第五十五話 楽しい演習始めます。3日間です。
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
毎日18時更新!
時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
一ノ瀬荊伯爵令嬢。
軍規定が緩い事をいい事に軍服を魔改造している。
そいつがヒロにちょっかいをかけている。
この女は内乱の時に魔力補給部隊の自衛官から魔力を引き出したり、押し戻そたりして遊んでいた女だ。
無理矢理、他人が魔力を操作し続けると性的快楽に変わる。
この女のテントから自衛官の悲鳴が聞こえてこない日はなかった。
荊の後ろの男どもを見る。
目の焦点が合ってない。
ヒロをこんな風にしてたまるか。
「こちらは東軍の陣と違いますよ?荊さん。」私が静かに言う。
「でも、美味しそうな男がいるんだもん。それにちゃんと相手しているの?溜まってそうよ?」荊が舌なめずりをして言う。
「うわっ」ヒロが引いている。
これを気持ち悪いって思う感性のバディで良かった。
荊の色気にやられた自衛官を見ているから本当にそう思う。
「そろそろ演習が始まろう。櫻子殿。今日はいい出会いがあった。また、そちらの田中殿とぜひ話したい。」有栖川宮様が話しかけてきた。
怒りで気が付かなかった…。
皇族の前で不躾な真似をしてしまった。
「ご挨拶が遅れました。有栖川宮殿下。」そう言って私は一礼する。
「そうですね。そろそろ、演習が始まります。各部隊に戻りましょう。」そう静かに荊を睨みながら話す。
「荊殿も戻られよ。ここは西軍の陣だ。」有栖川宮様も促してくれた。
皇族に言われたら引き下がらないといけないのか荊は神輿に乗った。
「ご機嫌よう。また、スカウトに来るわね。」そう言って投げキスをヒロに投げる荊。
氷漬けにしてやろうか?あの女。
「櫻、落ち着けや。」そうヒロに声をかけられた。
「落ち着いてるわ!」反射的に返す。
その様子を有栖川宮が不思議そうに見ている。
しまった!
「有栖川宮殿下。こちらわたくしのバディの田中大夢と申します。」私はヒロを紹介する。
「自己紹介はもう済んでる。しかし、櫻子殿、其方の恋人は優秀だな。」有栖川宮様が話す。
「殿下、田中とは恋人ではございませんよ。それにどのような話を?」
最近の私の周りは、どうなっているんだぁ!
「魔道具についてだ。」ふと有栖川宮様が藁人形の魔道具を見る。
「田中殿、これはなんだ?」
「これは、身代わりの魔道具です。このように藁人形に髪の毛をセットして。」そういうとヒロが自身の髪の毛を藁人形にセットした。
そうして、自分の頭をハンドガンで打つ。
燃える藁人形。
「このように安心して演習に臨めるのです。」ヒロが説明した。
「これはすごい!私にももらえないか!」有栖川宮様がヒロに尋ねる。
「たくさん作ったのでどうぞ。」ヒロが藁人形を差し出した。
「かたじけない。今度、私の館に来てくれ!でわ!」そう言って立ち去る有栖川宮。
私はゆっくりとヒロを見た。
「あれ、建前ちゃうで、本気で家に誘っているからな。」そう教える。
「……嘘やん。」ヒロが力無く答えた。
演習場の中央。
太陽の君のいる櫓の前に東軍と西軍の伝達者達が集まっていた。
先ほどの謁見とは違う。
全員、これから始める演習に意識を切り替えている。
太陽の君が櫓の上から私たちを見渡す。
「これより演習を開始する。」
静かな声が演習場に響いた。
「各々、相手に悟られぬよう散開せよ。陣を築き、索敵し、情報を集めよ。」
その言葉で皆が動き始める。
私は、東軍にいる一際大きな体の男を見る。
短く刈った白髪頭。四角い顔に左頬に傷がある。鋭い目つき、無駄のない動き。
徳田恒一。
今回はヒロの魔道具がある…。
思いっきりぶつかることが出来そうだ。
