第五十三話 神々の盾
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
神辺から丸山さんが来た。
やっと魔道具の訓練ができる。
明日は、ヒロも私も休みだ。
「それでは、みなさん。明日は私たちバディは二人ともお休みです。」そこでにっこりと4人を見る。
震える、豊富さんと小野兄弟。それを横目で見る丸山さん。
「夜通しかくれんぼしてもええで。俺ら一回、夜通しかくれんぼしたし。」
絶句する3人。それを見て呆れる丸山さん。
「なんか田中が前に愚痴っていたことわかったわ。」丸山さんが静かに3人をそう評価する。
目を潤ませてヒロを見る3人。それをヒロが鼻で笑った。
「でも、丸山さんは明日休みじゃないんでしょ?やめておいたほうがええやない?」私は豊富さんみたいにズルができない丸山さんを心配した。
「大丈夫や。念の為休みを取った。それに仕事を片付けたら三条さんも合流すると言っておった。それまでに動けるようにしやんと。なぁ?」そう言って豊富さん達を見る。
すると、豊富さんが顔を引き締めてヒロを挑発的に見た。
「わしも朝までやってやるよ。演習まで後5日や。問題点が見つかったら微調整しやんといけんからのう。」
「俺と櫻が鬼ですよ?何回捕まるでしょうね?」ヒロもニヤリと笑う。
「望むところや。わしは負けず嫌いでなぁ」
ヒロのおかげで豊富さんがただのお坊ちゃんじゃなくて公爵閣下の顔として相応しくなったかしら?
私たち魔術師は有事の際には戦わないといけないんだし…。
「さて…。ルールは簡単です。これが燃えたら負け!」そうして私はヒロが作った魔道具を出した。
掌ほどの藁人形だ。それにストラップが付いている。
「なんか…。禍々しくないですか?」ギターを抱えた友香里ちゃんがボソリと話す。
私が自分の髪の毛を藁人形に埋め込む。
そうして、胸ポケットのボタンに引っかける。
「ヒロ、撃っていいよ。」
間髪入れずヒロが私の頭に向かってハンドガンを撃ち込んだ。
衝撃が伝わるが、痛みはない。
燃える藁人形。
「ね?死なないでしょ?」そう言ってみんなを見た。
小野兄妹は驚いている。豊富さんは槍を構えようとしてる。丸山さんは刀を抜刀してヒロに刀を向けていた。
この速度で、反応できたの丸山さんだけか…。やっぱり内乱の前線を経験した人は違うな…。
「ぎょうさん作ったから何回戦もできるでぇ〜。」ヒロが魔道具が入った箱を見せてきた。
そこには大量の藁人形が入っている。
「俺はあんまり捕まらんからそんなに使わんけどなぁ!」豊富さんが挑発的に話す。
「では、作戦会議を10分間行いましょう。10分後…。私たちが動きます。みなさん…。藁人形をちゃんと持ってくださいね。」そうにこやかに笑う。
各々覚悟を決めたようで藁人形をそれぞれのマジックバッグに詰め始めた。
「豊富さんそんだけでええんですか?」ヒロが豊富さんを煽る。
「大丈夫や…。もう、お前に簡単にやられんわ。」ニヤリと笑ってる豊富さん。
なんか、仲良くなってない?この二人。
「じゃ、我々はここにいるので隠れる方々はどうぞ。」そう言うとそれぞれ認識阻害魔法で消えていった。
私は、程よい石に腰掛けて紀州巡礼道から夜空を見上げた。
杉の森の間から見える星空は、今まで見た星空の中で一番輝いているように見えた。
◇◇◇
けたたましく鳴いている蝉。
容赦なく照りつける太陽。
そして、戦闘服なのにド派手な緋色。
こんな目立つ戦闘服着たの初めてなんやけど…。
俺は、青々とした木々の中自身の服の色が凄く場違いに思った。
まぁ、適当にやって適当に帰ろう。
だって、どちらかが潰れない限り、3日もぶっ通しで演習するんやで。
こんな狂った日程と演習考えるの誰やねん。
そんなことを考えながらマジックバッグから出した魔道具をチェックしている。
櫻は挨拶回りに忙しい。
今は、俺一人だ。
リストを見ながらテントや補給物資。
通信機器に索敵用のネズミの魔道具。それに俺、オリジナルの塹壕を掘るアナグマ型魔道具の個数を確認する。
泥田坊の残骸持って帰ってよかったよ。
泥田坊でその日にあったことを思い出す。
ちょっとエロいことを思い出して、早く演習を終わらせたいと思った。
溜まってるな…。
今の俺は、目の前にうまそうな肉があるのに食べれない犬だ。
ため息をつく。
「その魔道具は何に使うのだ?」不意に後ろから声をかけられた。
振り返ると一人の青年が立っていた。
俺より少し背が低く、ヒョロリとした体。
緋色の軍服を着ているからこの男も演習に参加するのか?筋肉が皆無だぞ?
