言って世間知らずって話や」


すると魔力探知に一人引っかかった。


私たちは目を合わせる。


「お出ましやな。」ヒロがにぃと笑った。


私たちは地面に降り立った。


その人を待つ。


ガサガサと木々がかき分けられる音がする。


ワインレッドの重ためのストレート、真紅に近い赤茶の瞳…。


しかし、今はその美しい髪もボサボサ、頬には泥がつき、服も乱れている。


胸が見えそうだ…。


一ノ瀬さんが私を憎々しげに見たと思ったら、ヒロを見てニタァと嫌な笑顔で笑った。


「そこの従僕!わたくしにつきなさい。そんな色気のない女より、わたくしの方がいいでしょ?」


「嫌や。こんな品のないコンカフェ嬢。」ヒロが平然とそんなことを言う。


「なっ!わたくしがコンカフェ嬢ぉ!」一ノ瀬さんが怒りで顔を真っ赤にする。


「え?店どこなん?帝都の方?ごめん。俺、帝都住みちゃうんよ。店に通えんわ」尚もヒロが煽る。


私は笑いを堪えるのにグッと口に力を入れる。


「わたくしは大和で最も美しい戦乙女ですのよ!それをコンカフェ嬢って!」


「そう言うコンセプトなん?自分で考えたん?痛いで。」ヒロが覚めた感じで話す。


そこで私は耐えきれなくて笑ってしまった。


「なんなの!その凍血(とうけつ)女まで!」


「だって!一ノ瀬様の軍服は確かにコンカフェ嬢かと。ヒィ!」


「なんですって!わたくしの美しさがわからないのぉ!」


「いや、確かにスタイルいいですが…。豊富さんのように付与魔法を与えたマントでもなく」そこで自分でも信じられないぐらい低い声になってきた。


「防御魔法が付与されたストッキングでもガーターでもない…。」そうして一ノ瀬を睨んだ。


「いつも思っていたんですが、あなた戦場を何だと思いで?」一ノ瀬を威圧した。


グッと堪えたが、私が力を込めなおしたら、ふらふらと倒れた。


ヒロが捕縛しようとしたのを私が止める。


魔法で捕縛した。


「な!」目を覚ます一ノ瀬。


「あんな軽い威圧であなたが倒れるわけないじゃないですか?」私がタバコを出しながら話す。


「え……軽い?」一ノ瀬が私を見て驚愕する。


「ええ、とても軽いです。」タバコを咥えて火をつける。


ふぅーと煙を吐く。


「本来、軍服が自由なのは…。神器の特性や自分の魔法の特性を活かしたり、防御を高めたりするのに自由なんですよ。男に色目使ったり、綺麗に着飾るためちゃいますから。」そこで一ノ瀬を睨む。


どうやら、私はこの一ノ瀬と言う女を軽蔑していたらしい。


「え?櫻は自由にしやんの?」隣のダメ狐から変な質問が飛んできた。


「一度、氷魔法を扱いやすいように豊富さんみたいなショートケープ着けたんだけどハサミが扱いずらかったんよ。マント系ダメなん。私の戦闘スタイルに合わん。」


「マントじゃなければええんやな。」ダメ狐が何か企んでる。


私は、本部に連絡した。


「こちら伊達。本部へ。一ノ瀬荊を確保した。」


「こちら本部。救援信号を送ってくれ。」そう三条さんが言ったので救援信号を送った。


私は適当に座ってタバコを吸う。


その隣にヒロが来た。


「演習中止か?」ヒロが尋ねてきた。


「ならんやろ。」私が吐き捨てながら話す。


「そうかい。」ヒロもタバコを出した。


「一日中止で、明日からかもな。どうしてもみんなで演習ができる機会少ないから…。人が死んでいるのにね。」そう言って煙を吸った。


「でも、死んだ奴も死んだ奴やで。こんなコンカフェおばさんについて行ったんやろ?」ヒロがタバコを咥えながら火をつけた。


「コンカフェだけでなくおばさんってぇ!」一ノ瀬が苦しそうだ。


モゴモゴ動いている。


「あんた、痛いで、神輿みたいのに乗って…。誰も注意してくれなかったんやな。か〜わいそっ!」そう煽り散らかすヒロ。


「ふっ、やめなよ。ヒロ…。あれ、一種の名物…ププっ、だったんやから。社交会でっ!」そう言いながら静かに笑う。


「え!何それ。どんなんやったん?」


ガサガサと人が歩いてくるのが聞こえた。


これは豊富さんやな。後ろに側仕えの西林さんも見えた。


「なんや、タバコ休憩かいな。俺も混ぜてや」豊富さんが、そう言ってタバコを出した。


転がっている一ノ瀬を跨いでこっちに来た。


「なっ!」一ノ瀬がさらに顔を真っ赤にした。


「坊ちゃんはしたないですよ。」西林が注意する。


「そうよ!豊富家はどんな教育をしてるの!」一ノ瀬が吠える。


「地面に座るなんて…。せめて敷き物をご用意する時間をください。」


「////っ!」一ノ瀬が顔が耳まで真っ赤になった。


そうして、東軍の確認部隊が来るまで私たちは一ノ瀬をおもちゃに煽り散らかした。


前の私じゃ考えられない行動と感情だと思った。

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