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『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜  作者: ぽんぬ


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第四十八話 ペンギンとダメ狐と水槽に映った私

『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜

主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!


毎日18時更新!


時系列

〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜

〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意

〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜

館内は外より少し薄暗く、天井の照明が足元を淡く照らしていた。


「………。」隣を歩いている櫻は無言だ。


何を考えとるんやら、そして今日の櫻はどう見ても華族のお嬢様のお忍びだ…。


俺らを見てサッと避ける人が何組かいる。


アイボリーの上品な詰襟のブラウスにお守りの桔梗のネックレス。


ふくらはぎまであるブルーグレーのスカート。ローヒールのバレエシューズ。


髪の毛をアップにまとめて同じくブルーグレーのリボンをつけている。


耳には小ぶりのピアスが揺れている。ネックレスと同じ色だ。


上品なショルダーバッグを肩にかけている。


そして、俺はネイビーのスラックスにカッターシャツ。革靴。


腕には戦場で使っていたハミルトンの腕時計。肩には革のマジックバッグ。


華族の令嬢とその護衛にしか見えやんやろ。


チケットを買って中に入る。


ペンギンの相関図の前で足が止まる。


何組かのカップルがいたが、場所を変えた。


俺ら貸切のペンギン相関図になる。


「ペンギンって一度パートナーを決めたら長いこと一緒におるんやって。」そんな事を俺が言う。


「でも、例外もあるでしょ。死別とか。浮気とか。」櫻が静かに言う。


「それに…。このペンギン…。複数のパートナーがいる。」そこでジド目で俺を見る櫻。


「俺は、櫻しかおらんわ。いつ作るねん。もう一人とか…。それに俺は櫻と違ってモテへん。」俺が弁明する。


「ふ〜ん。まぁ、私はヒロのセフレだから、口出しする権利はありませんけどねっ!」


勘弁してくれや!何でセフレに浮気を伺われないといけないんや!


割り切った関係とは?小一時間問いたいわ!


通路順に進む。オオサンショウウオが静かに横たわっている。


「……これ、鴨川におるん?」


「らしいで。」


「ええ…。なんか怖いなぁ。大きいし…。」櫻がそんな感想を言った。


「はぁ?妖の方がデカいし禍々しいやろ。」


「でも、妖は意思疎通できるやん。オオサンショウウオは何考えてるかわからん。」櫻が俺の顔を見ながら話す。


「……今の櫻もそんな感じやけどな。」


「……。」


櫻の顔を見る。

困惑してどう思ったらいいかわからない表情になっている。


「喋りたくなったらでえぇで。お互い背中を預けているんや。俺も結構、殺してきたし、汚い仕事もぎょうさんしてきた。何を聞いてもある程度は驚かんよ。」


そうして、静かに歩く。


櫻が腕を組んできた。


「ねぇ、ヒロ?ヒロが戦って一番怖かった相手って誰なん?」


「櫻子姫様でございます。」


「えぇ?私?いつ戦ったんよ?」


「紀州巡礼道のガチかくれんぼや…。あんたは、間違いなく俺が殺してきた中で一番強い相手や。あ!三条さんも戦いたくないな。今日、威圧を喰らったけど失神するかと思うたわ。」


「え?三条さんの威圧で失神しやんかったん?すごい…。豊富さんも失神するのに。」


「あんなボンボンと一緒にせーへんでくれる?掻い潜ってきた戦場がちゃうわ。」俺は櫻の大きな瞳を見た。


その瞳がふうと安心したように形を変えて、口角が上がり、エクボができた。


「ペンギンみよう!ヒロみたいな浮気者ペンギン。」そうやって俺の手を引く。


「だから、俺は浮気してへんって…。」


そうやって、水族館を楽しんでお土産コーナーで櫻にオオサンショウウオのぬいぐるみを買ってやった。


その夏から、俺らはなんか知らんけど夏にはこの水族館に来るのが定番になった。



◇◇◇


静かに流れる川の音。平安京の川を再現した水槽に私とヒロの姿が映る。


ヒロの目に私の顔が映った。


今の私は…。5年後の私が誇れる姿だろうか?