少し青みがかった髪に卵型の顔。細い眉。すっと通った鼻筋。
銀縁のメガネの奥にある灰青の瞳が、俺が持ってるアナグマ型の魔道具を見ている。
「これは、穴を掘るために使います。」短く答える。
最近、華族と話す機会が多いが、櫻たちは特殊だ。
本来俺は、華族とは喋ってはいけない。
「穴…とな?何故だ?」
「海外の戦闘では、魔術師も塹壕を掘って索敵し、敵を撃つからです。」
なるべく自衛隊にいた時のように…
「ほぅ、興味深い。其方が、櫻子殿と組んでいる伝達者か?」
「はい。」
「名をなんと言う?」
「田中大夢といいます。」
「田中殿か。私の名は有栖川宮智仁だ。よろしく。」
そう言って手を差し出された。
ちょっと待て…。有栖川……宮?
宮家!皇族やん!
俺は手を握っていいかわからなくなった。
この手を握って握手し返すのも首が飛ぶし、握らなくて握手をしないのも不敬罪で首が飛ぶ。
「どうしたのだ?」目の前の高貴なお方が首を傾げてる。
「発言の許可を願います。」
「構わない。」
「自分は、卑しい身分です。忌守です。殿下のような高貴な方の手を汚すことは許されません。」絞り出すように話す。
櫻!助けてくれ!俺の首が飛ぶ!
心の中でそう叫ぶ。
青年は俺に近づき俺の手を取った。
「現在の大和のそのような身分はない。そして、身分は関係ない。」そう言って俺の手を握って離した。
「田中殿。其方は、魔道具職人と聞いている。正しいか?」
「はい。」突然の皇族の襲来に俺の頭が追いついていない。
あぁ、でも山一つ離れたところに帝が見学しているんや。
でも、側仕えや護衛もつけないでこんなところに…。
やばい。この状況を別の誰かに見られたら俺が唆したみたいに見えないか?
ぐるぐると考える。
あぁ!考えるのは櫻の仕事だ!
どうにでもなれ!
「大和の魔道具は遅れてるか?忌憚なき回答を望む。」
「率直に申し上げますと。軍用魔道具は100年前から進歩しておりません。」
「と言うと?」
「魔術師と神器に頼っているからです。しかし、日用品の魔道具は最先端です。」
「どういう事だ?」有栖川宮が眉を顰める。
俺は、もう面倒なので自分が常に感じていたことをぶちまけた。
どうせ首が飛ぶなら、飛んだ首で噛み付いてやる。
「庶民は魔道具に忌避感はありません。日用品の魔道具を積極的に取り入れるのでどんどん進化します。例えばここにあるテントなどがいい例です。」そうして俺はテントを見せた。
「このようにコンパクトですが中は自宅と変わらない設備が整えられてます。このような技術は大和が一番優れてます。しかし、自分が持っている小銃。」有栖川宮に小銃を見せた。
「これは、ステイツの技術です。ヴァルトハイムなどは自分のような戦闘員しかいません。魔力量が多いものを積極的に軍に取り入れているようです。中東の前線で聞きました。」
「其方は中東にいたのか?」
「はい。自分はイージス。AISでスナイパーとして働いていたので。」
有栖川宮が驚いた顔をした。イージスを知っているか。
まぁ、元イージスだから伝達者登録もできたんやけど…。
有栖川宮が考え込む。
何を考え込んでるのか。
俺は、もうどうでもよかった。
しかし、その後。
この出会いによって、俺はマナー訓練をさらに必死こいてやらにといけなくなった。




