第五十一話 綺麗な戦い方。
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
紀州巡礼道の程近く、日本庭園が立派なホテル。
入り口近くには小さなお土産屋がある。
中庭には足湯があり、いつでも足湯が楽しめる場所だ。
私たちは、そこから職場に通っている。
車だと時間がかかるので朝、ヒロと一緒に空間移動魔法で家まで行きそこで別れる。
良かった…。今が夏休みで…。時間休をもらってヒロの出勤に合わせて学校に出勤している。
私とヒロの始業時間は1時間ほど違う。
今日は、運動会の打ち合わせをしたら午後は休みを取った。
明日も午後に研修会に参加!そして、直行直帰!素晴らしきかな夏休み。
残業も泣き喚く子供も乗り込んでくる親もいない。
それをヒロに話したら「いいなーズルやん。」って言ったので普段の私の仕事を魔道具で見せた。
「二度と舐めたこと言いません。櫻子先生」と落ち込みながら職場に向かっていたな。
私からしたらタバコ休憩できる方がいいがな!
そんなこんなで打ち合わせ。
「櫻子先生は団体表現お願いできませんか?」田所主任に言われた。
「わかりました。」そう言って他の打ち合わせも終わる。
ダンスか…。曲に被りがないか他学年に聞かないとな。
「櫻子ちゃん運動会何担当?」薫さんに声をかけられた。
「ダンスですよ。薫さんは?」
「同じ。どうするかなぁ。」
「4年生は楽やないですか?流行りの曲とダンスあるし、愛ダンスとかいいやないですか?」
そう言って、私が両手を顔の近くでヒラヒラさせ、軽く踊る。
「おいおい。かわええな。傾国の美女が女もたらしこみはじめた。」薫さんがニヤリと話す。
「そのあだ名やめてくださいよぉ!」私がむくれた。
そんな感じで学校では穏やかに時間がゆっくり流れていった。
苔むした石畳。
まっすぐ伸びた杉の木。
その下で冬馬君・友香里ちゃん・豊富さんと手合わせをしてる。
今は、魔法は無しだ。
木製のそれぞれの武器を使い戦っている。
私は、ハサミ。
豊富さんは槍。
冬馬君はトンファー。
友香里ちゃんが鉄扇。
豊富さんが槍を回して打ち込んでくる。
それをハサミであしらいつつ、攻撃しようとしてきた冬馬君の鳩尾に蹴りを入れる。
友香里ちゃんが鉄扇を振り上げたのが見えた。
下に回り込み三人が同士討ちするのを狙う。
狙い通り三人が崩れ落ちた。
午後から学校から帰ってきた私は、こんな事を五回繰り返している。
全て瞬殺だ。
三人を見る。手合わせしただけなのに肩で息をしている。
私は、タブレットを出した。
各々の欠点を冷静に分析する。
「はぁー!はぁっ!櫻子はん。前よりも強なってへん?」
豊富さんが肩で息を切らしながら話す。
これで警ら伝達者とは…。情けない。
「ヒロと手合わせしてますからね。それよりも…。外向きの仕事、西林さんに任せて良かったんですか?」
「大丈夫や。西林は変化魔法で俺に完璧に化けれる。」そう言ってニヤリと笑った。
「………時々、それで外向きの仕事サボってませんよね?」私が一瞥する。
クラスの子供がイタズラが見つかったような顔になった。
やれやれ…。さて、演習まで1週間あまり…。各々、どこが最大限伸ばせるかしらね。
そんな事を思いながらタブレットを見た。
◇◇◇
コンバットナイフで伸びてきた蔓を叩き切りながら冬馬のボディに俺の拳を叩きつける。
「っハ!」
身体強化魔法が間に合わなかったようで白目を剥きながら倒れ込む冬馬。
………。
俺は、白目をむいて失神してるお坊ちゃんを見下ろす。
「ふぅん。」ため息しか出ない。
「……ヒロ、えげつないで…。ここまでしやんでも。」豊富が治癒魔法を冬馬君にかけている。
「ほんまもんの戦場だと死んでまいますよ?それでええんですか?」
俺が、コンバットナイフをなおしながら話す。