笑いが込み上げてくる。
「……櫻?」ヒロが声をかけてきた。
「何?」
「……いや、なんもない。三日もあるんや。あんまり飛ばすなよ。」
「善処する。」そう短く話して西軍の陣作りに出た。
認識阻害と魔力制御をしながら三条さんの後に続く。
ジージーと煩いセミの声がこれから始まる演習を応援しているようだ。
そうして、私は青々とした森の中に足を踏み入れた。
◇◇◇
櫓の程近くに陣を構えた。
「我々は、魔道具を使って近代的に戦いたいと思う。ここに陣を置いたのは太陽の君に我々の戦い方を詳しく見てもらう為にだ。」三条さんがそう説明した。
俺らは、それぞれの小隊に分かれる準備をしている。
今日はみんな緋色の軍服だ。
ダブルボタンのジャケットに黒の詰襟のシャツ。
神器持ちはそこに主神のモチーフが刺繍されている。
豊富も軍服魔改造してる。
ダブルボタンのジャケットは他の人より短い。
そこに細身のパンツを着ている。
無駄を省いて槍を取り回しやすいようにしてるな。
そこにショートケープを片肩にかけている。
俺は、そのショートケープが気になった。
「なんや!ヒロ、そんなにわしの軍服がかっこいいか?」豊富が話しかけてきた。
「ちゃうわ!そのショートケープや。雷魔法が広範囲で出しやすくなっとるの?」俺が尋ねた。
「お!流石やな。そうやで、刺繍で雷魔法の効力が上がるようにしとる。」
「櫻も似たようにしたええのに…。氷魔法の効力を上げるように…。なんか大和内宮の軍服ってオリジナル許されるんやな。」
「エンブレムとダブルボタンさえ守ればなんでもええで。」豊富が答えた。
「だから、あんなコンカフェ嬢がおるん?」俺が呆れながら豊富に尋ねた。
「コンカフェ嬢?……ダハッ!一ノ瀬さんのことかいな!」豊富が腹を抱えて笑う。
「おおたん?強烈やろ。」
「スカウトされたわ…。品のない女は嫌やな。」俺がうんざりして話す。
「そりゃ、ヒロの隣には、最高級品がおるからな。あんな可愛い彼女おって軍服魔改造おばさんなんて目に入らんやろうな。」豊富が話す。
「だから、櫻は彼女ちゃうって…。バディや…。」なんかこのやり取り疲れてきた。
「でも、一ノ瀬さんには気をつけろや。あの人強引やから。結構な自衛官廃人にしとるからな。」豊富がうんざりとした表情で話してきた。
「え!大夢さん一ノ瀬さんに目をつけられたんですか?」
そこに冬馬と友香里が魔道具を受け取りにこちらにやってきた。
「会うたで。神輿に担がれながらやってきたわ。」俺がそんな感想を話す。
「うわぁ、相変わらずですねぇ。社交会でも輿でやってきますからねぇ。」友香里が引いている。
「輿?」
「あぁ、あの乗り物“輿”って名前なんです。一ノ瀬さんのは“姫輿”です。普通、知らんですよね。」冬馬が補足してれた。
「へぇ〜。」俺の口から自然と漏れた。
そして俺は、社交会にアレで乗り込む姿を想像した。
………残念が光景だ。
「なんか誰も注意しないの残念やな。」そんな感想が出る。
「注意なんてしようものなら廃人コースですよ。」冬馬が話す。
「でも、気をつけてくださいね。一ノ瀬さん、櫻子さんの人気とか勲章に嫉妬してますから。」友香里が教えてくれた。
「注意も何も近付かんかったらええやろ。あの手のタイプは自分に自信があるからこっちが近づかんかったらなんもないわ。」そんな女たくさん見てきた。
「大夢さんって女の人慣れていますね。」冬馬が感心しながら聞いてきた。
「俺の元職場の影響や。色仕掛けしてきたやつなんてごまんとおるわ。情報欲しさに。大和人はちょろく見られるからな。」
お陰様で一回食べてポイっが簡単で戦場でも困らんかったけどな。
「田中君!ちょっとこっちに来てくれないか!」そう三条さんに呼ばれた。
「今、行きます!」そう答えて三条さんの元へ駆けた。
こうして、俺たちの三日間の演習が始まった。




