第五十話 戦力外通告!
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
毎日18時更新!
時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
必死に走る背中。
その背中をゆうに追い越し声をかける。
「遅いですよ?」私がそう声をかける。
冬馬の目が見開き驚きで顔がこわばる。
冬馬のチャームを引きちぎる。
ばたりと倒れる冬馬君。
『こちら田中。こっちは終わった。』そうヒロから通信が入る。
「こちら伊達、こっちも終わった。合流しよう。」
『了解』
私は肩で息をしている冬馬君を見る。
そうして、息を一つついてヒロの所へ冬馬君を引き摺りながら向かった。
目の前には冬馬君と友香里ちゃんが項垂れている。
「秒殺やったな。」ヒロがタバコを吸いながら話す。
「私もヒロもお仕事終わりなんですよ?大学生の貴方たちは何をしているの?」
「「……。」」
何も言わない二人。
「ふぅん。落ち込んでも始まりません。反省点は?」私が切り出す。
「体力がないです。」冬馬君がボソッと話す。
「それはもうどうにも出来ません。しかし、これを機に基礎訓練を増やしてください。」私が答える。
「……はい。」項垂れる冬馬君。
「他には?」友香里ちゃんを見る。
「気がついたらチャーム取られていました。」
私はヒロを見る。
「手加減したんやで。これでも…。でも、いつまで経ってもこっちの魔力の揺らぎに気がつかへんねんもん。」ヒロがつまんなそうにタバコの煙を吐いた。
その言葉に驚く友香里ちゃん。
「どんな作戦だったの?メッセージしたでしょ?【ちゃんと作戦立てて来てね】って」私が話す。
「冬馬が変化魔法で…。櫻子さんか大夢さんに化けて…。それを出しぬく作戦でした。」苦しそうに友香里ちゃんが答える。
「対策される可能性は考えましたか?」私が質問する。
「いいえ。」冬馬が答える。
「どうなったか、友香里ちゃんに教えてあげなさい。」私もタバコを出した。
平和になったのかしら?こんなに戦えないなんて…。華族学校で何をしてきたのだろう?
「計画通り、大夢さんの姿になって僕は櫻子さんに近づきました。そうしたら、一瞬で。“冬馬君。バレバレだよ”って僕は慌てて逃げました。すぐに捕まりました。」機械のように話す冬馬君。
私はため息と共に煙を吐く。
「貴方たちのミスは一つ、準備不足です。体力作りにしろ何にしろ…。自分たちを鍛えることはできたはずです。二つ、魔法に頼りすぎです。飛行魔法で逃げましたね?どうなりました?」
「すぐに追いつかれて…並走されました。」冬馬君が話す。
多分これでも自信あったんやろうな…。
「三つ、友香里ちゃんを遊ばせすぎです。友香里ちゃんの得意魔法は?」
「……音魔法です。」小さく答える友香里ちゃん。
「だから、ハンデのためにヒロを向かわせたんですよ?」私が答える。
訳がわからないといった様に友香里ちゃんがこちらを見る。
私はまたため息が出る。
そうして、音魔法の本を出した。
「これを読んだことは?」
首を振る友香里ちゃん。
私は、天を仰いだ。後輩がちゃんと育ってない…。
「これは、天宇受売命や伎芸天の他にミューズの理も書いてある音魔法の本です。まさか…。友香里ちゃん、日本の神様の理しか知らない?そんなことないですよね。」私が顔を険しく歪ませていう。
これは、クラスの児童に対してやる顔だ。
「ごめんなさい。」謝る友香里ちゃん。
「もし、海外の神々の理を学び独自に魔法を生成できていたいたら…。ヒロが近づく音が聞こえたと思いますよ?その様な努力は?」冷たく言う。
この声もクラスの児童に対して行うものだ。
「もういいです…。最後に冬馬君。」
「はい!」
「冬馬君の変化魔法はかなり洗練されています。それは、私も認めます。」
ぱぁと顔が明るくなる冬馬。
「でも、相手の言葉を信じすぎです…。“バレバレだよ冬馬君”は私とヒロの合言葉だったんです。」
きょとんとする冬馬。表情が豊かで可愛いな。クラスの子供たちみたいだ。
「その後、合言葉を言って本物か確認する。対策されてると思わんかったのですか?」私がなおも険しい顔を作り話す。
「俺からも一個いい?」ヒロがおもむろに尋ねてきた。
「華族の魔術師って他人任せなん?」ヒロの目が厳しい。
こちらの方が手厳しいやろうな。
「……え?」二人が呆然とする。
「こんな様で演習はどうするつもりやったん?」二人を冷たく見下ろすヒロ。
「櫻子さんも豊富さんも…三条さんも神器持ちやし…。」冬馬がゆっくり話す。
「じゃ、あんたら兄妹は何の為に演習に参加するん?いらんやん。戦うつもりないなら。」
現場叩き上げのヒロにとってこんな甘ちゃんは許せへんよな。
「櫻はいつも2つの仕事しながら訓練してるで、それに寝る時間削っても魔法の研究してる。俺、華族って櫻みたいなのが普通やと思ったから侯爵家だし尊敬しないといけんなぁ。と思うたけどあんたら普通の大学生やん。いや俺、元自衛官で補助要員できていた外宮の大学生知っとるけど、そっちの子の方がまだ動けたな。」
小野兄妹に特大の雷が落ちた。
「櫻、やるだけ無駄や。こんなん時間の無駄。帰って内宮の任務しようや。そっちの方がええ。」ヒロがつまんなそうに携帯灰皿を出してタバコを消した。
私は、二人を見下ろして、ゆっくりその場を立ち去ろうとする。
「「待ってくださいよ!!!!」」
冬馬君と友香里ちゃんが叫ぶ。
私たちは足を止めた。
「今日の訓練!準備不足で本当に申し訳ありませんでした!」冬馬君が叫んで頭を下げた。
友香里ちゃんも頭を下げる。
「私たちを鍛えてください!演習までに!少しは動ける様になりたいです!」
「「お願いします!!!」」二人の声が重なる。
私とヒロは目を合わせる。
そうして、小野兄妹が紀州に泊まり込んで特別合宿をすることになった。
◇◇◇
「こっちも秒殺やん。」俺は項垂れてる豊富を見る。
顔に手を当てて天を仰ぐ櫻。
今回は小野兄妹、櫻は見学だ。
俺対豊富のかくれんぼ。
結果は、始まりの合図とともに逃げたと見せかけた豊富。
豊富が撃ってきた雷魔法を、俺は難なくかわした。
魔力は高いけど、懐に入ったらそれまでやな。
体術で豊富を制圧した。
俺の前には豊富が項垂れてる。
そして、小野兄妹が何とも言えん表情で俺と豊富を見比べている。
俺は櫻を見た。
「大和に別の国の魔術師攻め込んできたら瞬殺やな。なんでこうなったん?俺、今から別の国に引っ越そうかな?防衛がこんなんとか…安心して寝れんわ。」そう言ってタバコを出した。
「………。」何も言わない櫻。
「ちょっと待てや!」豊富が下を向きながら呟く。
「こんなんでわしが、終わると思うなやぁ!」豊富の顔が真剣だ。
その目には闘志が宿っている。
そうやって、紀州合宿者がまた一人増えた。