「あかんわ、これはしばらく起きやんな。」豊富が冬馬を寝かせる。
「ってか、豊富さん。内乱に居たんっすよね?人を殺したようには見えんのですけど。」俺がタバコを出しながら話す。
「殺した事はあるで…。でも、魔法でや。わからん間に相手が死んどった。」伏し目がちになる豊富。
豊富もマルボロのブラックメンソールを出してきた。
「怖いっすか?直接、殺すの?」俺がつまんなそうにタバコを咥えて火をつける。
「そら、怖いで。」豊富も火をつけた。
「ふぅん。」そんな感想しか出ない。
「ヒロはどうなんよ?」豊富が尋ねてきた。
「俺は、もう慣れました。じゃないと死んでまうので。」そこで豊富を一瞥する。
「そこやろうな。わしと…伊達先輩と田中の違いは…。」豊富が煙を吐いた。
「綺麗なお手手とお目目がなくなりますよ。」そう言ってニヤリと笑って見せた。
「でも、あんた必死やったんやろ。田中の隣やから伊達先輩は安心して笑えるんやろうな。」豊富が遠くを見つめる。
「きしょいですよ。男のくせに。」俺が引きながら話す。
「お前はそういうところ直せ。華族社会でやっていけんで。」豊富が俺を睨んだ。
「そんなところ行かないので大丈夫っす。」そう言って俺はタバコを一口吸った。
冬馬が呻いて起き上がった。
俺は煙を吐きながら近づき、携帯灰皿にタバコを捨てた。
「トンファーと魔法が喧嘩しとる。」そう助言する。
「喧嘩?」
「相手を出し抜こうとして背後から蔦を出すのはかまんが、顔でバレバレ。」
冬馬がガックリと項垂れる。
「それに、魔法に集中するあまりにトンファーが使えてないやん。」
「どうしたらええですか?」そんな事を尋ねてきた。
「知らん。俺は魔術師ちゃうし?先輩に聞きなぁよ。」そう言って親指でクイッと豊富をさす。
豊富は俺らの会話を聞きながら考えている。
「そうやなぁ。奇襲しようとせんとトンファーから蔦を出した方がええな。冬馬ちょっとやってみぃ。」
「はい!」そう言って起き上がりトンファーから蔦を出しはじめた冬馬。
「こっちの方がなんだかイメージしやすいです!」元気に話す。
こいつの目と手も綺麗やな。
なんかこのボンボン達はこのままで居てほしいな。
戦闘は楽しいし、義務だけど、人を殺す機会が冬馬や友香里にこやんといいな。
俺は、20歳で傭兵として人を殺してきた過去を思い出す。
そして、自分で選んだ道を振り返り鼻で笑って前をむく。
「さて、次は豊富さん。やりましょうか。」豊富を見る。
「本気でかかっていくわ。」そう言って槍を振り回してきた。
豊富がいきなり雷魔法を使う戦法をせずに、槍を打ちつけてきた。
櫻のしごきの成果が現れ始めたかな?
「槍は獲物が長い分、間合いを詰められると致命傷や!そこを意識せい!」
「わかってるわ!お前がバケモンなんや。」そう言い接近戦で雷魔法を打ってきた。
ほぅ、やるようになったやん。
俺は結界の魔道具を発動させた。
この合宿で初めて発動させたかもしれない。
自然と口角が上がる。
俺は、姿勢を低くすると素早く足を払う。
反応されて間合いを取られる。
身体強化魔法を鍛えたな。
なるほど。面白い。
豊富が槍を打ち込む。
槍の柄を掴み引き寄せる。
突然のことで驚く豊富。
その顔にコンバットナイフを突きつけた。
豊富の鼻先で止まるナイフ。
「こんな戦い方もありますよ。綺麗な戦い方以外も覚えたらええです。」
豊富は一瞬驚いた顔をしたがニヤリと笑って。
「田中、おおきに。戦場というのがほんまに少しだけわかったわ。」
そう言って槍の刀身に雷魔法を流してきた。
俺が咄嗟に手を離し、雷魔法を喰らうのをかわした。
「やりますねぇ。ヒヤリとしましたよぉ!」
「田中に負けてばかりが嫌やてなぁ!」
そんなやり取りをしながら、豊富と手合わせをした。
冬馬の訓練をすっかり忘れて…。
櫻にどちゃくそ怒られた。




