第三十八話 彼氏じゃありません……バディです。
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
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時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
いつの間にか寝ていたようだ。
ベッドから体を起こす。
ヒロが寝かせてくれたのかな?
仕事部屋に行く。
ロッキーがちょろちょろとやって来た。
「大夢なら釣りに行ったでしゅ。」
なんだかロッキーの元気がない。
「ロッキー…。色々見ちゃった?」
下を向くロッキー。
サトリも大変やな。
「ごめんね。今はなんもないから大丈夫やから。」
私はその小さな頭を撫でた。
机を見る。
【田中大夢の内宮騎士団軍服製作の申請を却下する。
却下理由・平民の身分であるため】
やばい!見られた!
お盆の演習までに作りたかったのに!
私は、ヒロに電話する。
出ない。
何回も連絡する。
電源が切られる。
そうよな…。これは明らかな差別だ…。
私は、スマホの連絡帳を開く。
【三条 奏】
その名前をタップする。
忙しいかな?出てくれるかな?
『もしもし!』低く落ち着いた声だが驚いた様子だ。
「もしもし、櫻子です。三条さん。ご相談があって連絡しました。お時間大丈夫ですか?」
『大丈夫やけど、何があったん?』
「あの…。今、組んでるバディのことで…。」
『酷いことされたんか!?今、行く!』
そこで家のチャイムが鳴る。
玄関を開ける。
魔眼のオッドアイ、プラチナブロンドの髪、整った顔立ち。
上品なスーツ、細身で背が高い。
三条奏公爵閣下だ。
三条さんが髪と目を隠してないってことは内宮にいたのかな?
「三条さん、来ていただいてありがたいです。」
「で!そいつはどこや?」
「ちゃいます!ヒロは悪事してません!」
私が慌てて否定する。
私の顔を見て驚く三条。
「とりあえず、中に入ってください。」
そうやって三条を中に促す。
「あぁ、お邪魔するよ。」
家に入った三条がキョロキョロと家を見ている。
庶民の家なんて入った事ないもんね…。
「前に櫻子君の家に入った時より…。家具、増えたやん。」
「バディと一緒に住んでますんで。」
「はぁ!?確か、男の人やろ?」
「そうですけど、優しいです!なんもないですよ!」
体の関係は持ってますが、避妊はしっかりしてます。この前、ちょっと色々あったけど…。
そこへロッキーがやって来た。
ロッキー!喋っちゃあかん!
ロッキーが自分の口を手で押さえる。
よしよし。
ヒロが三条さんに殺されるのは避けれたかな。
「櫻子君、サトリと一緒におるんか?」
「ヒロの相棒なんです。任務でも力になってくれてます。」そうして笑う。
三条さんの顔がまた驚く。そして、目を細めた。
何を考えているんやろう?
あとでロッキーに聞こうかな?
ロッキーが長く縞々の尻尾をギュッと持ち、慌てて部屋を出ていく。
なんとなく三条さんの考えていることは、聞いてはいけない。そんな感じがした。
ロッキーの命に関わりそうや…。
私は、三条さんをキッチンのダイニングテーブルへと促し、麦茶を出した。
「櫻子君、ちょっと大人っぽくなったやん。」
「私は、元から大人ですわ。」
「それに言葉…。こっちの方言になっとる。」
「そりゃ、住んでいますから…。学校の同僚とか…。子供たちとか…。」
なんと言っていいかわからない。
「それで、相談いうんは何や?」
私は仕事部屋から内宮の書類を持ってくる。
「これの事です。おかしいです。平民って…。今の私かて平民です。なのに…。」
三条さんはヒロが忌守って知っているのかな?
三条さんがそっと手紙を置いた。
「葉巻を吸うてもかまへんか?」
私は、換気扇を回して灰皿を出す。
「私もご一緒していいですか?」そして自分のタバコを出した。
「えぇで。」
三条さんが葉巻を切りながら話した。
「櫻子君のバディは確か…。」
「忌守です。でも、仕事はできるし、私の背中を預けれるのはヒロだけです。」そう言って私はタバコに火をつけた。
「私なりに忌守について…。勉強したんですが、納得いかんことばかりでした。」煙を吐き出す。
「大事な人なんやな。」三条さんのオッドアイの瞳がこちらを見る。
その魔眼に映る私は今どんな風に映っているんだろう?
「仕事上で…ですよ。」
私は自分の気持ちを誤魔化す。
「で、その彼はどこにおるん?」
「釣りに行ってしまいました。連絡してもつきません。」
「この手紙見せたん?」
「私が動揺して部屋に篭っちゃた時に読んだようで…。」
三条さんが眉を顰める。
「実は…。もう一枚…。手紙があって…。」
私はヒロの魔道具を持ってきた。
記憶が見れる魔道具だ。
三条さんに隠す事はない…。
「本物は燃やしてしまったのですが…。これを見てください。」
そう言って手紙の記憶を見せる。
「藤原のアホ息子まだ櫻子君にこだわっておるんか?」三条が顔を歪ませながら話す。
「なんで、手紙燃やしたん?」私に尋ねてきた。
「ヒロに手紙の内容見られるの嫌やて…。」視線をテーブルに落とす。
「そうか…。それにしてもすごい魔道具やな。」
「そうですよね!これ!ヒロが作ったんですよ!」私が顔を上げて話す。
ヒロの魔道具を褒められると私まで嬉しい。
三条が驚いた顔をしたと思ったら、ふぅと優しい顔になった。
そうして、葉巻を燻らせる。
「娘の彼氏の応援くらいせんとなぁ。私の方で出来ることないか、上に掛け合うわ。」そう話した。
「……彼氏ちゃいます。バディです。」
「はいはい。バディなぁ。」
彼氏って言われると少し嬉しい。
「時間を作って平安京に来なさい。その時までに彼の軍服を作ろう。夏の演習までに間に合わせたいのだろう?」
「はい!」
私は嬉しかった。
また、ヒロを認めてくれる華族が一人増えたことに。