誇れるかはわからないが…。少なくとも私が私自身を好きでいると思う。


今、この瞬間の私を。


何だか、ホッとしてヒロの手を引く。


「ペンギンみよう!ヒロみたいな浮気者ペンギン。」


「だから、俺は浮気してへんって…。」私の後ろからそんなダメ狐の声がする。


ペンギンの水槽にくる。たくさんのペンギンがいる。


「どれが浮気者のならず者なんやろ?」私は目に身体強化をかけてペンギンの羽根についているタグを見た。


「見つけてどないするんよ?」


「ヒロの代わりに呪う。」


「可愛い顔でおっかないことサラッと言わんでくれや…。」ヒロが顔に手を置いて天を仰ぐ。


そんな様子が面白い。


「冗談やん。」


「櫻が言うと冗談に聞こえんわ。聞いたで…。薫さんから『傾国の美女』の話。アンタ…しつこい男はいなくなるように呪っていたやろ。」ヒロが眉を顰めて話す。


「だって任務の邪魔なんだもん。あ!でも、紀州に来てからは呪ってないよ。ヒロがいるから、遠藤先生も薫さんが『総合格闘技やっていたマッチョやで。櫻子ちゃんにちょっかいかけたらアンタ半殺しにされると思うわ。』って言ってくれたらしつこくなくなった。」


「何やねんそれ…。」


「外向きの仕事でも前衛してくれてありがとう♩」


そう言うと安心したようにヒロが笑った。


「元気になってきたやん。」


「可愛いペンギンが癒してくれたのかもね。」


ヒロが時計を見る。


「もうそろそろイルカショーやで、行くか?」


「もちろん!」そう言って移動した。



私たちは水のかからないエリアに座る。


「なんか飲み物買ってこようか?」ヒロが声をかけてきた。


「そうやね。でも、一緒に行くわ。」私が答える。


「何で?待ってなよ。席取りもあるし…。」


「ヒロと離れると変なのが声かけてくるんよ。鬱陶しいし、しつこいし…。」私は顔を歪ませる。


「モテるのも大変やな…。」そんな感想をヒロから頂いた。


私たちはブルーの内装が可愛いスタジアムカフェに来た。


「何がえぇかな…。暑いからアイス食べようかな…。」


「俺は、チュロス食べるわ。今日はチートデーにする。」ヒロが答える。


「ヒロって案外食べないよね。体大きいのに。その代わりどかって肉を食べる日あるけどあれ何なん?」


ヒロの普段の食事は私より少し多めか、私が食べる量の倍だ。


ヒロの体の大きさから考えたら少ない方だと思う。


豊富さんの方が普段食べているんじゃないかな?


「筋肉作っているんよ。後は、運動量を考えてギリギリのカロリーで抑えてる。戦場で食べられんことも考慮して生きてきた癖や。」


へぇ〜驚いた。内乱では、食べれなくてヒーヒー弱音を吐いている魔術師が多かった。


そして、そこまで考えて食事を制限していたのは私と三条さんぐらいだ。


この人とバディを組めて本当に良かった。


別の人なら私はパワハラで訴えられていたかも知れない。


演習が楽しみだな。


そんな事を思ってアイスとチュロス、飲み物を買って席に向かう。


「アイス溶けそう。」そう言いアイスを食べながら歩く。


こんな姿、昔の私ははしたないって思ったろうな。


でも、今は関係ない。


イルカ型のソーダアイスにかぶりつく。


「ちょっとちょうだい。」ヒロが声をかけてくる。


私がアイスを差し出す。


ヒロが大きく口を開けてかじりつく、アイスが半分ほどなくなった。


地面に落ちそうになるアイスを慌てて口に運ぶ。


「ムー!ムーム!」アイスを頬張りながら目でヒロに文句を言う。


ヒロはニヤリと笑いながらジュースを飲んで一言。


「櫻子姫様!口の中に食べ物が入った状態でおしゃべりははしたないですよぉ〜。」と揶揄う。


私が、口元に手を置いて何とか咀嚼する。


それをダメ狐がゲラゲラ笑って見てる。


頭がキーンと痛くなる。少し涙目になった。


何とか喉に流し込んだ。


もう、ソーダ味のアイスを堪能できなったやん!


「イルカさんのアイス!なくなってもうたやん!」ヒロを睨みつけた。


「すまん。すまん。俺のチュロス食べてかまんから。」


そんな会話をしながら席につく。


ヒロがチュロスを私に差し出す。


食べようと口を開けたらかじる寸前でチュロスを引っ込めるヒロ。


また、ゲラゲラと笑われた。


「そろそろ、しょーもないで!ダメ狐!」


「すまんすまん。ほい。」今度はヒロの手を掴んでちゃんとチュロスを一口食べた。


シナモンの香りが鼻を抜ける。


魔力探知に引っかかる人物がいる。二人だ。


視力を身体強化して、そちらをヒロに気づかれないように見た。


………。


三条さんのところの側仕えがこちらの様子を伺っている。


なんの仕事なのだろう…。


護衛かな?私たちの?いらないんだけど。


私は、三条さんの側仕えは見ないようにしてイルカショーをヒロと楽しんだ。


それからお土産でもちもちのオオサンショウウオのぬいぐるみをヒロに買ってもらった。


その夏から、夏休みになると水族館へ行きたいとヒロにリクエストするようになった。

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