第四十四話 不思議な魔力を放つ女
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
ヒロがベージュのポンチョを出した。
「“うわん”の皮を使った魔力を抑えるのと認識阻害するポンチョや。これを着たらいい。」そう言って二着取り出した。
“うわん”は気配を消して人を脅かす妖だ。
私たちはそのポンチョを着る。
確かに魔力を抑えられるな…。認識阻害も完璧だ。
でも…。
「これ、夏にはキツイな。少し暑い…。」私がそう言いながらポンチョを脱いだ。
「あぁ、確かにそうよな…。ごめん。櫻、髪の毛ちょうだい。」
「はぁ?」
私が許可する前にヒロが素早く私の髪の毛を何本か引き抜く。
「っイッタ!」頭を抑える。
その間にヒロがもう一つ魔道具を出して私の髪の毛を魔道具にセットする。
ファンが回り冷風が出た。
「素材採取やん。彼女を魔道具の素材って思っちゃあかんで。」丸山さんがポンチョを脱ぎながら話す。
だから、彼女じゃない!バディなの!
「魔法使ったら探知されて厄介やろ。これを腰につけたらえぇよ。」ヒロがなんともないように言う。
「それにそのポンチョ着ている者同士なら意思疎通できるしえぇやろ。」そう説明する。
「すごいな…。いつの間にこんなの作っていたん?仕事忙しいのに。」私が呟く。
「あんたが、魔法の研究している間や。」ヒロが答えた。
「もう、結婚したらどうや。」丸山さんが余計なことを言った。
ほっておいてくれ!私たちはバディなの!ちょっと体の関係を持った。
そんなこんなで、怪しい女と待ち合わせする為に外宮に出た。
私と丸山さんはポンチョを着ている。
私鉄・神辺四宮駅の東改札口のすぐ北側。
楕円形のオブジェや銀色の円形のベンチが目印の待ち合わせスポット。
ヒロはスマホをいじりながら女を待っている。
「櫻ちゃん変わったわな。」いきなり丸山さんが昔の呼び名で私を呼んだ。
「こっちの方言がうつったのからですか?」
「ちゃうちゃう。生き生きしてる。前は無理に笑っとたけど今はちゃうわ。」丸山さんが私を見る。
「公爵令嬢が重荷だったんですわ。私には…。」視線を落とす。
「そうか?田中のおかげやろう。えぇ彼氏出来たやん。」丸山がニヤリと笑う。
「だから、彼氏ちゃいますよ…。さっきから揶揄うのやめてください。」私が話す。
「お!女が来たで。」丸山さんの言葉で私は目線をヒロに向けた。
胸元まであるアッシュブラウンのふんわりとした巻き髪。切れ長の目元。左側に涙ボクロ。
厚めの唇がとてもセクシーだ。そして、スラリと背が高くてヒロと並んだら身長差が丁度いい。
とろみのあるダークブラウンのブラウスにチャコールのマーメイドスカート。
黒く細いヒールに小さめのショルダーバッグ。小ぶりで品のあるアクセサリー。
綺麗で色気がある人だな…。私と真逆。
「あなたがロッキーさん?」女がヒロに話しかけた。
「そうです。あなたがレナさん?」ヒロが答える。
「写真通り、素敵な人ね。男らしくて。」そう言ってナチュラルにヒロの胸板に手をおく女。
私は、魔力が溢れそうなのを抑える。
だめ!気づかれてしまう。
これは任務!これは任務!そして、ヒロはセフレ!ヒロはセフレ!
「櫻ちゃん落ち着けや。」丸山さんが話しかけてくる。
「田中なら大丈夫や。これは仕事や。」
私は、心を凍らせた。
「丸山さん、なんの事ですか?任務です。行きますよ。」
そうして、大夢と女の後を追う。
「櫻ちゃん…。わかりやすいな。」そうボソッと丸山が呟いた。
大夢の腕を組む女。
私は最大限、心を凍らす。
私は、周りを警戒する。
魔術師の気配はしないな…。
◇◇◇
レナと名乗っている女が自然と俺の腕に絡みつく。
「ねぇ、ロッキーさんこれからどこに行く?」
「……どこでもえぇですよ。」
「ええ、冷たいなぁ。」身体を寄せてくるレナ。
仕事じゃなかったら嬉しかったやろうなぁ。
あ!でも、こんなことしたら合法ロリババアに殺されそうや。
“複数の女の人と関係を持つなんて!”って氷嵐ぶちかまされてまう。
女の魔力の揺らぎを見る。
意識して魔力を薄くしてるな。中東で見たヴァルトハイムの魔術師の揺らぎに似てる。
大和人でこんな魔力は不自然だ。
俺は女にまとわりついている魔力の膜をみる。
煙のように纏わりついている。緑色の怪しい魔力。
歩いているのに揺れが少ない。
そして、残炎も残してない。
この女……。間違いなく魔術師やな。
俺も魔力制限をかけて良かった。
俺は、今一般人レベルまで落としている。
スナイピングするにあたり魔力制限を覚えておいて良かった。
「ロッキーさんってほんまに女慣れしてる感じするね。」甘ったるい声だ。
「そう。見えます?」
「うん。なんか余裕あるもん。」そう言って女が俺の肩に頭を乗せた。
ふわりと香水の匂いがする。
改めて女の顔を見る。
長いまつ毛の下で、気だるげな瞳が俺を見る。
その目尻には、小さな涙ぼくろがあった。
こんなモテそうな女がマッチングアプリねぇ。
ほんまもんの美人局やったらどうしよう。
その時には、丸山さんの表向きの仕事に助けてもらおう。
「この辺で落ち着ける場所知りません?」俺が女に尋ねる。
「二人きりがいい?」女がにっこり微笑む。
その妖艶な笑みは『この女に近づくな。』
そう、傭兵だった頃の俺の勘が警鐘を鳴らす。
「積極的なのは嫌いやないんですが、とりあえずお茶しませんか?」
とりあえず二人は避けたい。
泳がしつつ…。
相手の手の内に入り込まないように…。
「じゃ、こっちにいいお店あるの。」そう言ってレナが俺の腕を引く。
俺は抵抗せず、そのまま歩き出す。
俺は、考える。
とりあえず、こいつが魔術師ってわかったから後は安全に捜査したらえぇやないか?
こんな得体の知れない女と一緒なのも嫌や。
それに魔力も視線も感じないはずなのにさっきからなんか櫻のおっかない何かを感じる。
俺はレナを見る。
妖艶な笑顔。
俺の腕に絡みつく細い腕。
そして、薄く纏った緑色の魔力。
「………すいません。やっぱり帰りますわ。」
「え?」
レナが不思議そうに俺を見る。
「いや、急用あったの思い出したんですわ。すんません。」
俺はそっと腕を抜こうとした。
一瞬、レナの目が歪む。
しかし、すぐにあの妖艶な笑顔に変わる。
「……帰るの?」
先ほどの甘ったるさはない。
あ!
これはやばいかもしれん!




