第三十六話 世界に一冊だけの本
『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜
主人公櫻子とヒロの出会い編スタート!
毎日18時更新!
時系列
〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
〜英雄の誕生〜 ←鬱展開あり閲覧注意
〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます〜
櫻にいい同僚が出来たようだ。
時々、薫と言う同僚と出かけてる。
食事に行った後に車で送ってくれたがさっぱりとした性格の人だったな。
「めっちゃマッチョやん。なんか格闘技してるん?」初手そんな会話をされた。
「昔、総合格闘技してたんすわ。」いつもこうやって誤魔化す。
「お姫様と騎士みたいなカップルやな。」そんなことを言われた。
お姫様と騎士、両方を兼ね備えた人が櫻ですがね…。
そして、カップルじゃありません。セフレです。
そんな会話を思い出す。
なんだかホッとする。
俺は、適当に同僚と遊んでいるが、櫻が遊んでいるところは見たことがないから。
って、俺は櫻の保護者かいな。
仕事部屋で書類を書いている。
今日は、外向きの仕事が休みだ。
不意に櫻の机に手紙が届く。
内宮の書類やな。
確認して処理できるならしとおきますか。
手紙を手に取ろうとする。結界に弾かれた。
「っ親展かいな。」手を振りながら悪態をつく。
親展なら開けられん。
さて…。
櫻がやっているみたいに事件を整理しますか…。
紀州にはガータロ以外にも河童族がいるな。
俺は地図を広げながら里の場所を確認する。
なんでガータロなんやろ?
他の河童族とガータロの違い…。
大きな耳で飛べる。ガータロの耳…。
俺は、妖図鑑を出す。
付箋がいっぱいで走り書きも多い。
背表紙も擦り切れているが、これが一番しっくりくる。
魔法塾を卒業する時に原先生から頂いた。
もう、10年使い込んでいる。前にこれを見た元カノが汚いって言われた事あったな。
内宮と行き来してるし楽な女だったけど…。
なんとなく価値観が合わんかった。
水生生物のページ…。
その時、図鑑がバラバラになって崩れ落ちた。
カサカサとページが机の上で崩れ落ちる。
ーーーー大夢君。君にはこれが役に立つと思うんよ。
原先生。
「あっ。」情けない声が出た。
どうしよう…。まぁ、でも寿命か…。
仕方がない。
……仕方がない、んやけどな。
仕事…やりづらくなるな。新しい図鑑探さないとな…。
玄関が開く音が聞こえた。
時計を見る。まだ、昼過ぎだ。
「え?櫻もう帰ってきたん?」俺が驚いて玄関を見る。
櫻が靴を脱いで揃えた。
「終業式やもん。この為に学校の仕事沢山してきたし。みんな帰るよ。」
「そうなんや。」
「この自由に休める夏休みのためだけに教師やってるのかもしれん。」
そう言って櫻が両手を天に仰ぎくるくると回る。
「さて、大夢君!ということで内宮の任務だ。」
「結局、仕事かいな。」
櫻が仕事部屋の俺の机を見た。
「どないしたん?この本。」
「あぁ、寿命だったんよ。それを見ながら魔道具の開発をしていたんやけど…。10年も使っていたらあかんわな。」
櫻が本を丁寧にまとめる。
「汚いやろ。俺が捨てるわ。」俺が手を伸ばそうとする。
「汚くない!これはヒロの知識の源やろ!」櫻がキッと俺を睨む。
えっ…。
「えぇよう。もう捨てるから。」俺が呆れて言う。
だってボロボロやし。
原先生に渡されて1ヶ月で付箋だらけになった。
「あかん!こんなに付箋貼って走り書きして、これはたった一冊の世界にどこにもない本や!変わりなんてないやろ!」櫻が俺を見つめ小さな体で俺を指さしてきた。
「それに私は本を破壊するのが得意なんだよ。」そうしてニヤリと笑う櫻。
「はぁ…?」
「私も似たように魔導書を壊したことが何回もある。その度に側仕えに捨てられて悲しかった…。また1から魔法陣描かなあかんやんって何回もあったわ。」
そう言いながら青いファイルをマジックバックから取り出した。
「特に外国の神の理は翻訳してからでしょ…。それを三冊分!魔力が暴走して屋敷に雪が降ったね。」そう言ってニヤリと笑った。
「相変わらずおっかないことをさらって言いますなぁ。」俺が呆れる。
「どうしよう?どうせなら分類する?それとも一冊にしちゃう?」
「櫻は普段どうしてるん?」
「使い方を考えるかな?図鑑系は分類する事が多い。何冊にもなるけど、余ったポケットに走り書きが入れられるんだ。それにぱって開きやすい。」
「ポケット?」俺が尋ねる。
「あぁ、このページのこと。」そう言うとクリアファイルを開き透明なページを見せた。
「じゃ、そんな風にまとめるわ。手伝ってくれる?」
「もちろん。」
そうして、俺らは手を動かしてバラバラな図鑑を修復した。
何故だか知らないが、とても心が温かくなった。
櫻の為にマナー訓練を真剣にやってもえぇかも…。




