第五十六話 音と森の偵察者
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
私たちバディは基本補佐に回ることになった。
三条さんの参謀ということだ。
小隊長は豊富さん・丸山さん・冬馬君・大杉さんに決まった。
大杉さん参加していたんや。今回もあーやこーや言って不参加だと思った。
そして今、大杉さんはヒロにダル絡みしている。
「ええ身体してるな!それにこの足捌き。今度、うちの道場に見学に来やんか?」
「仕事が忙しいので、遠慮しておきます。」ヒロが魔道具一式を他の隊員に渡しながら話す。
「仕事なんて。櫻子さんがぱっぱってやとるやん。」無責任な発言をする大杉さん。
「その仕事が大変で自分と伊達さんは組みました。実際大変です。」ロボットのように答えるヒロ。
そろそろ邪魔だ。
「大杉さん。そろそろ部隊を動かす準備を。」私が話しかける。
「お!櫻子さん!また、彼氏貸したってな!」そう言ってひらひらと手を揺らしながらノンデリおじさんが過ぎ去っていく。
あれで、教頭なんだよな。
いい噂聞かんし…。伝達者同士は配属校被らないのほんまよかった。
「ヒロ大丈夫?今日だけで何人の曲者に絡まれてるんよ。」私は、隣でうんざりしているヒロを見た。
「………。」黙っているヒロ。
「どしたん?」
「この埋め合わせは櫻にしてもらう。演習終わったら覚悟しろや」そんな意味深な事を言ってきた。
埋め合わせ?デートかな?なんやろう?
そして、冬馬君の率いる小隊が偵察に出てる。
私とヒロはその隠密偵察のお手並み拝見と言うところだ。
我々は認識阻害魔法をかけながら木の上にいる。
友香里ちゃんが、ギターの弦を、ほんの一度だけ弾いた。
ポンーー。
小さな音が森へ溶けていく。
けれど、ただ消えた訳ではない。
木々にぶつかり、地面を這い、岩に跳ね返り、幾重もの音となって戻ってくる。
友香里ちゃんが、目を閉じる。
戻ってきた音の一つ一つを、ギターの弦に乗せている指先に感じているようだ。
ぱちっと目を開ける。
「11時の方角。1キロ先分隊。そちらも偵察をしている模様。櫻子さん、この動き一ノ瀬さんかもしれませんね?」
「根拠は?」
「人の足音が四つ。その中央だけ、地面に響く音が違うんです。木じゃない。………担がれてるものがあります」
…………。
「今度は、僕がほんまにそうか見てきていいですか?」冬馬が話す。
「危なくなったら逃げること。」そこでヒロを見る。
「わかった俺も行くわ。2キロ先ならスコープで見える。場合によっては狙撃できるけどどうする?」
「三条さんの判断やな。」そう短く答えた。
「そうやな。じゃ、冬馬。行くで。」そう言って冬馬君とヒロが消えていく。
「さて…。どこまで安全なの?友香里ちゃんに聞く。」
「半径1キロは安全かと。」
「こちら伊達。陣より9時の方角。半径1キロの安全を確認。次の指示を待つ。」そんな事を本部に入れた。
「こちら本部。冬馬班は引き続き偵察を。二個分隊をそこまで進める。」短く三条さんの声が聞こえた。
多分、丸山さんと豊富さんの分隊が来るだろう。
大杉さんは使い物にはならん。三条家の側仕えと茶を飲んでる方が被害がない。
「さて、いきなり棘さんを撃ってもいいけど…。あの人魔道具持ってないしなぁ。」
「変に自信満々ですよね。」友香里ちゃんが答えた。
「まぁ、魔力量で押し切ってきた人だから…。大和はそれが普通だったし…。」
「私らってほんま井の中の蛙でしたね。」友香里ちゃんがポツリと話した。
菊理姫様ありがとうございます。
今は大和は平和ですが、他国に攻め入れられる前に色々気がついて良かったです。
これからも準備だけで、有事ごとが起きませんように。
◇◇◇
冬馬が変化魔法を使う。
冬馬の輪郭が、ゆっくりと植物の中へ溶けていく。
肌は樹皮のような質感へ変わり、髪の一本一本が細い葉へとほどけていく。
それでも完全な植物になったわけではない。
木々の隙間を見れば、そこに人間がいるはずなのに、自然の一部にしか見えない。
違うな。
「見えない」というより、そこにいるという認識そのものが薄れているんやな。
ほぅ、大したもんやな。
あの短期時間でここまで仕上げるとは…。
櫻が冬馬の変化魔法を警戒する理由がわかった。
友香里もだけど冬馬もただのお坊ちゃんとお嬢様ちゃうな。
それに豊富もだいぶこちら側になりつつある。
俺は、そんなことを考えながらスコープを覗く。
輿が見えた…。ガラ空きだから狙撃しやすいな。
俺は眉を顰めた。
「こちら田中。冬馬、あまり近づくな。」そう短く指示をする。
「こちら、冬馬。わかりました。でも、なんでですか?」
「こちら田中。一ノ瀬さんの輿担いでいる奴ら。レンジャー隊員や。下手したら見つかる。目視したら引き上げろ。」
「こちら、冬馬。了解。」
そんな会話をしているとバカみたいな通信が入る。
「こちら、伊達。なんで、ヒロそんなことわかるん?」
「こちら、田中。俺は、レンジャー過程を終了したからや。」
「こちら、伊達。何それ、聞いてないんやけど!道理で体術でヒロに勝てないはずやん。」合法ロリババアのアホな声が聞こえる…。
「こちら、本部。無線でいちゃつかないように…。演習中である。気を引き締めて臨むように。」
………。
なんで、俺まで叱られないといけんねん!
これは、帰ったら櫻をどちゃくそに犯してやる!
ロッキーには悪いが、ホテルに直行してやる!
「無線であまり遊ばない方がええですよぉ〜。」冬馬が生意気に声をかけてきた。
俺はぎろりと睨む。
グッと冬馬の喉がなった。
「威圧しないでくださいよぉ〜。冗談じゃないですかぁ。」冬馬がひらひらと手を振る。
「で、どうだった?」
「一ノ瀬さんでした。4人の男が偵察してその後を一ノ瀬さんが続いている様子でした。場所はーー。」そこで、冬馬が地図を指差す。
「こちら、田中。敵一ノ瀬隊長の分隊を確認。ここから敵将が狙撃出来るが判断を本部に任せる。」
「こちら、本部。今回は、田中君は動かなくていい。その代わり豊富君を向かわせる。地位を教えてくれ。」
そこで、俺は場所を伝える。
「よし、冬馬ステルス偵察はこんなところや。戻るで。」
そうして、後輩に一個一個技術を教えていく。
俺も先輩って言われるようになったんやな。
そんなことを思いながら木々の間をすり抜けていった。




